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不動産業界のデベロッパーは、いったい何をする仕事なのでしょうか?デベロッパーとはどのような役割を担う存在なのか、意味や種類を解説します。仕事内容や、同じ不動産業界に属する『ゼネコン』との違いについても確認しましょう。
「デベロッパー」とは
デベロッパーとは、英語の『developer』に由来し、『開発者』の意味を持つ英語に由来する言葉です。不動産業界では、どのような意味を持つのでしょうか?意味や定義を解説します。
■デベロッパーは土地やまちの開発事業者
不動産業界におけるデベロッパーは『不動産開発事業者』を指し、英語では『Real Estate Developer』と表記されます。文字通り、土地・建物といった不動産の開発を生業とする事業者です。
建物を建築するための土地を取得し、商業施設・マンション・ビル・ホテル・リゾート施設など、大規模な開発を手がけるのがデベロッパーの役割といえるでしょう。
幅広い建築物の建設・運用や地域の再開発を担当するケースが多いため、土地活用やまちづくりに携わる事業者という印象が強いでしょう。同じデベロッパーでも、企業によって対応する範囲や建築物の種類は異なります。
■不動産業界での立ち位置
不動産業界には、仲介業・販売業・建設業などさまざまな業種が関わっています。デベロッパーは、建設や仲介といった特定の仕事だけを担当する会社ではありません。
都市開発や再開発は、都道府県や市町村など、行政が中心となって行います。デベロッパーは土地の取得、公共設備や道路の整備、ビルの建設など、行政や地域住民が目指すまちづくりをサポートし、企画を提案するのが役割です。
さらには、開発に関連する営業・運営・アフターサービスなども担当します。企画・開発だけでなく、開発後の運営を支える役割も担う、不動産業界に欠かせない事業です。不動産全般に携わるデベロッパーは、開発・販売・管理など幅広いシーンで活躍します。
デベロッパーとゼネコンとの違い
不動産業界には、デベロッパーと似た事業形態の企業もあります。関係が深い『ゼネコン』の特徴や、デベロッパーとの関係を確認しましょう。
■ゼネコンは建設工事を請け負う会社
ゼネコンは、英語の『general contractor(ゼネラルコントラクター)』に由来する言葉で、ゼネコンは略した言い方です。
英語のgeneral contractorは、主に建築を請け負う業者や個人のことです。日本語でもほぼ同じ意味で使われており、建築・土木工事を請け負う総合建設会社を意味します。
総合建設会社は、建設・工事の元請けとして全体の管理を担当するのが特徴です。現場における工事の実作業は主に工務店や下請け業者に依頼し、指示・管理を担当します。
似た業態としてハウスメーカーが挙げられますが、ハウスメーカーは住宅の建設・販売が主な役割です。ゼネコンはさまざまな不動産を扱います。
■デベロッパーとゼネコンの関係
デベロッパーは開発を担いますが、実際に工事を請け負うのはゼネコンです。土地の取得などを担当し、工事を依頼する側がデベロッパー、依頼を受けて建設・工事を担当するのがゼネコンといえるでしょう。
企画や建築設計までデベロッパーが担当し、ゼネコンに工事を発注します。建物の建設が終わると、デベロッパーが運営や販売を行うのが一般的です。
どちらも不動産を総合的に扱う大手の会社が多く、担当する仕事は部門や会社によって異なります。
デベロッパーの種類
デベロッパーは、取り扱う不動産の種類によって呼び方が変わります。一般的な分類は『総合デベロッパー』と『専業デベロッパー』です。それぞれの特徴や事業の内容を確認しましょう。
■総合デベロッパー
総合デベロッパーは、さまざまな種類の土地・不動産を扱う会社です。商業施設・オフィスビル・マンション・リゾート施設など、施設の形態を問わず広い範囲で事業を展開します。
