自らの技とアイデアでスーパーの売上を1.5倍に飛躍させたスペシャリストがいる。
「陳列のマジシャン」と称される山口能且さん(54歳)だ。
山口さんは、食品容器や店舗備品を扱う企業「株式会社折兼」でスーパーの陳列コーディネーターとしても活躍。スーパーの商品棚やコーナーの陳列方法を変え、お客さんが「つい手を伸ばしたくなる売り場」に変貌させる、まさに陳列職人。これまで500軒以上の店舗のディスプレイを担当し、軒並み売り上げを伸ばしてきた。
「買い物中のお客様の足を引きとめ、商品に興味・関心を持たせるのが私の役割です。最終的に購入に結びつけるのは売り場のディスプレイや商品の並べ方の影響が大きいんです」(山口さん)
山口さんが売り場を変えたその日から売上が数倍に跳ね上がったことも。お客さんの心を掴み、つい手を伸ばしてしまうディスプレイとはいかなる技術とアイデアによって生み出されているのか?
今回、実際にスーパーの陳列で使っているテクニックを山口さんにご教示いただいた。まずは基本的なテクニックから。いつも足を運んでいるお店やスーパーの陳列棚を思い浮かべながら、プロが繰り出す巧みな技を堪能して欲しい。
陳列テクニック(1) ジャンブル陳列
投げ込み陳列とも呼ばれ、価格訴求品などの商品をワゴンに大量に入れて消費者の購買意欲を向上させる陳列方法。
ジャンブルとは、もともと「ごちゃ混ぜ」の意味だが、ジャンブル陳列の中には大量の商品が規則正しく整列している場合もあるという。
山口さん「綺麗に積み上げられていると逆に手を出しづらいこともあります。ごちゃ混ぜにして気兼ねなく選びやすくする点がポイントです」
陳列テクニック(2) トライアングル陳列
商品を三角形に陳列するテクニックで、陳列業界では最も基本的な手法。センターに背の高い商品、両サイドに背の低い商品を陳列して三角形に見えるように配置する。
山口さん「装飾やディスプレイの改善には費用も時間もかかりますが、トライアングル陳列のように見せる工夫を行うだけでインパクトのあるアピールが可能です。商品がお客さまの目に留まりやすくなります」
陳列テクニック(3) フェイシング
フェイスと呼ばれる商品パッケージを揃える商品陳列。伝えたい情報がデザインされているパッケージ部分がより見やすくなるように陳列することで、商品を選びやすくなる。
山口さん「売れ筋商品のフェイス数を多く、売れ行きの鈍い商品のフェイス数を少なくすることが基本。逆にあえてフェイス数を減らし隙間を広げて商品を際立たせることで、見やすく選びやすく、手にとりやすい陳列をする方法もあります」
さらに、陳列のスペシャリストが明かしてくれたこんなテクニックも!
「たとえば、少々値段の高い商品もあえて高級感のある棚を作り、立体的に見せて目立たせることで手に取ってもらいやすくなります」
「一方、黒メインの棚などは一見オシャレに見えるんですが、商品が売れて少なくなった時には暗い印象になることも。その場合は下地を白に変えるだけで印象が変わりますし、或いは商品と同じ色を取り入れることで親和性が生まれ、好印象を与えられます。売れるかどうかの前に、いかに手に取ってもらえるか、立ち止まってもらえるかが重要ですね」