プラットフォームの健全化とユーザーの離反に苦しむツイキャス
上のポイントPUの推移を見ると分かる通り、課金ユーザー数は長らく停滞していました。その主要因の一つになったのが規制の強化。ツイキャスは2021年12月31日に音声配信に関する新基準を導入しました。これにより、いわゆるASMRが規制対象となりました。際どいアダルトコンテンツに対する規制を強化したのです。
上場を大いに意識した規制強化だと考えられますが、プラットフォームの健全化を進めれば、それだけユーザーの離反は進みます。ツイキャスはこの板挟み状態から抜け出すことができないのです。
中高年の利用者が多いふわっちの利点
競合サービスのふわっちも、ツイキャスと同じくアダルトコンテンツを規制してプラットフォームの健全化を図っています。それにも関わらず、課金ユーザー数は増加の一途を辿っています。
※決算説明資料より
2024年3月期2Q時点で課金ユーザー数は3万9,000。前年同期間と比較して15.4%も伸びています。
ふわっちのビジネスモデルそのものは、ツイキャスと大差はありません。ふわっちがユーザー数を伸ばして収益性を高めているのは、ポジショニングによるものです。
ツイキャスを利用する年齢層は、19歳までが20%、29歳までが35%を占めています。若年層の利用者が大部分なのです。
しかし、ふわっちのメインユーザー層は30~40代。課金ユーザーの2割は50代が占めています。お金に余裕がある中高年が集まっており、課金しやすい素地が整っているのです。そのため、配信者側は「ふわっちは稼ぎやすい」という意識を持っています。配信者の参入を招きやすいのです。
運営会社のjig.jpは、ふわっちが課金モデルメインのプラットフォームであることを認めています。ふわっちは生配信中の飲酒や喫煙を容認しており、顔出し配信だけでなく、音声のみの配信もできます。他の動画配信サービスに比べてハードルが低く、居心地の良さを優先しています。Jig.jpの戦略勝ちだと言えるでしょう。
稼ぎやすいという評判を呼ぶほどに配信者が集まり、動画が盛り上がりを見せて新たなユーザーがやってきます。ふわっちはその好循環が形成されているのです。
若年層の利用者が多いツイキャスは、若者特有の拡散力で配信アプリの高シェアを獲得することができましたが、ユーザーの離反も早いものでした。
モイはコラボやスタジオによる配信体験の向上、3Dコミュニケーション空間の形成など、プラットフォーム規模の拡大を進めています。しかし、ユーザーの減少に歯止めがかかりません。正念場を迎えています。
取材・文/不破聡