温泉微生物効果(2)…ヒラメのうまみ成分もアップ
さらに、RG92エキスの持つミトコンドリア活性機能が、魚のうまみ成分増加にも寄与することがわかっている。魚は熟成させることによりうまみ成分の一つであるイノシン酸が増加することは知られているが、そのイノシン酸の元となるのがミトコンドリアの活動で生み出されるATP(アデノシン三リン酸)。ミトコンドリアが活発に活動することによりこのATP(アデノシン三リン酸)が増加し、イノシン酸へと変化することでうまみ成分の増加へと繋がるのだという。
RG92で育てたヒラメは臭みがなく「フォアグラを想起させるクリーミーな味わい」と高級ホテルのシェフを務めた一流の料理人が絶賛するほどだという。ここから「フォアグラヒラメ」という商品名が生まれた。
きっかけは新型コロナウイルス
コロナが世界的に猛威を振るい始めた時期に、サラビオは温泉藻類RG92の持つ力が新型コロナウイルスの抑制に利用できないか実験を開始した。そして2021年、一つの研究結果が発表された。それは「細胞試験を行った結果、サラビオの発見したRG92から得られたエキスにウイルス侵入誘導因子を53.4%抑制し炎症反応を抑える効果がある」というもの。
RG92エキスを投与した細胞はミトコンドリアが活性化し免疫力が向上することに着目した研究で、その内容は大手新聞にも掲載され話題となった。その話を聞いたヒラメの養殖業者が、研究所を訪れたのが研究のきっかけだったという。
2023年4月から、温藻ヒラメが本格出荷
サラビオでは、2022年11月から試験的に出荷していた「温藻ヒラメ(呼称フォアグラヒラメ)」を、2023年4月12日から本格出荷。現在、養殖業者や大学などと連携して、トラフグ(茨城県)やウナギ(大分県)、鯛(愛媛県)、シマアジ(愛媛県)といった様々な高級魚種でもRGエキスの効果の検証を進めている。
これらの魚種でも成長促進効果が出はじめており、RGエキスは様々な魚の「健苗性」を向上するものという見方が強まっている。また魚に限らず、エビやカニなどの甲殻類や畜産への応用も進めており、サラビオでは、これらについても「高い生産性」かつ「健康にやさしい」食の提供へ貢献できるものと確信しているという。
取材・文/桑原恵美子
取材協力/株式会社SARABiO温泉微生物研究所