東京海上日動火災保険と宇宙航空研究開発機構は、新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA 宇宙イノベーションパートナーシップ」の枠組みのもと、「宇宙リスクソリューション事業」に関する共創活動を開始した。
民間商業ステーション事業を第一段階のターゲットとして、宇宙産業に新規参入を検討する企業の後押しや、事業継続を支える新たな「宇宙リスクソリューション事業」を共創
宇宙産業市場は 2040年には現在の3倍以上の150兆円規模に成長すると予測されており、宇宙産業の需要拡大を受け、従来のロケット打上げ事業者や衛星事業者に加えて、新たに宇宙分野に参入する企業が相次いでいる。
政府が2023年6月に決定した新たな「宇宙基本計画」においては、宇宙安全保障の確保や産業の競争力強化のために、官民が連携して宇宙開発利用を推進していくことの必要性や、民間事業者のさらなる参画が重要であることが言及。
宇宙産業が成長するなかで、軌道上サービスやポストISSを見据えた民間商業ステーション事業に対するリスク評価や、ミッションの成功確率を上げるためのリスク低減コンサルティング、サステナブルな宇宙環境の実現に向けたスペースデブリ対策の重要性は益々高まっている。
一方で、軌道上サービス等の新規実証ミッションは、過去の実績が少なく、軌道上におけるリスクの可視化・定量化が難しいことから、現状では適切な保険の手配が困難なケース等があり、企業の新規参入時の課題となっている。
また、現状ではスペースデブリによるリスクを精緻に評価する手法が確立されていないため、対応策が求められている。
これらの背景を踏まえ、東京海上日動が持つ宇宙保険分野での実績およびノウハウと、JAXAが持つ宇宙ミッションにおける技術的なリスクマネジメントのノウハウを組み合わせ、民間商業ステーション事業を第一段階のターゲットとして、宇宙産業に新規参入を検討する企業の後押しや、事業継続を支える新たな「宇宙リスクソリューション事業」を共創する。
具体的なサービス例は「民間商業ステーションの運用に関するリスクの定量評価」「上記に関するリスク低減コンサルティング、保険商品・付帯サービスの提供」「宇宙スタートアップに対する包括的なリスクマネジメント手法の提供」など。東京海上日動にて、本共創活動の成果を利用し2024年度以降、段階的にサービス提供を開始する予定だという。
なお、東京海上日動は、グループのデータ中核機能を担う東京海上ディーアールと連携し、これまでロケット打ち上げ事業者や衛星メーカー等向けの保険提案・リスクコンサルティングサービスを提供してきた。
今後は本共創活動を通じて、民間商業ステーション事業やスペースデブリ等周辺の宇宙環境に関するリスク評価手法の確立を目指し、これにより、新規参入事業者が保険を付保しやすい環境を整えるとともに、事業者と一体となってミッション成功率の向上を支援してくとしている。
JAXAは、有人宇宙活動をはじめとする JAXAプロジェクトで活用されてきたリスク定量化手法やプロジェクトリスク評価手法を、民間の宇宙関連事業に適用する際の有効性を検証し、技術的観点から当該事業のフィージビリティスタディを支援し、これにより、ポストISS や軌道上サービス等の新たな事業分野へ幅広いプレーヤーが参入しやすくなり、成長著しい宇宙産業市場の拡大につながることを期待するとのこと。
また、本共創活動の成果をJAXAの新規ミッションにおけるリスク定量化手法の効率化、精度向上にも活用していくとしている。
関連情報
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/
https://www.jaxa.jp/
構成/立原尚子