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開園から70年、震災を乗り越え進化を続ける「神戸市立王子動物園」と動物たちの歴史

2023.12.02

開園から70年「神戸市立王子動物園」と「動物達」との歴史

実は開園当初、獣舎の整備は間に合っておらず、仮設の獣舎や輸送用のケージで公開していた。1960年までには猛獣舎に加えて、カバ舎・サイ舎などが徐々に充実していくのだが、木造の獣舎も多かった。1961年から1970年にかけて鉄筋コンクリートを用いた獣舎が続々と建設されることとなる。

今でも大人気のペンギンたちの生活空間も拡張され、当時は冷房の効いたペンギン舎で暮らしていたが、秋から春にかけて室外飼育するためのペンギン池ができるまでは、日光浴不足を考慮して時折園内をお散歩していたそうだ。ペンギン池ができてからは、毎年秋になると室内展示から屋外展示場へ、ペンギンたちが歩いてお引っ越しする姿が公開され秋の風物詩となり、見学に来ていた園児たちを喜ばせていた。いまでは、1987年に完成した「動物科学資料館」に併設されたペンギン飼育場で屋内からも彼らの水中を羽ばたくように泳ぐ様子を見ることができる。

王子動物園といえばフラミンゴと答える人も多い。それは正面エントランスから入ってすぐに展示されているからであろう。フラミンゴたちの歴史も古く、1969年にフラミンゴ専用の飼育場が開設された。16羽の「ベニイロフラミンゴ」の飼育から始まり、1973年には「ヨーロッパフラミンゴ」18羽が導入された。現在、フラミンゴの飼育場には網がかぶせられている。これは1983年にフラミンゴたちの風切羽を切らずにいることで、交尾しやすくなり繁殖実績が上がったからだ。

2020年までに620羽の繁殖数を記録しており、毎年何羽かのヒナの誕生を見ることができる。

園の入り口近くで来園者の多くを迎え、見送るフラミンゴたちは王子動物園を代表する動物なのかもしれない。

園内を歩いていると、「ふれあい広場」の片隅に「蒸気機関車(D51)」を見つける。

これは園外からも見える場所に展示されている。1971年に国鉄(現JR)より貸し出され展示されているものである。

動物園にきておおきな生き物と出会い興奮している子供達が、今では珍しい機関車の重厚な黒い鉄の塊を目にするとさらに目を輝かせて喜ぶこと間違いない。嬉しいことに客車にも自由に出入りできるので、子供を連れてきた親たちもノスタルジックな客車内の装いに一時の旅気分を味わえるのではないだろうか。

蒸気機関車が展示された同じ1971年に、北園には運動場付きの鉄筋で作られたキリン舎が建設された。

王子動物園でのキリンの飼育の歴史は長く、1953年に「六ちゃん(オス)」と「甲ちゃん(メス)」の2頭から始まり、繁殖や国内外の動物園との移動などを繰り返し、2023年までに55頭のキリンが王子動物園で過ごしており、2022年9月には「マリー(メス)」が誕生している。王子動物園からの血縁のキリンたちが全国へ新たな家族を作りに旅立っていることを知ってもらいたい。いつも見ている近所の動物園のキリンはもしかしたら王子動物園のキリンたちの子孫なのかもしれない。

神戸市が育んできた姉妹都市・友好都市の締結で動物園の動物交換が多く実を結ぶ

国際交流も盛んで、1973年に日本と中国の国交回復を機に北京動物園へのフラミンゴ贈呈以来、国内では初めて「神戸市」と「天津市(中国)」が友好都市として提携を結び、2023年には友好都市関係50周年を迎えた。

天津との動物交流の中で、王子動物園にはレッサーパンダの「王子(オス)」と「トモコ(メス)」が来園した。

当時のレッサーパンダ舎は今でも北園で見ることができる。

1986年には京都から借り受けた「洋洋」との間に王子動物園で初のレッサーパンダの赤ちゃんが誕生した。

現在、園の西側に位置するコアラ舎の横に新たなレッサーパンダ舎が建てられている。

1990年代になると-神戸市との姉妹都市である「ブリスベン(オーストラリア)」よりコアラが来園した。

コアラを迎えるに当たり王子動物園では、1989年に「鹿児島市」と「神戸市」でユーカリの栽培に着手し、コアラを迎える準備を始めた。

1991年に来園した初めてのコアラは「M.G.ジュニア(オス)」と「ジェンマ(メス)」「マディー(メス)」の3頭。追って翌年の1992年に「マックス(オス)」と「ラバーン(メス)」が来園した。園ではこの5頭を創始世代としている。王子動物園のコアラの歴史はここから始まったのだ。

今でも国内の園館などとブリーディングローンでコアラの血縁に配慮しつつ繁殖に取り組んで命をつないでいる。

神戸市の友好都市、姉妹都市間での動物の交流はこれまでにも多く行われており、友好都市「天津(中国)」からは、オオヤマネコ、タンチョウヅル、カラスザル、ミミキジ、レッサーパンダ、果下馬、コウノトリ、カワウソ、ウンピョウ、マヌルネコ、キンシコウ(借受)、ウマグマ、マナヅル、パンダ(借受)。姉妹都市「ブリスベン(オーストラリア)」からは、コアラ。姉妹都市「リガ(ラトビア)」からは、ヨーロッパビーバー、ゾウ「ズゼ」、シベリアオオヤマネコ。姉妹都市「シアトル(アメリカ)」からは、カナダヤマアラシ、ボブキャット、オセロットなど様々な動物たちが王子動物園に来園した。

現在では展示が終了した動物たちもいるのだが、特に中国との「日中共同飼育繁殖研究」においてキンシコウの中国国外での繁殖は世界でも初めての功績となったケースもあり、神戸市の長年培ってきた諸外国との交友関係は我々にとって神戸市内はもとより国内でも出会うことのない不思議な生き物たちとの出会いや、動物飼育および繁殖研究を進める上で大事な機会を作ってくれている。

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