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なぜ中学入試で格差や貧困問題が頻出するようになったのか?これからの時代に子どもたちに求められるスキルとは

2023.11.23

近年の私立中学の受験では、さまざまな社会課題を扱いながら、知識だけでなく論理的思考力や発想力、表現力が求められるようになってきている。

たとえば、2023年度に慶應義塾湘南藤沢中等部の国語の入試問題で出題されたのが、「甘いモノって、誘惑は強い割にだいたい体に悪いじゃないですか。肥満とか生活習慣病にも繋がるし。だから国なり県なりで税金をかけて、値段を上げていけば自然と国民・県民の健康が増進されるって思うんですよ(以下略)」と話す人に対して160字で反論せよ、という問題。

一見正論に聞こえることも、その中に問題がないか発見し、自分なりの考えを組み立てて表現することが求められる問題だが、このような力を子どもたちに問うことには、どのような期待が込められているのだろうか。

子ども食堂にホームレス。格差や貧困にまつわる題材が目立つようになった入試問題

■私立中学入試で昨今頻出するテーマとは?

さらにテーマについても、昨今ではSDGsやさまざまな社会課題が取り上げられ、単に知識を問うだけではない出題が増加している。とりわけここ数年で注目されているのが、格差や貧困にまつわるテーマだ。

2021年度に実施された麻布中学校の社会の問題では、子ども食堂が食事時間のほかに「宿題」「おやつ」「外遊び」といったスケジュールを設けている表を見せ、「子ども食堂でこのような時間割が組まれているのは、子どもの成長にどのようなことが必要だと考えられているためでしょうか。お腹を満たすこと以外に2つ答えなさい」と問われる。

子ども食堂については2022年度に開成中学校の国語の入試問題としても登場する。子ども食堂を舞台に、貧困や虐待、いじめなどのテーマを扱った小説『おいしくて泣くとき』(森沢明夫)を取り上げているが、ここでは心情説明をさせる問題が多い。

また2019年度には、東洋英和女学院の国語入試で少年とホームレスとの交流を描いた『多摩川物語』(ドリアン助川)、高輪中学校の国語入試では貧困問題を扱う『万引き家族』(是枝裕和)が取り上げられている。

■問われているのは「ノブレス・オブリージュ」の精神か

こうしたテーマが中学受験で取り上げられ始めた2019年、東京大学学部入学式での上野千鶴子氏(社会学者・東京大学名誉教授)の祝辞が話題になった。

「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったことを忘れないようにしてください。あなたたちが今日『がんばったら報われる』と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです」

「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください」

中学受験で格差や貧困をテーマにした問題が出題される背景には、東京大学の学生たちに向けて上野氏が述べた、〝ノブレス・オブリージュ(高い社会的地位には義務が伴うという意味)〟の精神を問うている、ということもあるのかもしれない。

経済的に恵まれた環境の子どもたちに、それを当たり前だと思わず、視野を広く持ってほしいという願いが込められているのではないだろうか。

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