すでにペットを飼っている人が、新たにペットを迎える時、いろいろ悩むことは多い。まず、新しい子がうちに来て幸せに暮らせるかどうか、という点が一番大きい。先住の子と仲良くなれるかどうかは、実際に暮らしてみないとわからない。さらに、これまでペットに与えていた愛情が、半減してしまうのではないか?
わが家では今の状態が最高で、新たなペットが家族に加わることで、今の幸せを壊してしまうのではないか、と考えるのは、ごく普通の感覚だろう。
そんな飼い主の悩みを、上手にクリアしながら、たくさんの不幸な犬や猫を幸せな家族につなげている事例がある。新刊「ドベとノラ2 犬が結んだご縁」(ヨシモフ郎著KADOKAWA発刊、定価1150円+税)では、暴れ犬と野良猫5頭を保護することになったいきさつが紹介されている。
保護した経歴や、新しい家族との出会いなどが、魅力的な絵と共に、ていねいに語られていて、前作以上に話題となっている。
命を一生背負う覚悟という感覚
野良犬や野良猫を引き取り、健康状態を確認して、人との生活に慣れさせた後、新しい飼い主に送る活動は、もともと「譲渡会」という名で行われていた。平成から令和にかけて、この「譲渡」という言葉が物のやりとりを連想させることから、「里親会」という名前が使われるようになり、全国で広く行われている。
「ドベとノラ」の著者ヨシモフ郎さんは作品の中で、「保護活動家ではありません」と書いている通り、主体的に保護活動を行っているわけではないが、協力を求められると、快く協力している。子猫の確保のために捕獲用のケージを借りるなどの他、殺処分されそうだった猛犬を引き取って、新しい飼い主が見つかるまでの間、一緒に暮らしていた。
小さな子猫の「一生を背負う覚悟ができない」と、新しい飼い主を探すのであるが、そう簡単には見つからなかった。この時の焦りと苦しさは、読んでいる人の胸に迫ってくる。幸い、保護した犬も猫も、新しい家庭で幸せに暮らすことができて、読者は胸をなでおろす。
活動する中で、多くの人から「保護した犬や猫を、そのまま飼ってしまえば良いのに」と勧められるが、著者は「自分のキャパシティ」という言葉で、新しい家族をさがす理由を説明している。
ひとあじ違う犬愛に溢れる作品
「ドベとノラ2 犬が結んだご縁」では、犬と暮らす幸せや、どんなにつらい体験をした犬や猫も、愛情をもって接すれば、人になれて、絆を結ぶことができることが、繰り返し紹介されている。本当に犬を愛している人だということは、作品のあちこちから漏れ伝わってきて、読者を喜ばせてくれる。
保護活動の難しさや、活動の実態を知らない人からの、心無い言葉に傷つくことはあっても、動物への愛情を貫く著者の姿勢は尊敬に値するものだ。そして、亡くなった愛犬との絆は、生涯切れることなく続くという、ペットを亡くした人にとっては救いとなるようなシーンも印象的である。
その一方で、動物を飼う限界についても、きちんと語られている。それは「キャパシティ」という言葉で表されていた。「自分のキャパシティの狭さを良く知ってる その狭い輪は 今はノラでいっぱいで まだ1キロくらいしかない軽くて小さなちゃとー(注:子猫の名前) その君の一生を背負う覚悟ができない」と作品の中で書いている。これまでの愛犬漫画になかった、ひとあじ違う点である。