ジャッジ
裁判所
「Xさんは退職していない」
「退職合意はなかった」
「会社は約414万円はらえ(過去の給料)」
裁判所が「退職していない」と判断した理由は以下のとおりです。
・退職届などの書面が作成されていない
・Xさんは「退職の申し出をしていない」と言っている
・仮にXさんが『それでも出ろって言うなら辞めます』『どうしても出なきゃいけないんであれば、自分は辞めます』と言ったとしても、年末年始の休暇取得を認めるかどうかのやり取りの中でなされた発言であり、確定的に会社を退職する意思表示とは言えない
・Xさんは会社に対して解雇通知書の交付を求めている
・弁護士を通じて「退職をする意思はない」と伝えている
退職していないと判断されれば、会社に鉄槌が振り落とされます。
▼ Xさんが得た金額
約414万円です。これはバックペイと呼ばれています。解雇などをめぐる裁判に勝って裁判所が「まだ社員だ」と判断してくれれば、過去にさかのぼって給料がもらえるんです。
具体的には【解雇された日から → 訴訟になって → 判決が確定する日までの給料】がもらえます(民法536条2項)。
Q.
転職してしまった場合は、どうなるんでしょうか?
A.
転職したとしても基本、6割の給料をもらえます。今回はそのケースでした。新しい会社に就職したR3.2~判決が出たR4.9までの間、前の会社の給料6割の月額約23万円がもらえるんです(23万円×1年半=約414万円)。
ただし「元職場に戻る意思がある」と認定できる期間分だけです。裁判官が「もう戻るつもりないよね」と認定した時点以降はもらえません。今回のケースでは裁判所は「元の職場に戻る意思がある」と認定したので判決確定までの全期間分を認めました。
退職届を出したとしても……
このほか、退職届を出したとしても、裁判所が「この自主退職は無効だね」と判断した事件があります。
この事件では会社が、懲戒解雇できないケースなのに「懲戒解雇になるかもよ?ユー自主退職したほうがいいんじゃない?」みたいに迫ってきたんです。退職届を出しちゃうと基本負けますが、例外的に勝てることもあるのでご参考までに。
さいごに
言い争いの中での売り言葉に買い言葉で発された「んなら辞めますわ!」では、なかなか退職合意は認定されないでしょう。社員に辞めてもらうときと不倫関係の精算時は、とてつもなく注意して進めましょう。
納得いかない方法で辞めさせられた方は、Xさんのように、戦えば勝てる可能性があります。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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