リクルートは、地方部と都市圏の転職動向について、転職支援サービス『リクルートエージェント』のデータを分析。先日、その結果を発表した。
本稿では、その一部を抜粋してお伝えする。
2015年度〜2022年度の7年で3.32倍と増加傾向
同社では今回の調査について、「〝働く個人の転職〟〝企業の中途採用〟に関して、地方部においては都市圏よりも抵抗があるのでは、という声に対し、実際の動向を明らかにすることで、新たな機会を広げていくことができないかと考えました」とコメントしている。
■主なトピックス
1. 地方部の転職者数は、2015年度〜2022年度の7年で3.32倍と増加傾向にある。都市圏の2.06倍よりも増加幅が大きい。
2. 2015年度-2022年度にかけて、異業種・異職種への転職は、地方部で4.43倍に増加しており、都市圏の2.50倍と比べても大きく増えている。
3. 異業種・異職種への転職者数が全体の何割を占めているかを見ると、2015年度:33.6%→2022年度:44.0%(10.4ポイント増加)、同業種・同職種の転職は2015年度:23.3%→2022年度:16.4%(6.9ポイント減少)であり、全ての転職の中での異業種・異職種への転職の機会が広がっていると言える。
出所:リクルート『リクルートエージェント』求人件数の分析
調査結果解説〜リクルート HR統括編集長 藤井 薫 氏
造的な人材不足が叫ばれる中、特に地方部では都市圏よりも、人材不足は深刻な状況です。そうした中で、地方部と都市圏の転職の実態は、どうなっているのか? 今回、『リクルートエージェント』のデータから、二つのエリアの転職・求人動向の差異を分析しました。
明らかになったのは、以下のポイントです。
(1)地方部への転職者数は、都市圏へのそれより増加幅が大きい(7年で地方部3.32倍、都市圏2.06倍)
(2)未経験で応募が可能な求人件数は、地方部の方が都市圏より増加幅が大きい(7年で地方部19.08倍、都市圏8.43倍)
(3)地方部への異業種・異職種転職は、都市圏へのそれより増加幅が大きい(7年で地方部4.43倍、都市圏2.50倍)
(4)地方部と都市圏の企業の賃上げや柔軟な働き方への取り組みについては、賃上げの実施率に違いはなく、「在宅勤務・リモートワーク制度」の実施率は、地方部より都市圏の企業の方が他項目と比べて特に高かった(地方部34.9% 、都市圏48.1%)
都市圏との人材争奪戦が激化する中、地方部の企業は、採用ターゲットを異業種・異職種に広げ、賃上げを行い、働き方の柔軟性を高め、人材を求心していることがわかります。
一方で、「在宅勤務・リモートワーク制度」などの働き手のニーズに合った柔軟な働き方においては、都市圏の企業に劣後している状況も見られました。
今後は、働く個人が住む場所に関わらず、イキイキと働ける活躍の場をいかに整備できるかが、キャリア採用成功のカギとなります。会社を中心にしたワークデザインと、個人を中心にしたライフデザインをいかに組み合わせられるか。
地域や業種を越える人材の求心力は、リデザイン力にかかっています。
調査概要
調査方法/『リクルートエージェント』求人データ・転職決定データ分析
調査対象/『リクルートエージェント』求人データ・転職決定データ
調査実施期間/2015年度~2022年度
調査機関/クルート
調査方法/ンターネット調査
調査対象/全国の人事業務関与者(担当業務2年以上)
有効回答数/5048人 ※ただし、従業員規模30人以上の企業に勤める2,761人を集計対象とした。
調査実施期間/2023年3月29日(水)~2023年3月31日(金)
調査機関/インターネットリサーチ会社
関連情報
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20231113_hr_02.pdf
構成/清水眞希