ネット接続不要!AIがパスワードを発行するオフィス向けスマートロック
企業のオフィスなど、施設へのスマートロックの導入も進んでいる。
セキュリティ機器を販売するマザーセキュリティ株式会社の「Smart DUAL Lock」や「Smart IC Lock」などのスマートロックシリーズは、その一つだ。
「Smart DUAL Lock」(右)と「Smart IC Lock」
ICカードによって解錠を行える仕組みだが、認証不要で誰でも入室可能な常時解錠モードや登録したICだけが入室可能な認証モード、管理者だけが入室可能な常時施錠モードの3つのモードを曜日と時間で簡単にコントロールできるタイムコントロール機能も備わる。すでにオフィス、研究所、大学、レンタルスペース、ホテルなどに導入されている。
代表取締役の蓑島浩氏によれば、シリーズ最大の特徴は、ネットにつながず入退室管理ができる点にあるという。
「Smart IC Lock」のmicroSDスロットイメージ
「世界で唯一、microSDスロットを搭載しているスマートロックで、タイムコントロール機能の内容や誰がいつ解錠したのかなどの解錠履歴データを、スロットに挿入したmicroSDカードを使って、登録や抽出することが可能です。機器に搭載されている機能なので、ネット環境が不要で、ランニングコストもかかりません」
また取り付け方法も特殊だ。
「近年、普及しているテープ接着タイプとは異なり、扉に確実に固定し、落下の心配のない特許取得の設置工法を採用。扉加工もなく、原状回復ができるため賃貸物件でもご使用いただけます」
鍵穴を残してあるため、万が一のときは既存の物理キーを使って解錠することができる。
●AIテクノロジーでパスワードを自動発行する「Smart DUAL Lock」
「Smart DUAL Lock」は、ICカードとパスワードの2種類の解錠方法を併用することもできる、高セキュリティを実現できる製品だ。加えて、AIが使われている点も特徴だという。
「遠隔地からクラウド環境を利用することなく、PC上の専用ソフトで発行した、一時的に有効なパスワードを『鍵』としてシェアできる仕組みになっていますが、パスワードは独自のAIテクノロジーで2100年まで4種類を発行できるようにしています。メールや電話などでパスワードを伝えれば、以前のような物理キーやICカードの受け渡しがなくなります。各施設への導入により、キーレス、非対面、省人化を実現しています」
●近年の需要傾向
最近、企業の防犯に関する需要はどのような傾向があるのだろうか。
「コロナ禍を経て、リモートワークが普及しました。働き方の多様化により従業員の出社がまばらになり、オフィスのデザイン変更や移転を機にスマートロックを設置する企業が増えている印象です。鍵の受け渡しをすることなく、オートロックで従業員が安心して働くことができる環境を整える防犯意識が強くなっているとも感じます。
また個人情報保護法の施行により、個人情報を取り扱う場所でのスマートロックの設置が有効な取り組みと考えられています。弊社製品であれば、部外者の不法侵入よる情報漏洩を防止するだけでなく、部屋ごとにセキュリティを強化することもできます。さらに入退室管理を行うことで内部の不正なども防ぐことができます」
特に、防犯目的で企業から需要が多いというのが、更衣室への設置だという。
「今やエントランスや出入口のセキュリティ対策は当たり前になっていますが、建物の中にある個人情報や貴重品を守ることに関してはまだまだ手薄です。現在、更衣室に対するセキュリティのお問い合わせが増えています。防犯カメラを設置すれば簡単に犯人は特定できますが、プライバシーの侵害に当たるため、設置は困難です。しかしスマートロックを設置しますと常に施錠状態で、ICカード所有者のみの入室になるため、室内の安全が保たれることになります。設置しているだけで抑止力にもなります。万が一、盗難等のトラブルが起こったときは、入退室履歴がmicroSDカードによって簡単に確認でき、かつ工事不要、即日から運用できることに好評をいただいています」
スマートロックは、もはや「スマホで開けられ、キーレスで便利」といった技術に感動しているフェーズは過ぎたように思える。より手間がなくなり、防犯を強化するための技術が垣間見られた。今後の進化にも期待したい。
【取材協力】
Qrio株式会社
マザーセキュリティ株式会社
文/石原亜香利