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『パート』と『アルバイト』という名称で、それぞれ異なる条件の求人が募集されているケースがあります。なぜ名称が違うのでしょうか?どのような違いがあるのか、法律上の定義や使い分けの基準を解説します。正社員との違いや、待遇も確認しましょう。
パートとアルバイトの違い
短時間勤務の非正規職員は、『パート』や『アルバイト』と呼ばれます。名称の違いに何らかの基準があるのか、法律上の定義と一般的な使い分けの基準について見ていきましょう。
■国の制度上や法律上の定義に違いはない
パートやアルバイトに関しては「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(通称・パートタイム・有期雇用労働法)で定められており、短時間労働者(パートタイム労働者)の定義に従っていれば、パートタイム、アルバイト、契約社員などの名称は問わないとされています。
国の制度上で短時間労働者は、同じ事業所で働くフルタイム勤務の労働者と比べて労働時間が短い人を指します。区分の名称は『パートタイム労働者』となっていますが、上述のように法律上はアルバイトもパートタイム労働者に含まれており、定義上ではパートもアルバイトも同じ短時間労働者です。
しかし、雇用形態がパート・アルバイトであっても、フルタイムで働く人もいます。フルタイムで働くパート・アルバイトは、厚生労働省の定義で分類すると『フルタイム有期契約労働者』です。労働時間による定義の違いはありますが、パートとアルバイトに違いはないといえるでしょう。
参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 | e-Gov法令検索
■パートとアルバイトの使い分け
法律上、パートとアルバイトに違いはありませんが、多くの企業は募集内容やターゲットに合わせて言葉を使い分けています。
パートは、英語の『part-time job』が語源です。1950~1960年代にかけて女性の短時間労働が広まるのに伴い、主に主婦の短時間勤務を表す言葉として定着しています。
対してアルバイトはドイツ語の『Arbeit』が語源です。本来、ドイツ語では『仕事』という意味を持ちます。日本では学生の短時間勤務を表す言葉として広まり、1950年ごろには新聞記事にもアルバイトの文字が見られます。
パート・アルバイトという言葉が広まった経緯と連動し、現在でもパートは主婦や女性、アルバイトは学生をターゲットにした募集で使われるケースが多いようです。
パート募集に学生、アルバイト募集に主婦が応募すること自体に問題はありません。ただし、企業側が独自の条件を設定している可能性があるため、パート・アルバイト両方の求人を出しているケースでは、募集先に名称や条件が異なっている理由を問い合わせるのが確実です。
正社員との違いとは
パート・アルバイトとして働く場合、正社員とは条件や待遇が異なります。正社員として働くべきか、パート・アルバイトとして働くか迷っている場合は、条件の違いや双方のメリット・デメリットを把握して選択するのがおすすめです。主な違いを確認しましょう。
■労働時間の違い
パート・アルバイトは、正社員と労働時間が異なります。正社員はフルタイム勤務が基本となっており、特別な事情がない限り毎月の労働時間はほぼ固定です。
パート・アルバイトは、シフト制によるケースが多く希望に合わせて労働時間を申告できます。都合の良い曜日・時間を選択し、自由に働けるのが特徴です。
働けない曜日や時間があっても、パート・アルバイトを選択すれば無理なく勤務を続けられるでしょう。
■契約期間の違い
パート・アルバイトは、有期雇用が主流です。一方で、正社員は一般的に無期雇用で採用されます。
有期雇用労働者であっても、働き始めて一定期間が経過すると無期雇用に転換する権利が生まれますが、勤務先に申請をしなければ変更はできません。
最初から無期雇用で採用される正社員は、解雇や雇い止めのリスクが小さく、安定した働き方です。パート・アルバイトは正社員に比べると、ややリスクが高い働き方といえるでしょう。
■福利厚生の違い
正社員とパート・アルバイトでは、利用できる福利厚生が異なるケースが多いでしょう。一般的に、正社員の方が充実した内容です。
福利厚生は、利用できる範囲や条件が就業規則によって定められています。パート・アルバイトであっても同様の条件で利用できる企業も中にはあるでしょう。
また、正社員とまったく同じ仕事をしているにもかかわらず福利厚生が利用できないといった問題が起きている場合は、待遇の差をなくすよう是正が求められるケースもあります。
