こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
今回は【寿司店 vs アルバイト】の事件を解説します。
シフトを激減させられたベテランアルバイトがキレた?ある日を境に出勤しなくなります。
会社は「退職した」として退職手続きを進めますが、アルバイトはそれに反発。労働組合に駆け込みます。5回の交渉をしますが折り合わず。裁判沙汰に。
裁判所
「バイトの勝ち。合意退職は成立していない。会社はバイトさんに300万払え」
以下、分かりやすくお届けします(リバーサイド事件:東京高裁 R4.7.7)。
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
▼ 会社
・寿司店を経営(ほかコンビニやスーパーマーケットなども)
▼ Xさん
・アルバイト(時給1300円)
どんな事件か
▼ 10年選手のベテラン
H20.8
Xさんが寿司店でアルバイトを始めます。勤務経験を重ねてマネージャー業務やほかのアルバイト指導なども行っていました。およそ10年、ずっと週6日ほど働いていました。生活の糧だったことが窺えますね。
▼ シフト激減
しかし、H31.1以降、Xさんの希望していた勤務日が激減したんです。具体的には以下のとおり。
1月 週4日
2月 週3日
3月 1ヶ月間でわずか3日……
このとき、Xさんは店長に対してシフト激減の理由を問いただしませんでした。
▼ シフト提出せず
Xさんは、3月13日、翌月のシフトを提出せず、その日の勤務を最後に出勤しなくなりました。
▼ 会社が雇用終了の手続きに着手
会社は、Xさんの社会保険や雇用保険の資格喪失手続きを始めました。4月下旬にはその旨記載した書面をXさんに送付しました。新しい従業員の採用活動も始めました。
4月7日と4月8日に店長がXさんへ資格喪失日を確認するためにLINEを送りましたが、返答なし。
▼ TELでバトル
4月10日店長がXさんにTELしました。その時の会話はおおむね以下のとおり。
店長
「3月分の社会保険料は店が負担しています。3月末で社会保険を停止します」
Xさん
「辞めるとは言ってません。今は休んでいますが復帰するつもりなので社会保険の継続を求めます」
店長
「現状はシフトが埋まっているので復帰できません。休む理由は何でしょうか?復帰する時期はいつでしょうか?」
Xさん
「復帰する時期は分かりません。休む理由を言う必要はありません。これは不当解雇です」
5月10日
Xさんは店長にLINEを送り、退職の意思表示をしたことを強く否定しました。
▼ 会社が退職に向けて手続きを進める
R1.7
会社はXさんに退職証明書を交付します。
退職年月日:H31.3.31
退職理由:3月13日を最後に欠勤が続いている。4月半ばに退職すると言っていたから。
▼Xさん、 労働組合に駆け込む
Xさんは労働組合に駆け込みます。そして労働組合は会社に対して「解雇を撤回してほしい」との要求書を送りました。その後、5回の団体交渉が行われたが話はまとまらず。舞台は法廷へ。