ドコモのネットワーク品質が低下した要因は?
石川氏:ソフトバンクは現社長の宮川さんが元CTOだし、トップがネットワークのことをわかっている人たちなんですよ。また、早い段階から独立して5G基地局を置いていくのではなく、隣り合わせた面展開で5Gエリアを作ってきた。DSS(Dynamic Spectrum Sharing:4Gの周波数の一部を5Gと共用する技術)とかを入れて、4Gの周波数帯なんだけど5G化する。面でやることによってセルエッジ(基地局が形成するエリアの境界部分。どの基地局からも遠いため電波が弱くなり通信品質が低下する)も少なくなるし、結果としてアンカーバンドが入って、それで4Gと5Gにうまいことデータトラフィックを調整できるようになった。ドコモの場合はどうしてもピンポイントでしか5G基地局を建てられなかったので、結果として電波の端っこ、いわゆるセルエッジがいっぱいできて、4Gと5Gの通信の切り替えがうまくいかず、そこで品質が落ちる、ということになった。この状況は、5Gが始まるぐらいから実は予想できたことなんだろうなと。
ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一氏
石野氏:セルエッジの問題を僕が騒ぎ出したら、ドコモの人が「どこでそうなりましたか?」って聞いてくる。ここで電波が弱すぎましたって言いましたけど、聞くということはドコモ側でそれを把握していないんですよ。ユーザーの動向をつかめていないんですよ。
法林氏:構造的なものですよ。ドコモは携帯電話サービスを提供している姿勢が、あまりユーザーに寄り添っている感がない。「いつでもカエドキプログラム」で端末を返却する手続きをした時も、全然親切じゃなかった。
石野氏:僕の場合は1週間くらいで「査定が終了しました」っていう謎の言葉が一行書かれたSMSが届いて、えっ? えっ? それで終わりって(笑)
法林氏:ドコモはサービスを提供しているかもしれないけど、使わせてやっている感がすごく出てきちゃっている。
房野氏:以前はそんなこと、なかった気がしますが。
法林氏:いろんな意味で、ドコモショップの有能なスタッフに支えられてきたサービスだったんだなって、すごくよくわかった。それを経営陣はよく考えるべきだと思います。
石川氏:ショップを減らすとか、アンテナもシェアリングでいいじゃんとかっていう考え方が、ここに来て色々と、なんというか……
法林氏:利益を増やすために、経営効率を上げたいという方針になっているんだと思います。ドコモショップも、地域にたくさんあれば便利だけど、なくてもどうにかなるはず……全体的にそういう緩さを感じる。
まあ、でもソフトバンクショップもY!mobile店と統廃合したからめっちゃ多いんだよね。ただし、ソフトバンクは直接言わないじゃないですか。ドコモは固定的なお金がかかるものを減らしたいという気持ちでやっているんだろうけど、それは結果的にユーザーとの接点を減らすし、その行く末にちょっと危機感を覚える。経営陣は、もう少し人の言うこと、現場の言うことを聞いた方がいいんじゃないかなと思いますね。もしわからない時は石野君に電話していただくと。きっと渋谷の街を案内しながら細かく説明してくれますよ(笑)
石野氏:本当になんでもない時に急につながらなくなるんですよ。
房野氏:全国的にそう言われていますよね。総務省から怒られたりはしませんか?
石川氏:障害ではなく、あくまでデータは流れているので、総務省がどうこう言うことではないけど、MVNOに影響が出てきている。MVNOを使っていて「遅いじゃん」ってことになったら、ドコモ系MVNOじゃなくて、Y!mobileやUQ mobileにMNPしようかってことになるような気もする。
房野氏:IIJの勝社長も、決算会見でちょっとお怒りでしたね。
株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役社長 勝 栄二郎氏
石野氏:HORIE MOBILE(ホリエモバイル)の堀江さんも「困る」って言っていました(笑)
石川氏:ついこの間までは「ドコモネットワークだからどこでもつながる」って言っていたのに(笑)
房野氏:ユーザーとしては「遅延がひどいからお金を返して」って言えますか?
法林氏:あくまで回線はつながっているので、約款上、違約金などはもらえない。去年のKDDIみたいに、ネットワークがダウンしましたという話ではないので。
石野氏:700ms以下ではつながっているのでね。
石川氏:品質が落ちているだけ。
石野氏:ベストエフォートの中のワーストってだけであって、通信はできている。ゼロじゃない、1はサービスできているという結論。
法林氏:ユーザー側の自衛手段としては、MNPがしやすくなっている状況を考えると、例えば、IIJだったらタイプDからタイプAに契約を変えるとか、mineoだったらソフトバンクの回線を選ぶとか。いっそのことドコモ網を使っていないほかのMVNOに行くのもアリ。
房野氏:実際、乗り換えているユーザーは増えてきているのでしょうか。
法林氏:明確にデータとしては出ていないけど、声は聞きます。そのうちドコモ系MVNOが言い出すんじゃないかな。これだけダメだったら言うと思う。
石野氏:MMD研究所の調査では、キャリアを乗り換えたことがない人の数はドコモが一番多いというデータが出ていましたね。ドコモからMNPして転出している人は少ないと。通信が遅くても耐え忍ぶ人が多い。
法林氏:それを見直すタイミングがついに来たということでもある。今回は本当に考え直した方がいい気がする。別にドコモだと全くダメとか言うつもりはないけど。
石野氏:いや、ダメです。端末の割引き条件が4万円に増えるので、これからがチャンスですよ(笑)