楽天モバイルと王者ドコモの対応は?
房野氏:一方で、楽天モバイルやドコモはなぜ動かないんですか?
石川氏:楽天モバイルは、ワンプランを貫こうとしているので、そこを改めない限りは柔軟性のあるプランが作れないんじゃないですかね。
石野氏:あと、度々この座談会でも話していますが、楽天はグループ間での連携が上手じゃない。
石川氏:そうなんだよね。KDDIとソフトバンクは資金的な余裕があるし、ユーザーを逃さないための料金プランでの勝ちパターンを熟考している。それに対して楽天モバイルがポイントなどのキャンペーンで対抗したくても、原資を負担する余裕はない。
石野氏:ドコモにはd払いで連携する策があると思うんですけどね。
石川氏:確かにd払いの連携でペイトクプランやauマネ活プランの真似はできるけど、ドコモユーザーの囲い込みにしかならない。PayPayは他キャリアにもユーザーがたくさんいるから、新規契約につながるけどね。d払いも、1000万ユーザーを超えているdカード GOLDも、結局ドコモユーザーの囲い込みで終わる。まあ、ドコモとしては負けなければいいって考えかもしれないけど。
石野氏:あと、ドコモは料金プランを変えたばっかりですしね。
石川氏:そうそう。結局、既存のプランへのテコ入れしかできなかったドコモと、ちゃんと新プランに取り組んだKDDIとソフトバンクという構図になった。しかも、ソフトバンクは明確に、データをたくさん使う人は無制限のソフトバンク、小・中容量はY!mobileと、わかりやすくブランド分けしている。
ソフトバンクはペイトクプランでPayPayのテコ入れを狙うのか?
房野氏:ペイトクプランはペイトク無制限だけじゃなく、30GBプランの「ペイトク30」、50GBプランの「ペイトク50」が用意されています。
石野氏:本当に3種類も必要ですかね?
石川氏:中途半端だよね。30GBプランだと通常時のペイトク特典が1%、月の上限1000円相当しかつかない。
石野氏:そうなんですよ。ポイント還元の上限1000円に達するためには、PayPayで月10万円使わないといけない計算になる。なんで下位のプランの支払い額が多くなるのか。無制限プランに誘導したいという思惑はわかるけれど、だったら30GB、50GBのプランは最初からいらなくないかと思ってしまいます。
石川氏:そこはやっぱり、マーケティング的な視点からなんじゃない? ちゃんと3プランから選べますよって感じ。ユーザーは自分自ら3つの中から一つを選ぶことで、納得感を得るもの。
石野氏:それはわかるんですけど、だとしたら普通、真ん中のプランに誘導するんじゃないかな?
石川氏:普通は真ん中に主力を置くよね。
石野氏:そうなんですよ。
石川氏:今までメリハリ無制限を使っていた人はメリハリ無制限+にすれば、テザリングが30GBだったのが50GBになる。だから自分もメリハリ無制限からメリハリ無制限+に変えました。
法林氏:あれ? 石川君はメリハリ無制限+にしたの? ペイトクプランじゃなくて?
石川氏:自分はANA経済圏ができあがっているので、PayPayをあまり使わないんですよ。
石野氏:僕はPayPayでの支払いをチェックしたら、元がとれる以上にポイント還元されそうだったので、ペイトクプランにしました。
房野氏:私はPayPayをあまり使わなくなってしまいましたね。
石野氏:まあ、少なくとも、料金プランはMy Softbankから簡単に変えられるので、キャンペーン期間中だけとりあえず試して、あまりPayPayを使わないなと思ったら、キャンペーン終了後にメリハリ無制限+に戻してもいいです。
石川氏:でも、キャンペーンの終了期限なんて、あってないようなものだったりするからね。
石野氏:延長される可能性もありますよね。キャンペーンが終わったら、還元額の上限まで8万円もPayPayを使わないといけないのか……そんな不満が出てもおかしくないですし。
石川氏:ペイトク無制限ならキャンペーン期間中、月に2万7000円くらいPayPayで支払えば、月額上限までいくんだよね?
石野氏:そうですね。
石川氏:2万7000円と8万円じゃ、負担が全然違いますよ。
石野氏:PayPayの平均利用額って3.5万円/月が目処らしいです。それじゃあ、キャンペーン期間が終わったら、ユーザーのほとんどが上限まで届かないじゃんっていう(笑)
石川氏:自治体のキャッシュレスサービスでキャンペーンする場合があるけれど、20%などの高い還元率でポイントが付与されることがある。そのポイント目当てでビックカメラからiPhoneのSIMフリー版を買う……そんな選択肢が生まれることがあります。
【参考】かながわPay
石野氏:自治体のポイント還元率って結構高い。
石川氏:みんな気づき始めたよね。
法林氏:房野さんがさっき、PayPayをあまり使わなくなったと言ってたけど、ソフトバンクユーザーのPayPay利用額が下がっているんじゃないかなって思うんですよ。ソフトバンクはグループ全体として、ペイトクプランを通じてPayPay利用額にテコ入れしたいんじゃないかな。
石野氏:PayPayのポイントバックが削減された影響がありそうですからね。
法林氏:だから、ソフトバンクやY!mobileユーザーに対して、ペイトクプランを通してPayPayをもっと利用してほしいはず。一方で、ソフトバンク以外のユーザーにMNPしてもらって、ペイトクプランを契約してもらうのは、ちょっと難しいかと思います。通信キャリアの解約率は、3社が1%、楽天モバイルも2%程度だからね。
石野氏:ただし、ドコモは通信品質の低下が問題になっていて、今後は解約につながる可能性もあります。
石川氏:これからドコモが落ち込んでいく可能性はある。irumoにプラン変更をして、月額の支払いを抑える人もいるだろうし、他キャリアに移る人もいるはず。これから先は、結構厳しくなりそう。
石野氏:ネットワーク品質が一番の売りだった会社ですからね、ドコモは。その強みがなくなってしまうのは痛いです。直接関係ないですが、d払い(iD)もやめてしまう。
法林氏:KDDIとソフトバンクは経営方針がはっきりわかる。楽天モバイルは、グループ内がまだバラバラだけど、先行きにちょっとだけ光明は見えてきた。ただし、ドコモは先行きが全然見えてこない。井伊社長に表舞台できちんと方針を示してもらいたいですね。
……続く!
次回は、ドコモのネットワーク問題について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