今年9月初旬、残暑とは名ばかりの猛暑真っ只中に、突然オープンした麻婆豆腐専門店。
場所は東京・新宿。店名は『極麻辣麻婆豆腐飯店』。
高級感漂う店内で味わえるのは、麻婆豆腐定食1種類のみ。しかもそれがワンコイン500円という破格の値段。
バイアスなしにそのおいしさを楽しんでほしい
ゴージャスすぎる内装と値段とのギャップ。開店直後からベールに包まれていたこの店舗はSNSなどで話題になったのだが…実はこれ、味の素株式会社の中華合わせ調味料「Cook Do®」シリーズの新商品「Cook Do®」<極(プレミアム)麻辣麻婆豆腐用>を使用したメニューを提供するお店だったのである。
超一流企業にもかかわらず、あえてブランド名を伏せ、しかも自社商品でメニューを作るという前代未聞の取り組み。
一体なぜ味の素(株)は、匿名のまま店舗を構えようと思ったのか?そしてそこには、いかなる意図があるのか?
今回、味の素㈱ 食品事業本部 調味料事業部 メニュー調味料グループの塩谷美咲さんに話を聞いた。
–貴社の麻婆豆腐専門店、オープンの経緯を教えてください
「今年で発売45周年を迎える「Cook Do®」ですが、今回、『高級四川料理の麻婆豆腐のような味わい』を実現する麻婆豆腐の素が完成しました。それは「まるで外食店で食べるような麻婆豆腐の素」だと自負しており、ぜひとも多くの方に実際にお召し上がりいただき体感いただきたいと考えて、9月4日から10日までの1週間限定で店舗を出店するに至りました」
–オープン当初はブランド名非公開でしたが?
「はい。オープン期間の7日間の内、最初の2日間は「ある市販の合わせ調味料が使われている」ことのみを訴求し、敢えてブランド名を出さずにお店を営業いたしました」
「バイアスなしにそのおいしさを楽しんでいただき、その上でネタバラシすることで、実は「Cook Do®」だったという驚きと共に話題が拡散する設計としました。また同時に、「どの合わせ調味料が使われているのだろう?」と生活者に予想をいただくことで、楽しんでいただくことを狙いました」
その狙い通り、世間でも話題になった。SNSでは本格的な逸品と格安の値段に多くのコメントが寄せられ、正体が明かされるやさらに驚きの投稿が急増。Cook Do®の底力を改めて見せつけられた格好だ。
–ブランド名を伏せることのメリットは?
「ブランド名を伏せた最初の2日間、その正体に関して予想いただき、X(旧Twitter)への投稿を促すキャンペーン(投稿いただいた方には杏仁豆腐をプレゼント)を実施いたしました。SNS上のお客様のお声を見ると、楽しみながら答えを考えていただけたのではと感じています」
「また、ブランド名を伏せたこと、バイアスなしに「極麻辣麻婆豆腐」そのもののおいしさを体感いただけたのではと感じています」
ちなみに、店舗のデザインコンセプトは、『おいしさを堪能することに没頭できる空間デザイン』。店内は黒と金を基調とした高級感のあるトーンで統一され、視界に余計な情報が入らず、食べることに没頭できる空間を実現した。これもおいしさを引き立てる大きな要素の一つだ。
そんな新基軸のプロモーションの結果、オープンした7日間で約1,200食を提供。当初の想定を大幅に超え、130%以上の来客数になったという。
ココがすごいよ! <極(プレミアム)麻辣麻婆豆腐用>
どこか、謎解き要素も含まれたような非常に興味深い戦略だが、料理そのものがおろそかではここまで話題にならなかったはず。
それはつまり、最新作の<極(プレミアム)麻辣麻婆豆腐用>が、外食店レベルの本格中華を自宅で再現できる優れた調理料だということに他ならない。既存品のシリーズにないプレミアム品と謳われる、そのおいしさの秘密とは?
「<極(プレミアム)麻辣麻婆豆腐用>は、『Cook Do®』がこれまで培ってきた原料・製法についての知見・技術を結集した商品になります。四川料理の特徴である麻(マー)・辣(ラー) を極め、中華調味料・香辛料等にとことんこだわり絶妙なバランスで配合。麻婆豆腐好きのための麻婆豆腐の素になりました」
「当社の研究開発部門が、“高級四川料理の麻婆豆腐のおいしさを構成する要素”を徹底的に分析し、独自に開発した原料や配合技術で具現化した自信作です」
おいしさのポイントがコチラ!!
(1)2種類の花椒(ホアジャオ)
厚みのある味わいの“赤花椒”とさわやかな香りの“青花椒”の2種類を使用。挽きたての青花椒を用いた花椒油を新たに独自開発して配合しています。
(2)独自開発の辣油
2種類の唐辛子と花椒をじっくり炒めることで、香りを引き立たせました。
(3)コクと深みの中華醬
熟成豆板醤・ラージャン・そら豆味噌等の中華醤を絶妙なバランスでブレンドし、じっくり炒めるとともに、独自開発のトウチを加えることで、一段と豊かなコクと深みを実現しました。
さらに、<極(プレミアム)麻辣麻婆豆腐用>開発担当者の岡本さんは、そのこだわりについてこう語る。
「第一線で活躍する料理人の方は、頻繁に火加減を変えます。そこで、炒める様子をサーモグラフィなどでチェックしながら温度の変化を1秒ごとに記録し、味に影響を与える温度を解析しました。また、炒め鍋を振る回数なども調べ、その知見をソースの製造時に反映しています」
「以前担当した2020年発売の<四川式麻婆豆腐用>では、癖のある原料を使わず、家族みんなで食べやすい味に落とし込んだんですが、今回の最新作は家族みんなで食べられる味に落とし込むことは一切していません。「『Cook Do®』はここまで高級四川料理の味を再現できるんだ」と広く知っていただけるよう、四川料理の特徴である麻・辣を極めています!」
引用:https://www.ajinomoto.co.jp/cookdo/hyakunetsushin/history2/
今回、「Cook Do®」ブランドが仕掛けた匿名店舗は、これまでにはないPR方法にもかかわらずポジティブな反応が得られたという。まさに独自開発したこだわりの原料のごとく、スパイスの効いた広告・宣伝となり広く認知された新たな挑戦。今後も、多くの人を痺れさせるような素敵なサプライズを期待したい。
文/太田ポーシャ