Pixel 8シリーズの値上げでほかのAndroidスマートフォンメーカーに勝機はある?
石野氏:今回のPixel 8に関しては、価格が上がったのが気になります。Pixel 7aくらいまでは、1ドル110円あたりの為替レートをキープしていたのが、一気に通常のレート(150円弱が目安)になってしまいました。
石川氏:Googleをもってしても。
石野氏:為替の動きには勝てなかった。
法林氏:為替レートの変動は、端末価格に多大な影響をおよぼす。
房野氏:そういう意味では、国内メーカーにとって、失地挽回の可能性はありますよね。
石野氏:そうですね。それでいうと、Pixelが値上がりしたことで、「Xperia 5 V」や「Zenfone 10」といったスマートフォンは、Pixel 8とほぼ変わらない価格になっています。同じ土俵で戦える可能性がでてきた。
法林氏:「オンライン購入なら、5万円をポイントバックします」とか、Googleが言わない限りはね。
房野氏:Pixel 8の価格設定が、iPhone 15へと近づく中、低価格ラインのAndroidスマートフォンの競争が激化することは考えられますか?
法林氏:難しいのは、今や売れ筋モデルが、価格が上位のモデルと下位のモデに二分化していることかな。具体的には、15万円以上のモデルか、5万円以下のモデルに、売れ筋が限られている。10万円くらいの中位モデルは、なかなか商売がしにくくなっています。
房野氏:Pixelに話を戻すと、アップデートに7年間対応するというのも話題になっています。
石川氏:衝撃的ですよね。なんでそうなったのか。
石野氏:一説だと、カリフォルニアの法律で、7年間の部品交換対応を義務付けているので、それに合わせているとか。Pixel 8でいうと、7年前のモデルって、初代Pixelですからね。
石川氏:アップデート対応についても、ほかのAndroidスマートフォンメーカーが追いつけない部分だよね。
法林氏:ただ、7年間アップデート対応するといっても、その7年にどういう意味があるのかを冷静に考えないといけない。サポートが長いのは安心できる要素だけど、7年間同じスマートフォンを使えるのかという話です。
石川氏:でも、Androidスマートフォンのリセールバリューを上げるという意味では、プラスに働く。iPhoneのリセールバリューが高いのは、サポートが長いという理由もありますからね。そうなると、7年間サポートできない、ほかのAndroidスマートフォンは、リセールバリューが低いという、負い目にもなってしまいます。
石野氏:AQUOSは結構頑張っていて、AQUOS senseで3年間対応する。
法林氏:まあ、国内でアップデートの対応年数を最初にアピールし始めたのは、シャープだからね。
石野氏:一方で、ソニーはちょっと、もたついている。OPPOはグローバル市場ではアップデート年数の長さをアピールしているけれど、日本ではあまりサポート年数を言わない。Pixelの7年間という数字に、どれだけ意味があるのかはわからないけれど、サムスンは5年間で4世代分のアップデートを保証している。そのうち、アップデート期間を明言しないと、ユーザーが敬遠する原因になりかねません。
石川氏:チップセット性能の進化が小幅になってきているので、長くサポートできるとも言えるんですが……。
石野氏:ユーザーがスマートフォンを使う期間は、平均で4.4年くらい。そう考えると、サムスンのサポート期間って、実はギリギリなんですよ。もちろん、7年間あれば安心。どこかのメーカーが、サポート期間の延長を牽引してくれないと、全体的に伸びないから、Googleの判断は、いいことだったかな。
房野氏:iOS 16が配信される際に、iPhone 7が非対応となったのは、ニューラルエンジンが搭載されていないから、そんな説がありましたが、今後、AIの処理性能が追いつかないので、サポートを終了する端末が出る可能性はありますか。
石野氏:大いに考えられます。OSをアップデートしても、古い端末の場合は、一部の機能が使えないといったことも、起きるのではないでしょうか。
石川氏:チップの性能が足りない場合、処理をクラウド上に移す可能性はあります。
石野氏:そういった違いが、端末によって生まれるでしょうね。
……続く!
次回は、ドコモの通信品質について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