その3 マッサージ、ツボ刺激は、視力低下防止、目の疲労回復に効果的
――仕事で資料を読み込むと、目が疲れちゃうので、こうしてギューッと揉むと気持がスーッと……。
平松先生 まぶたの上から直接、眼球を揉むのはいけません!眼球に圧をかけていいことは一つもないのです。
視力低下の防止や視力回復に効果的なマッサージやツボ刺激はあるのかというと、今のところ医学的には明確に認められていません。唯一、耳のツボには効果があるかもしれないと言われている程度なのです。
目が疲れた時に、目のあたりを揉む人は多いのですが、眼球に圧をかけるのは絶対に避けてください。
その4 目がかすむのでかすみ目用の目薬を使ってみた
――かすみ目用の目薬で何とかしようと思っていました。
平松先生 一般的に軽視されがちな「かすみ目」ですが、目がかすむという症状には、ものの色や形を捉えるのに重要な中心窩がむくむ「黄斑浮腫」や「黄斑変性」「白内障」など様々な病気が隠れている可能性があります。初期の老眼でも目がかすみます。
市販の目薬には、病気を治療する効果はありません。目の疲れから来る一時的なかすみがスッキリするだけなのです。気休め程度に市販薬を使い、だましだまし、生活を続けるぐらいならば、早めに眼科を受信してください。
その5 ジェネリックの目薬を選んで、医師に報告しない
――医療制度のためにも、積極的にジェネリックを使いたいのですが、先生に報告すべきなのでしょうか?
平松先生 ジェネリックを選ぶ人は多いと思います。ただ、目薬に限っては、注意が必要です。
すでにご承知の通り、新薬とジェネリックでは有効成分に違いはありません。目薬の場合、問題は「有効成分以外の成分」なのです。
目薬に使われる有効成分は0.1パーセント程度です。例えばアレルギー性結膜炎などに処方される「ヒアレイン点眼液0.1パーセント」という目薬がありますが、この0.1パーセントとは「有効成分のヒアレインが0.1パーセント含まれている」ということです。
ではそのほかの99.9パーセントは何かというと「緩衝材」や「防腐剤」など有効成分ではない様々な成分です。
緩衝材は、いってみれば薬のバランサーのようなもので、PHを整えてくれます。防腐剤は薬が腐らないようにするものです。ジェネリック医薬品の要件は「新薬と同じ有効成分を使うこと」ですから、新薬とは違う緩衝材が使われているジェネリック目薬の方が一般的です。
ところが、実は緩衝材の成分によって、0.1パーセントの有効成分の効き方が違う場合があるのです。
ジェネリックの目薬には効き目がない、ということではありません。ただし、有効成分が同じだからといって、効き目が同じであるとは限らないのです。むしろジェネリックの方が効くことさえあります。
眼科医は薬局で患者さんが新薬を使ったのか、ジェネリック医薬品を使ったのか、患者さん自身の申告が無いとわかりません。
目薬を処方した後、望ましい治療効果が上がらなかった場合、医師は別の原因や病気の可能性を考えます。そして、別の診断のもとで治療方針を再検討し、処方内容も変えるでしょう。
しかし、順調に治療効果が上がらなかったのは、別の原因や別の病気のせいではなく、患者さんが新薬ではなく、ジェネリックを使ったからかもしれません。
ジェネリック目薬を使ったことは、ぜひ医師に伝えてください。こうしてカルテに蓄積される記録は、そのまま自分と薬の相性の記録となり、いずれ役立つことでしょう。
――ありがとうございました。
平松先生は新刊書で、「信頼できる眼科医のもとで、目のメンテナンスを怠らず、可能な限り目の健康を保つことが、ひいては人生の質を保つことに繋がっている」と書いている。一生、見える目を手に入れるために、すぐやめるべきことを知っておきたい。
著者・平松 類 先生
眼科医/医学博士
愛知県出身田原市生まれ。二本松眼科病院副院長。受診を希望する人は北海道から沖縄まで全国に及ぶ。専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評でメディアの出演が絶えない。「あさイチ」、「ジョブチューン」、「バイキング」、「林修の今でしょ!講座」、「主治医が見つかる診療所」、「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」、「日本経済新聞」、「毎日新聞」、「週刊文春」、「週刊現代」、「文藝春秋」、「女性セブン」などでコメント・出演・執筆等を行う。Yahoo!ニュースの眼科医としては唯一の公式コメンテーター。YouTubeチャンネル「眼科医平松類」は20万人以上の登録者数で、最新情報を発信中。著書は『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる!ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書』(SBクリエイティブ)、『老眼のウソ』『その白内障手術、待った!』(時事通信出版局)、『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など多数。
文/柿川鮎子