高いパフォーマンスと便利なアクションボタン、値上がりしたが買う価値はあり
ここまで言及してきたカメラ機能を支えているのが、プロモデル2機種に採用された「A17 Pro」だ。A17 Proは、最先端の3nmプロセスで製造されており、前世代の「A16 Bionic」よりもCPUで10%、GPUで20%ほど性能が向上している。また、機械学習(AI)の処理を行うニューラルエンジンを刷新しており、処理能力が2倍に向上した。ニューラルエンジンの恩恵はなかなかわかりづらいが、カメラ画質の改善や音声認識の精度向上などがメリットになる。ニューラルエンジンを生かしたアプリにも、効果がある。
Geekbench 6で計測したCPU、GPUのスコア。それぞれ性能が前モデルから向上している
プロモデルならではのハードウエア的な特徴として挙げておきたいのが、アクションボタンだ。これまでのiPhoneは、左側面の上部にサイレントモードに切り替えるスイッチが搭載されていたが、プロモデル2機種はこれがアクションボタンになった。デフォルトでは、長押しするとこれまでのように着信と消音を切り替えることが可能だが、ここにさまざまな機能を割り当てて、ワンタッチで起動することができる。
着信/消音スイッチの代わりに、アクションボタンが搭載されている
標準で用意されているのは、フラッシュライトやボイスメモ、カメラ、拡大鏡など。カメラに関しては、写真、セルフィー、ビデオ、ポートレートといった、呼び出したいモードを選んで設定することも可能だ。また、アクションボタンをカメラに設定していると、撮影時にここがシャッターボタンになる。iPhoneを横位置で構えた時、あたかもデジカメのようにボタンを押して撮影できるのが便利だ。
設定でカメラやボイスメモなど、よく使う機能に置き換えることが可能。長押しだけで、これらを呼び出せるようになる。アプリを設定したい時には、ショートカットを活用する
ただし、アクションボタンは左側面にあるため、人差し指があたるようにiPhoneを構えると、カメラユニットが下になってしまう点には違和感を覚えた。それによって撮れる写真が大幅に変わるわけではないものの、やはり右側面にあった方が自然なようにも思える。また、ワンタッチでさまざまな機能を呼び出せるだけに、アクションボタンはもう少し押しやすい場所に配置してほしかった。着信/サイレントスイッチをそのまま置き換えているだけに、やや場所がよくない。用途が広がったのに合わせて、設計も見直してほしかったのが本音だ。
日本での価格が上がってしまったiPhone 15 Pro/15 Pro Maxだが、軽くなり、持ち運びやすさが上がったうえに、カメラ機能も進化している。アクションボタンも、課題はあるものの便利だ。カジュアルに持てるスタンダードモデルの「iPhone 15」や「iPhone 15 Plus」に対し、より凝った撮影機能でプロの利用にこたえようとしているのが、この2モデル。処理能力も高く、iPhoneをしっかり使いこなしたい人には、価格に見合った価値のある1台と言えるだろう。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★★
持ちやすさ ★★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★★
UI ★★★★★
撮影性能 ★★★★★
音楽性能 ★★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
生体認証 ★★★★
決済機能 ★★★★★
バッテリーもち ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。