「キャッシュレスならではの悩み」というのがある。ひとつ挙げれば、「チップをどうするか」という問題だ。
日本ではチップの習慣はあまりないが、それでも「タクシーの運転手にチップを渡す人」は存在する。これはタクシー運転手にとっては度外視することはできない実入り。ところが、今の時代常時多くの現金を持ち歩いている人は少なくなった。キャッシュレス決済で事足りるからだ。
そういうわけだから、タクシー配車アプリに「チップ機能」を搭載しよう……という取り組みが日本でも海外でも行われている。
降車後にチップを渡せる機能
日本のタクシー配車アプリ『GO』は、10月にこのようなプレスリリースを配信した。
アプリ内に搭載されている決済機能『GO Pay』で、ドライバーへチップを送ることができるようになったという内容である。
これは東京都及び神奈川県での先行実装で、200円・500円・1,000円という額を選択して徹頭徹尾キャッシュレスでチップを渡す仕組み。操作可能時間は降車後24時間以内。もちろんこれはチップだから、最後まで操作しなくとも問題は発生しない。
ドライバーは乗務員専用アプリで手数料実費相当分を引いた額のポイントを受け取る。1ポイント1円の換算だ。もちろんポイントはタクシーの運営会社ではなく、ドライバー個人の実入りとなる。
この機能の肝は、ドライバーに一言も声をかけずともチップを渡せるという点だろう。
チップを渡すまでの瞬間が気恥ずかしいと感じる人、そしてわざわざドライバーに声をかけるのが重いと感じる人でも何の気兼ねなくこの機能を利用することができる。いや、むしろこの機能がなければチップを渡そうとは考えない人もいるだろう。
チップ機能の実装で、ドライバー個人の収益は今までより増えるのではないかと筆者は思案している。
インドネシアの同名アプリでも
これと同様のチップ機能は海外のライドシェアアプリにも実装されている。
奇遇にも、『GO』と同名のアプリのチップ機能を筆者は試したことがある。インドネシアの『Go-jek』だ。
この『Go-Jek』は、独自の決済サービス『Go-Pay』を有している(上述の『GO Pay』と区別するため、表記を変えている)。使い方は一般的な配車サービスと同様、スマホアプリでバイクタクシーを任意の場所に呼ぶ。支払いは現金決済にも対応しているが、『Go-Pay』を使ったほうが遥かにお得でやり取りもスムーズ。
そして、乗車後はバイクタクシーのライダーにチップを渡すことができる。無論、これも徹頭徹尾オンライン&キャッシュレス。1.000ルピア(約9.5円)から8万ルピア(約760円)までと、選択の幅はかなり広く設定されている。
2023年のジャカルタ特別州の最低法定賃金が月490万1,798ルピア(約4万6,000円)だから、仮に8万ルピアのチップをライダーに渡したら彼はガッツポーズして喜ぶはずだ。
さらに『Go-Jek』の場合、「このライダーのどの部分が良かったのか?」という意見も送ることが可能。ライダー自身がそれを参考にして、己の仕事により磨きをかけることができる。