客をワクワクさせる陳列のマジシャンが開発した秘密兵器とは?
先に紹介したテクニックは既存の什器を用いた陳列の方法だが、長年の経験を活かして山口さん自ら発明した秘密兵器がある。それが「ウッド調Yパネル」だ。
普段使用している折りたたみコンテナに引っ掛けて使用するタイプの樹脂性パネルで、味気ないコンテナが木製什器のように変身する逸品。
「スーパーの中でも特に青果売り場ではコンテナを積み上げて陳列棚を作っていることが多いんですが、それだとオリジナル性がないと思ったんです」
そこで開発したのがYパネル。取り付けも簡単でカラーもブラウン、グリーンなど5色展開。陳列商品やイメージに合わせた売場を作ることができる。また、このYパネルは表面にオリジナルデザインの印刷も可能だ。
何より、木製什器を新たに購入・製作する費用を考えたら、比較的安価に導入することが可能。手軽でありながらも目立つ売場を作りたいという思いで生まれたこの商品は、開発者である山口さんの頭文字を取って「Yパネル」と名付けられたという。
「多くの青果売り場はスーパーの入り口にあり、お店の顔とも言える場所。そこをYパネルで彩ることでよりお買い物を楽しく、お客さんにワクワク感を味わってもらえたらありがたいですね」
陳列職人の仕事の流儀、肝に銘じていることとは?
山口さんのディスプレイに惚れ込み、仕事依頼は全国から寄せられているという。極めて多忙な日々を送る山口さんだが、仕事をする上でのこだわりがある。
それは「オンリーワンの提案」。
「以前、住宅関係の会社に勤めた経験があり、その時に学んだ建築のイロハや建築資材の知識も大きな武器になっていますね。販売する商品と売り場のトータルケアを基本に、自分ならではアイデアの提案を心がけるようにしています」
多くの人を惹きつける演出とアイデアで幾多のスーパーに輝きを与えてきた山口さん。
仕事に取り組むときに一番大事にしていることがある。
「いかなる相手、お店、お客様を区別しないことです。大手だろうが個人だろうが変わらず対応し、あとは全力投球する。過去の経験から言うと、そうすることで横のつながりができてくるんですよね。そんな嬉しい繋がりが何度もありました。お客様への誠心誠意の対応と姿勢、大人の仕事はこれに尽きると思います」
取材協力
株式会社折兼
文/太田ポーシャ