■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、マネックス証券を子会社化したドコモの戦略について会議します。
キャリアの戦いの主戦場はいよいよ金融に
房野氏:ドコモがマネックス証券と資本業務提携契約を締結しました。株式の保有率は49%ですが、取締役の過半数を指名する権利をドコモが有することなどからマネックス証券はドコモの連結子会社となります。新会社のドコモマネックスホールディングスが営業を開始するのは2024年1月4日予定となっています。
石川氏:ドコモって、ドコモ口座不正利用問題の影響があって、金融から結構距離を置いていたんですが、そこが一気に変わってきたかなっていう感じがします。ついにそっちに行くか、みたいな。マネックス証券としても、楽天証券やSBI証券が手数料無料をやってきたので、そこに対抗する何かが欲しかったのかなと。通信事業者もいよいよ金融での戦いになってきたというか、2024年に新NISAが始まることで、金融と通信の融合での勝負になっていく感じだと思います。
石野氏:具体的なことは、それ以上あまりない。
法林氏:何も出ていないからね。
石川氏:ただ、ドコモはもっと早く動けよって思った。新NISAは来年から始まっちゃいますからね。みんながみんな一斉に新NISAを始めるわけではないので、時間的な余裕はあるでしょうけど、とはいえ他社はきっとガンガン、プロモーションしてくるだろうから。マネックス証券でやっているから大丈夫だとは言っていけど、もうちょっと早く動いても良かったんじゃないかなと思いました。
石野氏:相手があることだから、なかなかね。急ごうと思っても急げないところがあるって感じですかね。
石川氏:あと、やっぱり本丸は銀行だと思うので、銀行をどうするのかは気になる。作れるのかなぁ。
石野氏:ようやく証券が加わったという感じ。足りないピースはまだまだありますよね。
法林氏:ドコモにとっては、あれで良かったと思うんですけど、証券会社的には、SBIと楽天が約1000万ずつ口座を持っている状況で、あとは200万程度しかない。その中で誰がどれを連れていくの? っていう話になっている。
マネックス証券は、創業者の松本氏が会長になって清明氏に社長の座を渡したあたりで、基本的に松本氏はセミリタイアというか、会社はこれで続いてくれるでしょうって考えているのかなって気がする。ドコモという、ちょうどいい相手が見つかったと。マネックス証券と言えば、2006年のライブドア・ショックを覚えていますか? ライブドアが東京地検特捜部の強制捜査を受け、株価が暴落した話として知られていますが、実はマネックス証券がライブドア株の扱い(信用評価)を急に変更して、暴落を加速させたという指摘もあって、今でも快くなく思っている人もいるとか。マネックス証券はネット証券の先駆者というか、老舗なんで、ベテランユーザーも多いんだけど、今はSBI証券と楽天証券が取引手数料ゼロ円を始めて、流れが変わりつつある。もしかすると、そっちにお客さんを取られてしまうかもしれないけど、ドコモというパートナーと組むことで、新しい顧客も獲得しつつ、既存ユーザーの流出も抑えられるなんていう目論見がありそう。
石川氏:ドコモとマネックスの話で可能性を感じたのは、ドコモのdカード GOLDの発行枚数が1000万を超えていること。クレジットカードからの積立NISAが、たぶん効いてくるだろうなと。しかもドコモユーザーって、なんだかんだいってお金に余裕のある人だろうから、そこの組み合わせは非常に相性が良いんじゃないかっていう気がする。
房野氏:カードからの積立ってそんなに注力領域なんですね。
法林氏:各社、そこなんですよ。給料の口座から落とそうが、カードの口座から落とそうが、自分の持ってるお金から払う(引き落とされる)ことには変わりはないんだけど、クレジットカード事業を持つキャリアから見ると、決済額が増えることになるし、ユーザー的にはポイントが付与されるので、喜ばれる。ポイントを付与する分と手数料の値段で掛け合わせてバランスが取れるところを狙っていく。だからみんな付与されるポイントの上限が決まっている。その範囲内でやれば、決済額が上がるのでキャリアにとっては嬉しい話だと思います。
石川氏:結果として、ユーザーも解約しないので、囲い込みがすごい効いてくるんじゃないかと思います。