SNSでは無理に修正せず、自然な肌を見せたり、肌に優しい、自然素材のゆったりした服を着る、エフォートレスファッションが流行っている。加工して無理に美しく見せるより、シミやシワの入った自然な肌で、その人らしい、ありのままの美しさを表現するやり方である。
無理なアイロンがけをせずに、ルーズで自然なシワの寄った服。高いヒールではなく快適なスポーツシューズ。盛らない自然なメイクアップの方が、その人本来の美しさが見えて魅力的であるという風潮も、高まって来た。ファッションがエフォート(我慢)レス(しない)となってきたのである。
女性の化粧もエイジングケアが完全に浸透した。加齢(エイジング)に応じてその人に適した肌や髪の手入れをすることで、失われてしまった若さを求めてはいない。タレントの近藤サトさんや、俳優の吉川晃司さんのグレイヘアも人気で、髪を無理に染めず、自然に白髪を見せるスタイルが受けている。白髪=老人というイメージが薄れ、自然に年齢を受け入れる、ありのままの姿が、共感を集めている。
エフォートレスファッションのはじまりを象徴する靴
ファッションとしてのエフォートレスが登場してきたのは、2014年の春夏コレクションの頃から。活動的でスポーティなファッションの流れが定着し、より楽で活動的な服への挑戦が始まっていた。特に目立ったのが足元のファッションで、サンローランのコレクションではモデルに低いヒールの靴を履かせて、ランウエイを自由闊達に歩かせたのである。
足に負担のかかるハイヒールを脱ぎ、歩きやすい靴、傷みを感じない靴を履いて、自由に歩こう。ハイヒールでなくても、こんなに美しいファッションが存在する……女性たちは自分たちが意識せず、無理を重ねていたことに、気づき始めたのである。
自由で自然で、我慢しない服の概念は、新鮮で魅力的だった。世界4カ国で出版されている女性向け雑誌のELLEが、こうした自然な美しさをエフォートレス・シック(Effortless Chic)と名付けて発信したことから、エフォートレスという言葉が瞬く間に広がったのである。