事業主は労働時間を1分単位で集計した上で、それに対応する賃金を労働者に支払わなければなりません。
残業代や残業時間の切り捨てが行われている場合は、未払賃金が発生している可能性がありますので、労働基準監督署や弁護士にアドバイスを求めましょう。
本記事では、残業代や残業時間の切り捨てをはじめとして、残業代の取り扱いに関してよくある違法事例などをまとめました。
1. 残業代は1分単位で計算する必要がある
事業主が労働者に支払う賃金は、原則として労働時間を1分単位で集計した上で支払わなければなりません。残業代についても同様です。
1-1. 残業代・残業時間の切り捨ては原則違法
残業代を計算する際に、残業代の金額や残業時間の一部を切り捨てることは、原則として労働基準法違反に当たります(切り上げは可)。
特によく見られるのは、残業時間を毎日15分単位や30分単位などで集計し、それに満たない残業時間を切り捨てているケースです。
(例)
月曜:1時間10分→1時間(10分切り捨て)
火曜:1時間13分→1時間(13分切り捨て)
水曜:59分→45分(14分切り捨て)
木曜:38分→30分(8分切り捨て)
金曜:1時間25分→1時間15分(10分切り捨て)
計:55分切り捨て
上記のようなケースでは、切り捨てられた残業時間について支払われていない賃金が未払いとなります。
1-2. 例外的に残業代・残業時間の切り捨てが認められるケース
残業時間の集計や残業代の支払いを簡便化するため、以下の場合には例外的に、残業代・残業時間の切り捨てが認められています(昭和63年3月14日基発第150号)。
(1)1時間単位で1円単位の端数を四捨五入する場合
残業代を計算する際の時給に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることができます。
(例)時間外労働1時間当たりの残業代が2435.4円の労働者に対して、1時間当たり2435円の残業代を支払う(=0.4円を切り捨てる)ことは可能
(2)1か月単位で、1時間未満の端数を丸める場合
時間外労働・休日労働・深夜労働を1か月ごとに集計した際、それぞれの合計に1時間未満の端数が生じた場合は、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることができます。
(例)1か月間に25時間25分の時間外労働をした労働者に対して、25時間分の残業代を支払う(=25分を切り捨てる)ことは可能