企業の制度のひとつとして挙げられる「役職定年制」。実際に導入している企業で働いている人もいるのではないでしょうか。
今回は、役職定年制の目的や、対象者にとってのメリットやデメリット、定年後のキャリアの選択肢を紹介していきます。
役職定年制とは?導入背景や目的
最初に「役職定年制」の意味をおさらいしておきましょう。
役職定年とは、課長や部長などの管理職が、一定の年齢に達したときに、その役職を解かれる人事制度のことです。(デジタル大辞泉より)
50代後半~60歳で設定されていることが多く、対象となる役職は企業によって様々です。
導入背景には、「人件費の抑制」や「組織の若返り」などが挙げられます。これまで多くの日本企業で採用されていた年功序列制度では、年齢や役職があがるほど給与も高くなるためです。
高い能力を持っていても「若いから」という理由だけで活躍の場が限られている人もいるかもしれません。役職定年制を導入している企業であれば、上の年代がずっと同じポストに留まっていることがないため、若手のモチベーションアップにもつながるでしょう。
■「役職任期制」との違い
「役職定年制」と並んでよく聞く言葉として「役職任期制」が挙げられます。
役職任期制は、文字通りあらかじめ役職につく期間に任期を設けている制度です。役職定年制のように年齢で期限を設けているのではありません。
役職定年制、役職者本人への影響
役職定年制が組織にもたらすメリットには、「人件費の抑制」や「組織の若返り」があると説明しました。
一方、役職者本人にはどのような影響があるのでしょうか。メリットとデメリットに分けて説明します。
■メリット:キャリアプランを前もって考えられる
役職が解かれる年齢があらかじめわかっているため、その後のキャリアプランを早い段階から意識し、考えることができます。人生100年時代といわれる現代、役職定年後も何かしらの形で働き続ける人も多いでしょう。後述の通り、再雇用制度の利用を検討したり、シニア起業の準備を始めたりする人もいます。
これらの動きを後押しする企業も少なくありません。役職定年者のキャリア支援として、積極的な情報提供を行っている企業もあります。例えば対象者に向けてキャリアデザインやマネープランをテーマにした研修を開催、早いうちから役職定年後の人生をイメージできるように促しています。
■デメリット:モチベーションの維持が難しい
役職がなくなる年齢があらかじめわかっているということは、デメリットになる可能性もあります。どんなに成果を上げても〇歳で役職を解かれることがわかっているため、モチベーションを保てないという人が出てくるかもしれないからです。役職定年後の待遇に対する不安や、年金受給額の減少もモチベーションに影響を与えるでしょう。
役職定年後のキャリアの選択肢
役職定年制の影響について説明しましたが、実際にそのような企業で働いている人は、この制度を前向きに捉える必要があるでしょう。
メリットとして挙げた「キャリアプランを前もって考えられる」を実践できるよう、ここでは役職定年後のキャリアの選択肢を紹介します。自分に合った選択肢があるか、参考にしてみてください。
・再雇用制度を利用する
慣れている環境で働き続けるという面では、変化によるストレスが少ない選択肢といえます。これまで培ってきた知識や経験を活かせる場面もあるでしょう。
ただし、立場や待遇が変わったことで仕事に対するモチベーション維持はもちろんのこと、周囲とのコミュニケーションに難しさを感じてしまう人も少なくありません。
・再就職する
これまで勤めてきた会社とは異なる会社で働くことです。新たなミッションに向けて、モチベーション高く働くことが期待できるでしょう。
ただし年齢が高くなるにつれて、転職難易度は高くなります。特にこれまでと同等のポジションや待遇の求人があるとは、あまり期待しないほうがよいかもしれません。自分の市場価値を確かめるためにも、転職エージェント(人材紹介会社)などに相談してみてもよいでしょう。
・起業する
長い間培ってきたスキルや経験、人脈を活かして起業する人もいます。若い世代と比べて、様々な意味で余裕ができたミドル・シニア世代だからこそできることもあるでしょう。
事業として成り立つか、会社員時代から副業として挑戦してみるといった方法もあります。
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キャリアプランを前もって考えておくことで、様々な準備をすることができます。役職定年制が導入されている企業で働いている人は、そのメリットやデメリット、そしてどのような選択肢があるかを把握したうえで、今後の人生を考えてみてはいかがでしょうか。
文/やまさん
保有資格:キャリアコンサルタント(国家資格)/キャリア・デベロップメント・アドバイザー(日本キャリア開発協会)