ボアアウトとは、2007年スイスのビジネスコンサルタント、ピーター・ワルデルとフィリップ・ロスリンの著書で登場した言葉で、仕事に対してやりがいのなさを感じながら退屈な状態を過ごすことによって気力の低下や疲労感、悲しみなどを感じる状態を指す。英語のboring(退屈)を語源とし、日本語では「退屈症候群」と呼ばれている。フランスの裁判で従業員が「退屈な仕事がメンタルヘルスを害した」として企業を訴えた結果、「ボアアウトがモラルハラスメントに値する」として企業の責任を認める判決が下った。
その後、パンデミックによる仕事環境の変化により、仕事量の減少やリモートワークによって引き起こされたコミュニケーションの低下が「ボアアウト」を引き起こしているのではないかと懸念されているようだが、実際のところ働く環境は従業員にどのような影響をおよぼすのか。世界最大規規模の従業員意識調査(エンゲージメントサーベイ)を提供する調査機関Great Place To Work®︎ Institute Japan(GPTW Japan)代表の荒川陽子氏に、ボアアウトが引き起こされる要因とその解決策について聞いた。
フル出社とフルリモートでは働きがいに大きな差がない!?
GPTW Japan代表の荒川陽子氏は、「大前提として、すべての職種、すべての人が仕事にやりがいを感じられる」と念押しする。その一方で、GPTW Japanの調査では、職種や労働環境によってやりがいを感じにくくなる状況が発生しているのも事実だという。
「我々の調査では、製造業の生産ラインで働いている方、事務などの仕事に就いている方は、仕事へのエンゲージメントのスコアが相対的にやや低い傾向にあることがわかっています。仕事そのものが悪いのではなく、ルーチンワークが何の役に立っているのか、顧客価値にどうつながっているのかが見えにくいことがボアアウトの一因だと考えます」(GPTW Japan代表 荒川陽子氏、以下同)
では、労働環境が仕事のやりがいにおよぼす影響はどうか。同社の調査によると、ほぼ出社体制をとっている会社と、ほぼフルリモート体制をとっている会社とでは、従業員の仕事のやりがいのスコアに差があまり出ていないそうだ。しかし、条件が重なればボアアウトにつながってしまうこともある。
「本人がもともと働きがいを持って働けていて、さらに職場がリモートワークでもしっかりコミュニケーションやサポートが行われている環境であれば問題ありません。しかし、働きがいが感じられていない人がリモートワークに突入して周囲とのコミュニケーションが減ると、さらに仕事のモチベーションが下がってコンディションが悪化する可能性があります。その本人の状態の変化に上司や同僚がタイムリーに気づいてあげられないような労働環境においては、ボアアウトは助長されやすいと言えます」