情報セキュリティメーカーのデジタルアーツは、、GIGAスクール構想の1人1台端末における有償フィルタリングの導入状況を調査。回答結果をグラフにまとめて発表した。
2022年度の小中学校におけるネットいじめは過去最多
文部科学省が発表した「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(※1)によると、小・中・高校などで認知された「パソコンや携帯電話などで誹謗(ひぼう)・中傷や嫌なことをされる」といういわゆるネットいじめの件数は、2万3920件に上り、2021年度から2020件、2020年度からは5050件も増加。毎年過去最多を更新し続けていることがわかった。
こうした状況を踏まえ、政府は「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」(※2)を取りまとめ、子どもや学校関係者に向けたメッセージを発出するなど、打開策を模索している。
有償フィルタリングの導入率は昨年度とほぼ横ばい 依然啓蒙活動が必要な状況が続く
デジタルアーツが2023年9月に実施した1741教育委員会へのヒアリング結果によると、GIGAスクール構想の1人1台端末に有償フィルタリングを導入している教育委員会は全体の75.0%であることがわかった。
さらに無償フィルタリングの導入は全体の15.5%、フィルタリング未導入は全体の9.5%となっており、昨年度の調査結果と比較しても、ほぼ横ばいであることから、フィルタリングの啓蒙活動が依然必要な状況が続いている。
有償フィルタリングの導入が進まない理由には、予算不足などの課題があると考えられる。
一方で、児童生徒数が3,000人以上の651教育委員会へのヒアリング結果では、有償フィルタリングの導入は82.2%となり、昨年度の81.1%から微増となった。このことから、比較的規模の大きい教育委員会では、緩やかに導入が進んでいると言えるだろう。
無償フィルタリングとは主にOSに搭載されているフィルタリングを指しており、アダルトコンテンツのブロックが目的だ。
ただしアダルトコンテンツ以外の有害情報や脅威情報サイト等のブロックは管理者が一つ一つ手作業で登録しなければならず、運用の負担が大きいという課題がある。
また、有償フィルタリングには安全なドメインのみアクセスを許可するDNSフィルタリングも含まれている。
DNSフィルタリングは、Webサイトのすべてのページをアクセス許可するかブロックするかの極端な制限になるため、学習に関する動画のみアクセスを許可したい場合など、Webページ単位での柔軟な閲覧設定ができない場合も考えられる。
このようなWebサイトの柔軟なフィルタリング利用時間の制限など細かな設定を行なうことは、無償フィルタリングやDNSフィルタリングでは困難を伴う。
学習用端末として適切に運用するには、細かな設定ができる機能を持つフィルタリング製品を利用することが重要だ。さらに、昨今加速するネットいじめ対策として、いじめにつながるような書き込みや自殺サイトへのアクセスなどを検知できる機能も求められている。
※1 出典元:文部科学省 「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
※2 出典元:文部科学省 「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」
関連情報
https://www.daj.jp
構成/清水眞希