パート・アルバイトが得られる待遇
パート・アルバイトは正社員と待遇が異なるものの、同じように利用できる社会保険や福利厚生もあります。働く上で覚えておきたい待遇について見ていきましょう。
■社会保険に加入できる
パート・アルバイトであっても、条件を満たすと社会保険の加入対象です。社会保険の加入対象は、企業規模や労働時間によって異なります。現状の条件は以下の通りです。
- 従業員が101人以上の勤め先(2024年10月からは51人以上)
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 所定内賃金が月額8万8,000円以上(基本給および諸手当。残業代・賞与等は含まない)
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象)
なお、条件を満たした場合、自分では社会保険に入りたくなかったとしても避けることはできません。事情がある場合は、労働時間を調整し、社会保険の加入対象にならないような形で働く必要があります。
参考:パート・アルバイトのみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省
■有給休暇の取得が可能
パート・アルバイトは、有給休暇の取得も可能です。有給休暇は、雇用された日から6カ月以上が経過し、期間中の全労働日の8割以上出勤した人に与えられます。
就労期間と出勤率を満たしていれば雇用形態を問わず発生する権利ですが、有給休暇の日数は労働時間や継続勤務期間によって異なります。年間の最大付与日数は20日です。
労働時間や週当たりの労働日数が少ない場合は、付与される日数も少なくなります。有給休暇の残数は、勤務先で確認が可能です。付与された日から2年経つと権利が消滅するため(労働基準法第115条)、早めに取得について相談しておきましょう。
参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
パート・アルバイトの税金と控除
パート・アルバイトとして働く場合でも、税金や控除が発生するケースがあります。扶養内で働きたいと考えている人は、税金が発生する目安や、配偶者控除を利用できる目安を覚えておきましょう。
■所得税や住民税が課される
パートやアルバイトの収入が一定の金額を超えると、所得税や住民税がかかります。所得税は年収103万円、住民税は地域によって差があるものの年収100万円程度が目安です。
住民税には、所得に関係なく支払う『均等割』と、所得によって変動する『所得割』があります。所得税は、収入から控除分を引いた『所得』に課される税金です。
短時間のパート・アルバイトで年収の目安を少し超えた程度であれば、かかる税金は年間数千円程度であり、大きな影響はないでしょう。所得が増えるに従い、税額も増えていきます。
『勤労学生控除』『社会保険料控除』『配偶者控除』などが利用できる場合は、収入が目安を超えていても所得税・住民税が発生しないケースもあります。
■配偶者控除・配偶者特別控除
『配偶者控除』と『配偶者特別控除』は、配偶者を扶養している世帯主の税負担を軽減できる仕組みです。パート・アルバイトで給与収入を得ている被扶養者が一定の年収以下であれば、扶養している世帯主の所得から定められた金額が控除されます。
配偶者控除は被扶養者の給与収入が103万円未満、配偶者特別控除は給与収入103万円超201万6,000円未満が対象です。扶養している世帯主の合計所得金額が1,000万円以下であることも、条件に含まれます。なお、収入が『給与所得』以外の場合は控除の基準となる金額が異なるため、勤務先の雇用形態を確認しましょう。
■扶養控除・勤労学生控除
パート・アルバイトであっても、『扶養控除』や『勤労学生控除』は条件を満たしていれば利用できます。該当する場合は、年末調整の際に必要書類を提出しましょう。
パート・アルバイトで働く人が、扶養控除や勤労学生控除を利用するシーンは限定的です。親族を養っている場合に扶養控除を利用すると、税負担を軽減できます。しかし短時間勤務で親族を養うというケースはまれでしょう。フルタイムで働き、年金収入のみの高齢者や子どもを養っているようなケースでは扶養控除を活用できます。
勤労学生控除は、納税義務が発生する学生が利用できる控除です。勤労学生控除を利用すると、27万円の控除が受けられます。学生の場合、納税義務が発生するほど働くと税制上の扶養から外れてしまうため、親の扶養に入っておきたい場合は、税金がかからない程度に働く方が有利です。
構成/編集部