総合デベロッパーに該当するのは、三井不動産・三菱地所・東急不動産といった大手不動産会社が中心です。例えば、三井不動産には『ビルディング本部』『商業施設本部』『ホテル・リゾート本部』のようにいくつもの部門があります。それぞれの部門が専門的な事業を請け負い、経営を多角化しているのです。
総合デベロッパーには、幅広い不動産開発事業に携われる資金力と信頼性を兼ね備えた、大手企業が多いといえるでしょう。
■専業デベロッパー
専業デベロッパーは、特定の分野に特化しているデベロッパーです。例えばイオンモールやルミネは、デベロッパーが企画・運営し、テナントを募集するタイプの商業施設です。
不動産会社が経営するマンションシリーズは、マンションデベロッパーに該当するでしょう。アウトレットパークにも、デベロッパーが企画・運営しているものがあります。
専業といっても、商業施設や複数のマンション向けの土地を取得し、企画・運営に携わることから資金力や信頼性は必要です。総合デベロッパーのグループ企業が専業デベロッパーとして活躍しているケースが多いといえるでしょう。
デベロッパーの仕事内容
デベロッパーは、大まかに分けて4種類の仕事をしています。それぞれの仕事内容や、デベロッパーの役割を見ていきましょう。
■用地取得
用地取得は、まちづくりや開発のために必要な土地を手に入れることです。デベロッパーは企画内容や目的に合う土地を探し、分析を行います。
土地の広さだけでなく、開発の目的に適合した土地であるかを、さまざまな観点から判断するのが重要です。例えば商業施設を運営するつもりなのであれば、集客率は見込めるのか、大型の建物を建設できるポテンシャルがある土地なのかを見極めなければなりません。
土地が見つかると、所有者との交渉によって、土地や使用権を手に入れます。必ずしも土地探しから始めるわけではなく、土地が用意されているケースや、所有者との話し合いが終わっているケースもあります。
■企画・開発
デベロッパーは、主に企画と開発に携わります。先に企画を練っておき、企画に合わせて土地を探すか、すでにある土地を活用するために企画を提案するかは、ケースバイケースです。
土地の取得や企画の提案が終わり、プランが確定すると実際の開発に移ります。建物の建築設計や外観のイメージを決めたら、ゼネコンに工事を依頼しなければなりません。
工事が始まった後も、計画通りに工事が進捗しているか確認するために、管理を担当します。納期や資金の振り分け、開発のイメージを前提とした方向性の擦り合わせなど、ゼネコンに指示や依頼を出すのが主な役割です。
■営業販売
デベロッパーの仕事は、企画と開発が終わり、施設や建物が完成した後も続きます。複数の部門を持つ会社であれば、営業・販売部門が対応するのが一般的です。
例えば商業施設を建設する場合、テナントを募集しなければなりません。テナント募集は、工事が終わる前の段階から始まります。完成後に出店するテナントを集めるため、営業や宣伝、パンフレットの作成などが主な仕事になるでしょう。
建物が完成しテナントが入った後は、一般顧客への宣伝も必要です。Webサイトでのお知らせや近隣へのチラシ配布、メディアを使った広告など、さまざまな手段があるでしょう。
開発する施設によって、営業・販売の方法や内容は異なります。マンションであれば入居者を募り、オフィスビルであれば入居する会社を募集しなければなりません。
■管理・運用
デベロッパーは、営業や販売を行った施設の管理・運用にも関わります。大手企業の場合は、特定のグループ会社や部門が対応するケースが多いでしょう。
テナントや賃貸物件のように、貸し出して利益を得るものであれば、継続的な集客が見込めるよう管理を続けなければなりません。定期的なイベント開催や集客が見込める企画を打ち出し、人を集めます。集客が継続すればテナントが離れることはなく、長期的に収益を上げられるでしょう。
分譲マンションのように販売するものであっても、質の高いサービスや管理を行うのは重要です。魅力的なサービスを展開できていれば、新しく建設したマンションの売り上げにも好影響を与えます。
構成/編集部