日本人選手初のホームラン王獲得、WBC優勝、MVP受賞など先入観を覆し、不可能を可能にする大谷翔平選手の活躍はいつも我々に勇気を希望を与えてくれます。
私たちは、大谷選手が突然凄い才能を獲得したような錯覚を持ちます。しかし、事実はそうではありません。大谷選手はプロセスを徹底的に追求することの大切さを誰よりも理解しています。
「大きな夢は小さな目標の総量である」、つまり「結果」ではなく「プロセス」に意識を置いているのです。「小さな目標の実現」に果敢に取り組む。その小さな習慣こそが偉大な成果を上げる必須の要素ということだと思います。
昨日より今日、今日より明日。自分史上最高の自分にめぐり逢うための「ポジティブ思考」の神髄に迫る話題の書籍『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、自分を成長させる大谷選手の思考法を解説していきます。
【大谷翔平選手が教えてくれる仕事で成果を上げる秘訣】今日という一日を最高のものにしよう
私の運命を変えた言葉がここにあります。
「神はあなたになんらかの使命を持たせてこの惑星に送り込んだ」
私は誰が語ったかわからない詠み人知らずのこの言葉に今から45年前にめぐり逢いました。その言葉が私の運命を変えたのです。当時私は大学卒業後に勤めた大企業から、社内海外留学制度の一期生としてカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院に2年間留学し、工学修士号を取って帰国したすぐ後だったと思います。
たまたま書店で購入した本の中にこの言葉が書かれていたのです。もしも、この言葉に出合わなかったら、おそらく私は定年までサラリーマン生活を続けていたでしょう。
もしもあなたの先祖がたった一人でも違っていたら、間違いなくあなたは生まれていません。そんなことを考えたら、たった一度のこの人生の今日という一日の目の前の一瞬すら無駄にできないはずです。
私のスポーツ心理学の師である、アメリカを代表する著名なスポーツ心理学者ジム・レーヤー博士の哲学は、「一日単位で完全燃焼」です。
彼は「昨日のことは忘れてしまいなさい。それはもう過ぎ去ったもの。そして、明日のことは明日考えればいい。今日一日を完全燃焼しなさい」と説き続けています。大谷選手の活躍の源泉は、日々の習慣を野球のために捧げているという事実です。日常のささやかな幸せについて、大谷選手はこう語っています。
「今のささやかな幸せ……何でしょうね。ささやかな幸せを感じるまでもなく、今は日々に満足していますね。今日もしっかり練習できたし、これから帰ってごはんも食べられるし……。(中略)食べられるという平穏な一日に満足しているんです。夜になったら寝心地のいいベッドがあってそこで寝られるし、明日が来ればまた練習できるし……そういう何の不安もなく暮らせる感じというものに満足しているんですよね。それがささやかではない幸せなんだと思います」(Numberweb 2023・03・16付)
「いかにして今日という一日を最高の一日にするか?」ということについて大谷選手は真剣に考えていることが、この言葉から伝わってきます。
UCLAの伝説的なバスケットボール部の名コーチ、ジョン・ウッデンは小さい頃、父親から「今日という日を自分の最高傑作にしなさい」という教えを受けました。この言葉から、彼は、「人生とは今日である。この先で待っている時間のことではない」という真理を学んだのです。
あるいは、著名な啓蒙家でベストセラー作家のスティーヴ・チャンドラーは、こう語っています。
「今日という日はあなたの一生を凝縮した小宇宙だ。今日一日の中に、あなたの全人生が詰まっている。人は朝目が覚めると同時に誕生し、そして夜眠りに落ちるときに死ぬ。1日とは本来そういうものだ。人は一日で全人生を生きることができるのである」(『自分を変える89の方法』ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「なぜ1日が24時間なのか?」という理由よりも、「なぜ太陽は1日単位で昇ったり、沈んだりするのか?」という事実について、考えてみましょう。「一日一生」という言葉を頭の中に叩き込んでベストを尽くす。これは大切なことです。
その日一日を完全燃焼させるために、良質の睡眠は必須です。ペンシルベニア大学の研究で、6時間睡眠を14日間続けると、2日間完全に徹夜したときと同程度の集中力低下をきたすということが明らかになりました(図表14)。
その実験方法は、モニター画面上に赤い丸が表示されたらボタンを押すというものです。睡眠時間を制限して2週間実験を行ったところ、0・5秒を超える反応時間の数は、8時間睡眠に比べて6時間睡眠は10日後には4倍、4時間に睡眠を制限したら、6倍になったのです。徹夜は3日間のデータしかありませんが、集中力の低下は明らかです。
大谷選手は、ことのほか睡眠時間を大切にするアスリートです。
「(大事なのは)睡眠ですね。今は10時とか10時半には寝ますね。できるだけその日にすごい死ぬ気で頑張ったトレーニング(の成果)が返ってくる割合をなるべく100%にしたいなって感じですね」(日本スポーツ振興センター アスリート育成パスウェイ)
毎日6時間しか寝ていない人は、毎日、徹夜明けで仕事をしているのと同じくらいの仕事しかこなせないというデータも存在します。それに加えて、睡眠不足は、勉強効率を下げるだけでなく、多くの疾患の確率を上昇させ、寿命まで縮めてしまうのです。
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いかがでしょうか?
大谷選手を超一流のアスリートへ飛躍させた思考法にはビジネスパーソンも学ぶことも多いと思います。ぜひ日々の小さな目標の実現を目指して一歩一歩、「できない」を「できる」に変える努力をしてもらえればと思います。
さらに詳しい解説は児玉光雄さんの著書、『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』をチェックしてみてください。
「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法
著/児玉光雄/アスコム
児玉光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問、元鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒。大学時代はテニスプレーヤーとして活躍し、全日本選手権にも出場。カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)大学院で工学修士号を取得。米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として、米国五輪選手のデータ分析に従事。過去30年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、ゴルフ、テニスを中心に数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務める。また、右脳活性プログラムのカリスマ・トレーナーとして、これまで数多くの受験雑誌や大手学習術に右脳活性トレーニングを提供。この分野の関連書は100冊以上、累計発行部数は150万部を越える。主な著書はベストセラーになった『この一言が人生を変えるイチロー思考』(知的生きかた文庫)をはじめ、『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80』(三笠書房)、『能力開発の専門家が作ったそうぞう力とさんすう力がみるみる育つこども脳トレドリル』『頭がよくなる!「両利き」のすすめ』(いずれもアスコム)など200冊以上。日本スポーツ心理学会会員、日本ゴルフ学会会員。
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