2050年のカーボンニュートラル社会実現に向け、注目されているのが「ブルーカーボン」だ。ブルーカーボンとは、2009年10月に国連環境計画(UNEP)の報告書において命名された言葉で、「藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた炭素」のことを指している。
森林や都市の緑など、陸上の植物が隔離する炭素「グリーンカーボン」に対し、海草(アマモなど)や海藻、植物プランクトンなど、海の生物の作用で海に取り込まれる炭素が「ブルーカーボン」だ。
いま国や自治体は、ブルーカーボンを用いたカーボン・オフセット、すなわち「ブルーカーボン・オフセット」制度の在り方を模索している。
カーボン・オフセットとは、温室効果ガスの削減活動に「投資をする」ことで、排出される温室効果ガスを埋め合わせようという考え方だ。企業にとって、CO2の削減を目指しながらも、企業努力だけではどうしても削減できないCO2については投資をすることでオフセット(埋め合わせ)しようという考え方が広まりつつある。
こうした社会背景の中、全国的にも先駆けてブルーカーボン・オフセットを実施している(していた)事例を紹介したい。
ブルーカーボン・オフセット事例3選
①ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)「J ブルークレジット制度」
国土交通省に認可された団体であるジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)は、ブルーカーボンを活用したカーボンクレジット(※)「Jブルークレジット」制度を創設。
※温室効果ガスの削減量を取引の出来る形(=クレジット)にすること
出展:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)
Jブルークレジットは、藻場の保全活動等の実施者により創出されたCO2吸収量をクレジットとして認証し、CO2削減を図る企業・団体等とクレジット取引を行なう制度。JBEが認証・発行・管理する独自のクレジットである。
2020年度よりクレジットを発行し、2022年度には全国計21プロジェクトでJブルークレジットの認証・発行が行なわれている。
クレジットが発行されたプロジェクトには「神戸空港島緩傾斜護岸におけるブルーカーボン創出活動」(神戸市)や「五島市藻場を活用したカーボンニュートラル促進事業」(五島市ブルーカーボン促進協議会)など、自治体主体のものから企業、漁業協同組合など様々である。
②横浜市「横浜ブルーカーボン・オフセット制度」
全国の自治体で最も早くブルーカーボン・オフセットを実施したのは横浜市だった。
横浜市では、2014年度から2022年度まで、ブルーカーボンとブルーリソースを活用した独自のカーボン・オフセット制度「横浜ブルーカーボン・オフセット制度」を実施。
横浜市は、海洋資源を活用した温暖化対策プロジェクト「横浜ブルーカーボン」において、横浜市独自のカーボン・オフセット制度を運用。これまで、地元の企業・団体の「わかめの
地産地消」等による CO2 削減効果を活用し、排出される CO2のカーボン・オフセットを行ってきました。
本制度は、「ブルーカーボン」や「ブルーリソース」によるCO2吸収量の増大及び排出量の削減効果を、取引可能なクレジットとして独自の方法論によって認証し、そのクレジットの売買を行うことで、海の環境活動のさらなる推進を目指す、横浜の海を舞台にしたカーボン・オフセット制度だった。
※本制度は令和5年3月31日をもって終了
参考:横浜ブルーカーボン・オフセット制度
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/ondanka/etc/ygv/carbonoffset.html
③福岡市「福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度」
福岡市では、豊かな博多湾の環境を次世代に引き継ぐため、博多湾の環境保全・創造の活動に取り組んでいる。
出展:福岡市
「福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度」では、博多湾のアマモなどの藻場が吸収・固定したCO2量をクレジット化し、「博多湾ブルーカーボン・クレジット」として販売している。クレジットの販売収益は、「博多湾NEXT会議」のアマモ場づくり活動をはじめ、博多湾の環境保全創造の取組みに活用している。
「博多湾ブルーカーボン・クレジット」を購入することで、市民の日常生活や企業の事業活動で排出しているCO2量のうち、どうしても減らせないCO2量のオフセットに活用できるとともに、博多湾の環境保全活動を支援していただける制度となっている。
参考:福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kowan/kankyotaisaku/shisei/hbn_zm.html
***
経済産業省、環境省、農林水産省が運用するカーボンクレジット「J-クレジット制度」は、購入したクレジットをCDP・SBT・RE100での報告や温対法・省エネ法の報告などに活用できる。
一方で、ブルーカーボン・オフセット制度により取引されるクレジットは、こうした使い道はなく、現状では温暖化対策に積極的な企業、団体としてPRする目的でしか活用できない。
ブルーカーボンはグリーンカーボンに比べても吸収力が高いと言われている。カーボンニュートラル実現に向けてますます注目の「ブルーカーボン」、そして「ブルーカーボン・オフセット」の今後に注目していきたい。
取材・文/峯亮佑