豚骨ラーメンが日本を代表する料理となる日が来る?
一風堂は福岡市の大名に1号店を出店した後、新横浜のラーメン博物館で関東初進出。東京1号店は恵比寿店でした。大名、ラーメン博物館、恵比寿といえば、ラーメン好きが集まる場所として知られています。
「TVチャンピオン」で優勝するなどその実力はお墨付きであり、味には絶対的な自信があったのでしょう。ラーメン業界に真っ向勝負を仕掛け、ファンを獲得してやがて上場した実力者が力の源ホールディングスでした。
一風堂も繁華街を中心に出店していました。ブランドの磨き込みが巧みで、サイドメニューやデザートが充実した「ニブンノイップウドウ」をオープンし、女性客などファンの裾野を広げていました。
しかし、コロナで大打撃を受けたのは日高屋と同じです。2021年3月期の売上高は6割以下の水準まで落ち込みました。
※決算短信より
そこから回復軌道を歩みますが、注目したいのは営業利益率の高さ。コロナ前の2020年3月期は2.4%でした。2022年3月期は5.4%、2023年3月期は8.7%。2024年3月期は9%程度まで上がる予想です。
一風堂が注力しているのが海外出店。2023年6月末時点で国内の店舗数は140、海外は135。国内と海外の店舗数はほとんど変わりません。
2024年3月期第1四半期における国内事業の営業利益は7.1%、海外事業は11.4%でした。売上構成比率を見ると、国内は44.0%で海外は46.0%。売上高においても海外が上回っています。
日本人は価格に敏感で、値上げが客数減に跳ね返ることが珍しくありません。アメリカの一風堂は2,000円程度でも集客できていると言われています。海外でブランドを確立し、集客できれば遥かに効率的に稼ぐことができるのです。
また、国内でもメディアの露出やコラボレーションを積極的に行ない、ブランド化戦略を進めており、国内外で「とんこつラーメンといえば一風堂」というイメージを作り出すことに成功しているのではないでしょうか。
日高屋のラーメンセットは国民食となり、一風堂の豚骨ラーメンはスシやテンプラと並んで海外で親しまれる日本食となる日が来るのかもしれません。
取材・文/不破聡