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キャリアの主戦場は金融へ、マネックス証券を子会社化して金融事業に参入するドコモに勝算はあるのか?

2023.11.03

銀行と証券会社のポジショニングが変わる?

房野氏:電子マネーで給与が入ることもできるようになっているじゃないですか。その辺りを見越してってことはあるでしょうか。

石川氏:いやぁ……電子マネーで給料はもらいたくないでしょう。

法林氏:企業側の都合で出しちゃう場合もある。小学館の原稿料が電子マネーになる可能性もゼロではないでしょ(笑)

石野氏:電子マネーでも、一応、銀行に現金としてキャッシュアウトできなければならないという条件がある。例えばPayPayでもらっても銀行に出せるので、そんなに奇抜な話でもないような気がする。決済事業者からしてみれば、自分たちが銀行のように一時的にお金を預かることができて、おいしいチャンスを狙っていけるってところじゃないですか。

石川氏:今、PayPayは割り勘とかの個人間送金が便利だし、全銀ネットの障害もあったし、長年動いたネットワークが限界を迎えている感じ。どこかで手を入れないといけないけど、常に動いている必要があるのでなかなかできない。新しい送金の仕組みが、これから増えていく可能性を感じました。

房野氏:語弊があるかもしれませんが、銀行が不要になってきていますね。

石川氏:既存の銀行はいらなくなってきて、決済サービスを持っているグループの銀行口座があるといい感じがするし、個人のお金のやり取りもしやすくなってくる。しかも、会社を作る時ってそういう銀行の方が柔軟に対応してくれる。銀行に対する価値観も変わってくる感じがします。

房野氏:証券会社としては、生き残りの策としてキャリアにくっ付きたいっていう思惑が強そうですね。

法林氏:かなり強いです。マネックスの件では、ドコモが傘下に収めると言っているけど、マネックス側としては「ドコモさんに収めてほしい」っていう気持ちが実は相当あると思う。

房野氏:ドコモ陣営に着いて口座が数千万も増えたらウハウハですよね。ドコモにも旨みはあるけれど、証券会社側の旨みも強いんですね。

法林氏:マネックス証券ができた2000年代頭くらい、オンライン証券会社が拡がり始めた時代と今とでは、そもそもの話としてプラットフォームが違う。昔はWindowsでありMacであったものが、今はスマホ。スマホの環境が整っていることを考えると、キャリアの方が有利。

もう1つ、さっきのカード積立でいうと、年間のカード決済額の平均値は幅広く取って50万円くらいなんだそうです。今までの銀行系や信販会社系のクレジットカードはポイントが付くから使っている人が多かったし、銀行だから安心だろうということで持っている人も多かったけど、たぶん、ここの取り合いになっていくと思う。ユーザーをどうやって剥がして、自社のカードに持ってくるかを考えると、「うちのカードでNISAの積立をしてくれれば、ポイントをたくさん付けますよ。普通の買い物でも付きますよ」って言うだろうし、ユーザーがそっちに流れていく可能性は高い。キャリア+銀行+証券の組み合わせは結構便利になっているので、クレカを含めると、かなり強みになる。

房野氏:キャリアにとってのメリットとして、集めたお金を担保にしたりってことはありますか?

法林氏:それはないんじゃないかな。一応、今回の提携では別会社になるので。

石川氏:結局、囲い込みがめっちゃ効くことだと思います。新NISAの口座って、1度作ったらほかの証券会社に変えるのは結構大変。確か年間で限られた期間に申し込まないといけないとか、貯めた資産を移すのをどうするのかって問題もある。一度作ったら、その会社にロックインされちゃうんじゃないかなと。でも、だったらなぜ、楽天モバイルは楽天証券を活かせないんだろうと思うわけです。

法林氏:縦割りだから。楽天はもっと早くから楽天証券と楽天モバイルの連携にインセンティブを付ければ良かった。どちらかというと、世の中の注目は楽天市場との連携に向いていたので、いや、そこじゃないから、と思っていた。最終的にはクレジットカードと金融と銀行。楽天はモバイルだけ持っていなかったけど、持ってみたものの……という感じ。

房野氏:一度経済圏に入ってグルグル回っちゃえば、二度と出られない……

法林氏:お金の回り方としては非常に正しい。あともう1つ、銀行と証券の関係性がちょっと変わるかなと僕は思っている。マネー系のライターさんが書いていて、そうだよねと思ったのがお金の移動の話。通常、僕のみずほ銀行の口座からAさんの三菱UFJの口座にお金を振り込もうとすると手数料がかかるんだけど、証券会社経由にすると、意外に何とでもなる。例えば、いずれも本人名義に限られるけど、僕が持ってるB証券の口座に、三菱UFJ銀行から入金するのも楽天銀行から入金するのもみずほ銀行から入金するのも、僕が手数料を負担することはない。証券会社の預かり金にすれば、自分のメイン銀行に出金して振り込むことができる。

証券会社の残高と入出金のシステムをうまく使うと、銀行はどうしてもその銀行から振り込んだり、支払ったりするような、特定の用途でしか使わなくなっていく。証券会社の残高にお金がある方が、うまくすれば増えるし得じゃないかって気がする。僕はそこが面白いと思っている。もしかしたらドコモがそこまで予想して、銀行じゃなくて証券会社を優先して取り組んだのだとしたら、結構すごいと思う。

石野氏:まぁ、銀行は単に時間がかかるとか……

法林氏:言うほどドコモ口座の失敗に対する呪縛はないと思っているけど、おそらく銀行とは組めないんだと思います。

石野氏:銀行を買うとなったら大事じゃないですか。

法林氏:作る、もしくは買うのも相当難しいと思う。お金はあるかもしれないけど。

石野氏:今から銀行を作るのは、ちょっと厳しいですよね、さすがにもう、そういう時代じゃない感じがしますよね。

法林氏:さっきも説明したように、今後、銀行のポジションが結構、微妙になってくると思う。何のために銀行があるのかっていうところもあって、大して手数料がかからない口座が1つあればいいか、くらいの世界でしかない。証券会社の方がつぶしが利く。

石川氏:ドコモが銀行を作ったとしても、dアカウントでロック解除するのがすごく大変になるような気がする(笑)

石野氏:スマホ認証が必要で、認証が外れてるから、iPhoneを出して一度こっちで設定して、戻して、やっとPCからログインできる、みたいな感じで(笑)。サービスを増やすんだったら、そこをまず抜本的に直してほしいですよね。

……続く!

次回は、アップルの新製品について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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