一杯のコーヒーに、どれだけ多くの人が助けられていることか。仕事の合間に飲むコーヒーがなかったら、職場はもっと殺伐としているだろう。私たちの生活に深く根付いたコーヒーが、今、危機にさらされているという。
世界規模の気候変動によって、コーヒーの原料となるアラビカ種の栽培に適した農作地が減少している。2050年には半分にまで減ると予想する経済学者もいて、「コーヒーの2050年問題」とも言われているのだ。
いつも何気なく飲んでいるコーヒーに潜んだ問題や課題を知れば、一杯のコーヒーはもっと味わい深くなるはず。今回は第15代ワールド・バリスタ・チャンピオンであり、株式会社QAHWA代表取締役社長の井崎英典さんに、ビジネスパーソンのための「教養としてのコーヒー」について教えてもらおう。
なぜビジネスエリートにコーヒーは欠かせないのか
今回、コーヒーについて教えてくれる井崎さんはアジア人で初の世界チャンピオンとなったバリスタである。また、日本マクドナルドはじめ国内外のコーヒー関連ビジネスに参加してきた、コーヒーのプロフェッショナルだ。現在は、自ら会社を立ち上げ、企業やバリスタたちの活動を支援するコーヒー関連のコンサルティング業務にあたっている。
年間200日を海外で過ごし、多くのビジネスパーソンと接するなかで、井崎さんが気づいたのが、ビジネスの教養としてのコーヒーだと言う。
「コーヒーは、現代の必須教養です」と言う井崎さん。特に、コーヒービジネスには、日本人が苦手な事業戦略が見える、と言う。そして、コーヒーに関する知識は、ビジネスシーンで必ず役に立つと訴えている。
「コーヒー文化は世界共通の話題であり、コーヒーの歴史は現代にいたる国際関係につながっています。そして、コーヒーの嗜みには海外が絶賛する禅の精神が潜んでいるのです。だからこそ、コーヒーをひとつの教養課題として捉え、コーヒーに関する正しい知識を知って欲しい」と、このほど「世界のビジネスエリートは知っている教養としてのコーヒー」(SBクリエイティブ発刊、定価1600円+税)を発刊した。
コーヒーに関する歴史や文化を紹介しただけでなく、巻末では、コーヒー初心者のための淹れ方・選び方も解説している。あらゆる角度からコーヒー関連のエピソードが語られていて、楽しく読める。「コーヒーがなければバッハは作曲できなかったかもしれない」、「『銀ブラ』は『銀座でブラジルコーヒー』が由来」など、カフェや酒場で盛り上がりそうな話題がたくさん盛り込まれている。読めば必ず誰かに話したくなるだろう。
この本でも紹介されていた、コーヒーの「2050年問題」については、考えさせられる課題だった。