EV充電器や大容量蓄電池などの事業を展開するBell Energy株式会社(以降、ベルエナジー)が、ポータブル急速充電器を使った電気自動車(以降、EV)向け出張充電サービス「電気の宅配便」を発表した。2024年度内の事業化を目指し、茨城県つくば市内で2023年9月19日より実証実験がスタートしたところだ。
ベルエナジーは2003年の設立以来、太陽光発電用パネルの基板設計や部材の調達などを手がけてきた技術商社。約6年前から海外メーカーと業務提携し、街中のEV充電スポットに設置されるような急速充電器や、クレジットカード払いに対応した決済端末付き普通充電器など、海外製品を日本仕様にローカライズした製品が好評を博している。そんななか、EVユーザーが充電スポットに出向くのではなく、急速充電器を搭載した専用車がクルマ側に出向いて充電するという画期的なサービスに着手したのだ。
充電スポット以外の場所でもEVの急速充電が可能に
「電気の宅配便」について深掘りする前に、EV充電がどんなものかおさらいしておこう。スマホの充電と同じように、EV充電にも「普通充電」と「急速充電」があり、家庭用のAC200V・100Vのコンセントで行われる普通充電だと、車を満充電にするのに長時間かかってしまう。一方、街中のディーラーや商業施設などの充電スポットにある急速充電器であれば、商用電力を引っぱってくることで高出力を実現し、短時間でEV充電を行うことができる。
では、普通自動車の〝ガス欠〟ならぬ、EVの〝電欠〟を想定するとどうだろうか。ホームセンターなどで手に入るアウトドア用ポータブルバッテリーを使えば出先でEV充電することも可能だが、蓄電池容量が小さく、こちらも普通充電のため長時間かけてもわずかしか充電されない。
ここで一筋の光明となるのが、「電気の宅配便」の実証実験に使われる日本初のモジュール式ポータブルEV急速充電器「Roadie V2(ローディー)」というわけだ。「Roadie V2」は「どこでも急速充電」をコンセプトに、外部入力設備不要、完全スタンドアローン設計のEV急速充電器となっている。すでに法人からの引き合いは多く、日本国内での販売・受注台数は100ユニットを突破したそうだ。
「『Roadie V2』を使うと、10分の充電で約20kmの追加走行が可能です。これはレスキューの現場において大きな強みだと考えていまして、直近ではロードサービス会社のJAF様に納品した実績があります。電源の取りづらい場所でも急速充電ができるとあって、自動車メーカーの研究現場などでも活用されています」(Bell Energy株式会社 モビリティ事業部 川井宏郎氏、以下同)