こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
会社が勝手に退職手続きを進めた事件を解説します。概要は以下のとおり。
社員のXさん
「年末年始は旅行にいくので出勤できません」
社長
「いや、店は年末年始も営業するから出勤してください」
社長は12/29をもってXさんを退職扱いとしました。これをXさんが提訴。
―― 裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「Xさんの勝ち!辞めてないね。かりにXさんが『どうしても出なきゃいけないんであれば、自分は辞めます』と言ったとしても確定的に会社を退職する意思表示とは言えないわ」
以下、分かりやすくお届けします(大央事件:東京地裁 R4.11.16)。
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
▼ 会社
・不動産取引業の企画などを行う会社
▼ Xさん
・社員
・イオンハウジングイオンスタイルA店で勤務
どんな事件か
R2.3ころ、Xさんが入社。
▼ 正月休みをめぐって社長と激突
12月初旬のことです。
――Xさん、何があったんですか?
Xさん
「12/29~1/3まで休みたいと申請したんです。旅行にいくためです。すると社長は拒否してきました。『店は年末年始も営業するから休暇の申請は認めない』と。その後、12/29で退職扱いにされました」
会社
「いや、あなた。退職するって言ったじゃないですか。年末年始の出勤を要請したときに『それでも出ろって言うなら辞めます』『どうしても出なきゃいけないんであれば、自分は辞めます』って言ったじゃないですか」
Xさん
「そんなこと言ってないですよ……。退職届も出してませんし」
――12/29以降はどうしたんですか?
Xさん
「働くことができなかったので、次の年の2月には別の会社に就職しました。家族を養っていかなければならなかったので……」
Xさんは提訴。「自分はまだ会社の社員だ」という請求と給与請求などです。