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【ヒット商品開発秘話】対前年比でほぼ倍増、2023年の出荷額が17億円を突破した「キリンウイスキー 陸」

2023.10.18

大量サンプリングを可能にしたパウチタイプ

 2022年4月、リニューアルされた『陸』が発売される。発売後の消費者コミュニケーションも、リニューアル前とは異なるものになった。

 リニューアル前は店頭での施策に軸足を置き、商品にレシピをつけたり、グラスをつけてそれに合った飲み方を提案したりといった飲み方提案を重点的に実施。店頭での地道な訴求で定着を図ることにした。

 リニューアル後は広告を活用。テレビCMの放映やデジタル広告の配信のほか、キャンペーンも実施した。

 キャンペーンは2022年4月と2023年4月の2回、Twitter(現X)上でサンプリング実施。サンプリングのためにつくったパウチタイプの『陸』を配布した。

サンプリング用につくられたパウチタイプの『陸』

 価格などから試飲がしにくいウイスキーにとってサンプリングは、試飲の絶好の機会。しかし、従来からあるサンプリング用の50ml入り小瓶だと包装や発送コストがかかり大量に配ることができなかった。

 パウチタイプはこうした事情からつくられることになった。小瓶を包装し発送する従来のやり方よりコストを格段に圧縮することができるという。これまでに実施した2回のサンプリングではいずれも、50万個配布している。

 また、2023年2月製造品からパッケージデザインを若干変更し現在のものになった。商品名を中央に配置し、富士御殿場蒸溜所のロゴを追加。2023年で富士御殿場蒸溜所が操業50周年を迎えたことから、『陸』をはじめとした富士御殿場蒸溜所でつくられたウイスキーのパッケージデザインにはロゴを入れるようにした。

取材からわかった『キリンウイスキー 陸』のヒット要因3

1.ユーザーを正しく、そして深く理解した

 リニューアルに当たり、ユーザーどんなウイスキーを求めているのか、購入に至るまでにどのような行動を取るのかを分析。その結果を中身づくり、パッケージデザイン、消費者コミュニケーションに反映させた。

2.原点や基本に立ち返った

 リニューアルでは、中身は富士御殿場蒸溜所の哲学「クリーン&エステリー」に沿ったものをつくり、パッケージデザインは外してはいけない型を踏襲。これにより、得体の知れないものではなく王道のウイスキーとなった。

3.愛好家の支持

 リニューアル前の『陸』のユーザーはアーリーアダプダーが目立ったが、リニューアル後は長年のウイスキー愛好家が増加。リニューアル後は愛好家の好意的な口コミが伝わり、新規ユーザーの獲得につながった。

「キリンがウイスキーをつくり始めて50年になりますが、ウイスキーをつくっていることは、ほとんど知られていません。歴史はあるのですがチャレンジャーのような立場です」

 自社のウイスキーづくりをこのように言い表す原田氏。「クリーン&エステリー」を守りつつ、知られていないことを強みにしたチャレンジも今後期待したい。

ブランドサイト

https://www.kirin.co.jp/alcohol/whisky_brandy/riku/

文/大沢裕司

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