スマートフォンから手軽にライブ配信ができるサービス「ツイキャス」を運営するモイの業績に異変が訪れています。
2023年2-7月の売上高は前年同期間比1.2%減の32億300万円となりました。まさかの減収。モイは成長著しいグロース市場で、動画配信分野という成長産業に居を構える会社。しかも、競合サービス「ふわっち」を運営するjig.jpは上半期の売上高を2割増で通過しました。
ツイキャスの運営会社に何が起こっているのでしょうか?
配信プラットフォームにも明暗
配信者のファンによる賑やかしが成長の原動力
2023年11月16日時点でモイの時価総額は41億円ほど。Jig.jpは143億円。上場したのは2社ともに2022年。1年ほどで深い溝が生じました。
モイの上場時の公募価格は470円でした。初値は2倍近くまで跳ね上がり、902円をつけました。現在は初値どころか公募価格を下回る200円台後半で取引されています。
2021年1月期の売上高は前期比132.3%増の54億7,900万円、上場直前の2022年1月期の売上高は同19.6%増の65億5,200。増収の勢いはトーンダウンしているものの、成長への期待は高い会社でした。
しかし、2023年1月期の売上高がわずか0.8%の増収に留まりました。さらに2024年1月期の売上が前期と横ばいになるとの予想を出したのです。
※決算短信より
モイのビジネスモデルは複雑ではありません。
ツイキャスは無料で利用できるサービスですが、配信者を喜ばせることを目的として視聴者はアイテムを使用することができます。アイテムはポイントとの交換で手に入れます。無料で使えるポイントは100まで。それを超える分は基本的に課金で入手します。
モイはこのポイント販売売上が、売上高全体の9割以上を占めています。
人気の配信者を取り込み、ポイントを購入するユーザーを増やして循環させる仕組みづくりが重要です。
課金ユーザー数が1割減少
モイには業績に直結する指標が2つあります。課金ユーザーと課金ユーザー一人当たりの課金額です。モイは課金ユーザーをポイントPU、課金額をポイントARPPUと呼んでいます。
四半期ごとの推移を見ると、課金額そのものは上昇傾向にあります。2024年1月期2Qは月間6,514円で、前年同期間より7.6%増加しています。
しかし、成長のカギを握るユーザー数が伸びません。増えるどころか、1割減少しています。
※決算説明資料より
その結果、2024年1月期2Qのポイント販売売上は前年同期間比2.7%減少しました。
ツイキャスは「リラックマ」や「ポムポムプリン」、「おしゅしだよ」、「すみっコぐらし」などの人気キャラクター限定スタンプを提供するなど、ポイントの消費意欲を沸かせるアイテムを投入して課金額を引き上げることには成功しています。
しかし、単価の増加が課金ユーザー数の減少ペースに追いついておらず、減収へと至っているのです。