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米国政府は救済すべきだったのか?史上最大の倒産「リーマンショック」を振り返る

2023.10.28

米国政府がリーマン・ブラザーズを救済すべきだったのか?

リーマン・ブラザーズが破産した当時、仮に米国政府が救済していれば金融危機は起きなかったのでは?という意見があります。

しかし、サブプライムローン問題は1社の経営不振が原因ではないため、リーマン・ブラザーズを救済して、一時的な金融危機を回避しても、根本的な解決には繋がりません。

また日本のバブル景気のように、渦中にいるとバブルであることに多くの人々は気付かなかったといいますが、リーマンショックの引き金となったサブプライムローンがバブルであったことは、実は随分前から指摘されています。

実際、2004年~2006年辺りに出版された金融の書籍では、米国の住宅バブルに警戒する意見が多くありました。冷静に考えれば、当時の米国の住宅価格はたった5年間で50%も値上がりしており、これはバブルであることに疑いはないでしょう。

ところが、この問題に米国が対処しなかったがために、結果的にリーマンショックが発生したと考えられるのでしょう。

マネーゲームが加速した要因は法律にある

なぜ、サブプライムローンのようなマネーゲームが、米国で展開されることになったのかというと、きっかけは1999年に米国の「グラス・スティーガル法」が事実上、骨抜きにされたからです。

そもそも「グラス・スティーガル法」とは、1929年にはじまった世界恐慌を教訓に、1933年に制定された法律です。この法律の趣旨は銀行が銀行業務と証券業務を兼ねてはならないというものです。いいかえれば、銀行は証券会社になれず、証券会社も銀行にはなれないというルールです。なぜならA社の証券を銀行が扱っていた場合、A社から銀行融資を依頼されると断れないからです。仮にA社の経営状態が悪いにも関わらず無理に融資をすれば、銀行が倒産するリスクが高まります。

実際、1929年の世界恐慌が発生した当時、証券業務を兼任していた銀行が相次いで倒産しました。

こうした事態を防ぐために「グラス・スティーガル法」があり、この法律によって米国の金融業界は大きく変わっていきます。たとえばJPモルガンは商業銀行としてJPモルガン、投資銀行としてモルガン・スタンレーに分割されました。そしてリーマン・ブラザーズの前身にあたるクーン・ローブ商会は、商業銀行業務を廃止しています。

こうして「グラス・スティーガル法」は米国の金融業界における絶対的なルールとなり、日本や世界各国の金融ルールとして広がっていきました。

ところが1999年に「グラム・リーチ・ブライリー法」という法律が制定され、「グラス・スティーガル法」が事実上、骨抜きにされました。

新たな法律は米国の最大手の銀行が望んでいたものともいわれ、これにより銀行が証券業務も兼任できるようになり、マネーゲームが加速し、リーマンショックへと波及していくキッカケになったのです。

おわりに

1999年に新しく制定された「グラム・リーチ・ブライリー法」が求められた背景には、ソ連の崩壊が影響を与えているという指摘もあります。

ソ連や共産主義が一定の勢力を持っていた時代においては、資本主義を採用している西側諸国自身、資本主義の暴走が起きないように配慮していたからです。

実際、西側陣営は資本主義でありながら、貧富の差が拡大しないような配慮を続けていました。

ところが、ソ連の崩壊により西側陣営の資本主義に対する自重が薄れていきます。

その結果、1990年代後半から2000年代にかけて、世界中で投資ブームがやってきます。

つまり、リーマンショックとは世界経済の流れのなかで、起こるべくして起きたといえるのです。現代を生きる私たちにとって、最も教訓とすべき金融の歴史的な出来事として、リーマンショックがあるといえるのではないでしょうか。

今回の金融経済アルキ帖は「米国史上最大の倒産リーマンショック」について解説させて頂きました。

次回もどうぞよろしくお願い致します!

文/鈴木林太郎

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