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国民食堂と化す日高屋と外貨獲得を進める一風堂、人気ラーメンチェーンに学ぶ経営戦略

2023.11.08

コロナ禍を経て、存在感を示す企業があります。

ラーメンチェーンの「日高屋」と「一風堂」です。街で見かけることの多い両チェーン店ですが、いつ見ても客足は絶えず、多くのお客さんで賑わっています。二社の業績を見ても好調は明らかなのですが、同じラーメンチェーンという業態でありながら真逆の戦略で黒字化を進めています。

「日高屋」のハイデイ日高と「一風堂」の力の源ホールディングス。両社ともにコロナ前は繁華街への出店を強化していましたが、現在は、都市部からロードサイドへと進出し日本攻略を進める日高屋と、海外で高単価の商品を売り、利益率の高いビジネスへと転換を図る一風堂、それぞれの個性が現われています。

いま人気のラーメンチェーンが支持される理由を経営戦略から探っていきたいと思います。

日高屋が低価格にこだわるのはなぜなのか?

日高屋は2024年2月期上半期の売上高が前年同期間比35.2%増の237億9,600万円で、24億200万円の営業利益(前年同期間は1億9,500万円の営業損失)を計上しました。

日高屋はコロナ禍で一時売上高が7割程度まで縮小しました。2期連続の営業赤字を出しますが、2023年2月期に通期黒字化を果たします。

決算短信より

2024年2月期は売上予想を470億円としています。コロナ前の2020年2月期を11.4%も上回るもの。日高屋はもともと通期の売上高を440億円と予想していましたが、2023年8月21日に上方修正を発表しました。力強く回復する様子が伝わってきます。

日高屋と言えば、出店戦略に特徴があることはよく知られています。マクドナルドや吉野家の近隣に出店するというものです。特に関東エリアの繁華街に集中して出店しています。

日高屋は「中華そば」を390円、ラーメンとチャーハン、餃子がセットになった「ラ餃チャセット」を650円と低価格で提供しています。

価格面において、餃子の王将のような中華料理チェーンとは大きく乖離しています。同業態を競合とする意識が低いのです。

日高屋は別業態で客単価が近いブランドを競合と捉え、「今日は吉野家が混んでいるから日高屋にするか」「マクドナルドは昨日も食べたから日高屋にしよう」などという消費者心理を利用していました。この戦略はコバンザメなどと揶揄されることもありましたが、日高屋はそれを半ば意図的に行っていたと言われています。

関東から全国へ出店エリアを拡大

駅前の繁華街立地は家賃が高額である一方、人通りが激しいために一店舗当たりの回転率が高く、客単価が低くても客数で利益を出せるという特徴がありました。しかし、それはコロナでがらりと様変わりします。

下のグラフは内閣府のビッグデータチームが解放しているV-RESASというツールを用いて東京都全体の滞在人口を割り出したもの。縦軸の0%は2019年の水準を表しています。

グラフのオレンジは都道府県内、赤は都道府県外の人です。瞬間的に2019年の水準を超えることがあるものの、多くの月で下回っているのが分かります。

V-RESASより

つまり、2023年後半に入っても、東京都は都内外の人の移動が2019年の水準を完全に回復していないのです。

客単価が低い店舗を展開する場合、回転率が落ちると利益を出すことができなくなります。日高屋はこれまでの戦略が通用しなくなりつつあるのです。

そこで、戦略の転換を図りました。乗降客数が少ない駅前やロードサイドへの出店も行うようになったのです。2024年2月期は新規出店11店舗のうち、4店舗はロードサイド型となる予定です。

エリアも拡大します。日高屋のセントラルキッチンがある行田工場の隣接エリアである、山梨県、静岡県、長野県、新潟県、福島県などへの出店を拡大するのです。

コロナ禍以降、リモートワークが進んだことで、都市部集中型のライフスタイルが崩れました。日高屋は出店エリアを拡大し、国民的な食の受け皿になるべく変貌を遂げようとしているのです。

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