5つのサービスが本格始動!メタバースプラットフォーム「αU」から新たなクリエイターエコノミーは生まれるか?
2023.11.07■連載/阿部純子のトレンド探検隊
コンテンツは個人が作る「UGC時代」に対応したメタバースを模索
KDDIは今年3月にメタバース・Web3サービスプラットフォーム「αU」を設立。リアルとバーチャルがつながり、いつでもどこでも音楽ライブやアート鑑賞、ショッピングなどが楽しめる空間を目指し、3月にNFTマーケットプレイス「αU market」、オープンメタバース「αU metaverse」、次世代ウォレット「αU wallet」の3サービスをリリース。10月からはバーチャル店舗「αU place」と音楽ライブ「αU live」を開始し、5つのサービスで本格始動した。
「メタバースのイベント利用は定着してきましたが、平常時にはガラガラということもあり、圧倒的なコンテンツ不足が課題です。YouTubeやTikTokはコンテンツが賑わっているからこそ使われていますが、コンテンツはユーザーが作り出すコンテンツ=User Generated Contents(UGC)が中心です。
一方メタバースは、コンテンツ投稿のユースケースが未確立であること、スマホ一つでアップできるYouTube動画とは違い、メタバースの3D空間を制作するには高度なスキルが必要なことが、UGCのネックになっています。
Web1からWeb3までのトレンドを見ると、プロコンテンツからUGCへの流れが顕著で、コンテンツは個人が作る時代となり、それゆえにコンテンツが爆発して盛り上がると思っています。3Dにもこのトレンドはつながると思い、ここに私たちはαUがあると考えています。
最近、メタバースor生成AIのどちらがトレンドか?という話題も聞きますが、私はorではなくてandだと思います。ツールの使い方が難しくスキルがないと3Dコンテンツ作れない課題についても、生成AIの登場によって劇的に変わるのではという感覚があります。
クリエイターエコノミーは、αUの一丁目一番地。我々がメタバースのプラットフォームを作り、Web3に取り組むのは、才能のある個人が活躍する場を作り、さらに世界で活躍できるような応援をしたいという想いからです」(KDDI 事業創造本部 副本部長 中馬和彦氏)
〇360度自由視点音楽ライブが楽しめる「αU live」
Googleクラウドが提供するクラウドレンダリング(映像処理の仕組み)を使うことで、高品質な3Dライブ体験が、端末を選ばず手持ちのスマートフォンで気軽に楽しめる。
スマートフォンの画像をなぞるだけで、最大360度の好きな角度や距離から好みの視点で視聴することが可能。上下左右に指を動かすと視点が変更し、ピンチイン/アウトでズーム調整も操作もできるので、真正面から見たり、近くで表情を楽しむこともできる。
料金は公演ごとに視聴チケットを販売。詳細は「αU live」サイトを参照。コンテンツの一部が視聴できる公式YouTubeチャンネルも同時オープン。
〇実店舗を空間再現したバーチャル店舗「αU place」
実店舗を空間再現したバーチャル店舗でショッピングができる「αU place」は、実店舗を忠実に再現した空間で、実際に店内を歩いているような感覚でショッピングが楽しめる新たなEC体験を提供する。
実店舗の良さとネットの良さを融合しているのが特長で、気になる商品を見つけてタップすると、商品の詳細が表示され、そのままオンラインストアで商品を購入することができる。
また、店舗内の再現だけでなく、オフラインの強みである店員とのやり取りも、実店舗の店員によるオンライン接客で可能になっている。
店舗再現が手軽にできることも店舗側には大きなメリット。スタッフが店内をスマートフォンでスキャンするだけで簡単に生成できるため、高頻度で最新の状態にアップデートできる。リアル店舗とバーチャル店舗の比較映像を見ると、再現性の高さがわかる。
様々なジャンルの6店舗のパートナーからスタート、順次オープン予定。出店店舗の募集も開始している。
「無印良品 銀座は当社の世界基幹店であり、リアルの店舗は9 月にリニューアルオープンしました。αUプレイスに出店した理由は、若年層のお客様や無印良品 銀座を知らないお客様にも、忠実に再現されたバーチャル店舗で買い物体験をすることで、リアル店舗に来店していただきたいと考えたからです」(良品計画 執行役員 営業本部 オープンコミュニケーション部 管掌 永原拓生氏)
〇先行スタートした3サービスのアップデート
オープンメタバース「αU metaverse」のアップデートでは、ライブ配信機能の一般開放と、本格カラオケ機能をリリース。
従来はプロの配信者向けにサービスを限定していたが、配信機能を開放してだれでも配信者となってライブ配信ができるようになった。より多様な配信者が生まれることで、そこに集まるユーザーの裾野も飛躍的に広がり、さらなる出会いやコミュニケーションが生まれることが期待される。
JOYSOUNDのプロデュースにより本格的なカラオケ機能を追加。場所を問わずスマートフォン1台あればアバターで参加でき、遠く離れた友人でもメタバース内に設置されたカラオケルームで、JOYSOUNDの人気楽曲100曲が無料で楽しめる。
普段利用しているカラオケのように、キーやテンポの調整も可能で、採点機能の搭載により、参加者同士でスコアを競い合うこともできる。
カラオケ機能は「αU metaverse」アプリから無料で利用可能。渋谷センター街エリアの店舗入り口から「カラオケボックスαU」店内に入ると、リアルのカラオケボックスのような空間が出現。受付では、カラオケルームの空き状況の確認や、大小さまざまなカラオケルームから自分の好きな部屋を選択できる。
「αU market」/「αU wallet」は、延べ1万点を超えるNFTを提供し、企業や個人、クリエイターとファンとの新たな接点として、NFTに馴染みのない音楽やファッション、飲食、スポーツなど多くの人々とコラボレーションを展開している。
パレットチェーン、Oasysチェーンに加え、Astar zkEVMの提供についても基本合意し、主要国産チェーン3種に対応していくという。
「ハッシュパレットは日本初となるファーミング系ブロックチェーンゲーム『THE LAND』を今年の11月にリリースする予定です。ソルバンドトークン(SBT)を活用した高いソーシャル性と、NFTによる農作物の流通、これが融合した農園系ゲームになっています。ハイクオリティな3DゲームアプリとGame Fiがどんな化学反応を起こすのか、とても楽しみにしています」(HashPort 代表取締役CEO 吉田世博氏)