クルマなのにスマートフォンの発表会のよう
さて、日本初上陸した「AFEELA」のプロトタイプ発表会では、「AFEELA 共創プログラム(仮称)」というアイデアも紹介されました。
これは、社外のクリエイターやデベロッパー(開発者)が自由に「AFEELA」で動作するアプリやサービスを開発できるよう、ソニー・ホンダモビリティがその環境を提供するというもの。
例えば、アップルは「Worldwide Developers Conference(WWDC)」というイベントを行い、数多くのデベロッパーが参加し、iPhoneを初めとしたアプリなどの開発の場を提供していますが、同様に、数多くのデベロッパーがソニー・ホンダモビリティと協業し、「AFEELA」をもっと楽しく・便利にするアプリやサービスを開発してくれるのではないか? そんな期待感をもたせてくれるもの。
また、ソニー・ホンダモビリティはアメリカのQualcomm Technologies(クアルコム・テクノロジー)社と協業をしています。
車両の頭脳とも言うべきECUに、最大800兆回もの演算性能を実現する「Snapdragon Digital Chassis」を採用することが、発表されているのです。
スマートフォン関連で目にすることの多いSnapdragonの名を、クルマの発表会で見かけるのが新鮮であり、まるでスマートフォンの発表会のようです。
さらに、「AFEELA」の車両データや走行データなどから開示できる情報を、安全に提供するためのクラウドAPIをソニー・ホンダモビリティが用意。クラウド経由でサーバ間連携なども容易となり、ユーザーのライフスタイルに合わせてエンタテインメントコンテンツや生活に役立つ情報などを提供する予定だそう。
この辺も、クルマというよりはガジェットの発表会で見られるコミュニケーションだなぁ? と思った次第です。
デジタルのソニーとクルマのホンダの協業が象徴するクルマの未来
個人的な話で恐縮ですが、筆者はモノ情報誌の編集者として、クルマやスマートフォンなど様々な最新テクノロジーを取材してきました。また、実生活で1990年代までのクルマの進化を目の当たりにしつつ、日本車がクルマ技術で世界の頂点に立つ……そんな歴史を経験してきました。
そんな中、iPhoneが誕生したことによるデジタル社会の進展に、「いつかクルマはスマートフォンのようになる」と確信していました。
現在、欧州やアメリカが電気自動車の開発を牽引し、日本や中国などのアジア諸国もそれに追随しています。内燃機関を廃することにより、クルマメーカー以外のテクノロジーメーカーが参画・協業しやすくなり、クルマの家電化・ガジェット化がさらに進むと考えています。
ソニー・ホンダモビリティの川西社長は、「ハードウエアやソフトウエアの可能性を充分に感じていただけるようなスペックをご用意しているつもりです。PCの世界でもそうですが、ゲーミングPCなど、高いスペックのモデルに自分の技術を投入したい……ガジェット好きのみなさんには、そんな思いがあるはずで、そういった方の期待に『AFEELA』はなるべく応えていきたい」と会見の中で、説明してくれました。
ソニー・ホンダモビリティ株式会社 代表取締役社長 兼 COO 川西 泉氏
ソニーとホンダが組む「AFEELA」が象徴するように、クルマはデジタルテクノロジーで急速に進化していく……電気自動車には、そんな素晴らしい未来が待っているようです。
「AFEELA」は2025年前半に受注を開始し、同年中に発売がスタート。北米では2026年春からユーザーへのデリバリーが始まる予定となっています。
【参考】AFEELA website
取材・文/中馬幹弘