「オンライン」の選択肢があるかが一つの基準に
では、実際にユニーク採用を取り入れている企業には、どのような考えがあるのだろうか。僕と私と株式会社CEO今滝健登さんに、近年の採用活動における変化、ユニーク採用を導入した経緯、今後の企業における採用活動の変化についてお話を伺った。
1997年生まれ。SNSネイティブ世代(Z世代)への企画・デジタルマーケティングを得意とし、独自のマーケティング論をベースに、さまざまな企業・行政とタッグを組んでワンストップ・プロモーションを展開。プロデュースしたTikTokアカウントやイベントは多くのZ世代の支持を集めている。
――まずは、企業おける採用活動について、今瀧さんご自身が感じられている変化についてお聞かせください。
今瀧さん:採用活動は、ここ2〜3年で大きく変わったと感じています。大きいのは、新型コロナウイルスの流行に伴う「オンライン」の需要です。具体的には、「採用活動自体をオンラインで行える企業か否か」「オンラインで働ける環境か」。
前者で言えば、ここ数年で本来オフラインがメインだった採用活動が、オンラインに切り替わらざるを得なくなりました。例えば、オンラインでの説明会や採用向けのYouTubeチャンネルを持つ企業も出てきましたよね。強制的にそうせざるを得なかった部分もありますが、これには大きく2つのメリットがあると思っています。
一つは、地方の学生に対してアプローチがしやすくなったことです。今まで地方の方がオフラインで来るとなると、交通費の関係から回数の制 約があるケースもありました。しかし、オンラインによってそれがなくなったんです。もう一つが、時間の制約が取り払われたこと。例えば、同じ日時に説明会が重なっているケースでは、以前であればどちらかを断念しなければなりませんでしたが、オンライン上であれば、録画データを視聴することができます。
つまり、企業側が「オンライン」に対応しているかによって、志望者の「選択肢に入るか」が決まってしまうとも言い換えられます。志望者からすると「まだオンラインに対応していないんだ」という企業側の評価が行われるようなイメージです。
――なるほど、志望者がオンラインに対応している会社かどうかが一つの判断基準になってきていると。
今瀧さん:そうですね。もちろん、完全に「オンラインのみ」とする必要はないですし、志望度の高い企業であれば、オンラインに対応していなくても応募することはあるでしょうが、窓口としてオンラインを設置しているかは大きなポイントだと思います。もし、企業担当者が同じ資料を使って、毎回同じ内容を話すのであれば、説明会だけでもオンラインにすることで、採用する側の負担も減らせますよね。
あと、大枠の話をすると、コロナ禍でリモートワークが定着したこと、多くの企業が倒産したことによって終身雇用の考えが崩壊し、ワークライフバランスを重視する人が増えてきているように感じます。平均寿命が100歳を超えると言われている「人生100年時代」の世代は、予想できない未来に対して将来設計を立てなければなりません。それもあって、「自分がしっかりと成長できる環境で働きたい」と考える方が増えてきている印象もあります。
CEOと一緒にサウナでコミュニケーションが取れる「サウナ採用」
――2021年の12月から「サウナ採用」を導入されたとのことですが、導入した経緯について教えてください。
今瀧さん:もちろん、僕自身がサウナ好きだからというのもあるんですが、それを採用に活かそうと考えた理由は大きく二つあります。
一つは、60分程度、あるいは何回かの面談だけで採用すること自体に難しさを感じていたこと。みんなが同じタイミングで、就職したい企業に応募している訳ですから、どうしても自分を取り繕ってしまい、本心が見えづらいんです。大量採用を一括で行う場合には適したモデルだと思うんですが、「人柄を見よう」と思うと、その人ごとに合った採用方法を用意する必要を感じました。
二つ目は、社内のメンバーともよくサウナに行くんですが、そうした時に普段話さないことが意外と出てくるんです。身も心もリラックスできるサウナであれば、面談では見えてこない人柄が見えるんじゃないかなと。
オンラインでの採用活動が増え、選択肢が広がる状況の中、本当にその会社に入りたいと思って応募する人は一部に限られていると思うんです。実際にサウナ採用で応募をしてくる人の中には、「その場で採用されたい」というよりも、「会社に興味がある」「CEOと話せるなら話してみたい」といった方が多い印象ですね。
あとは、弊社はジョブ型の採用をしていてフレキシブルに働ける環境が強みの一つです。実際にサウナに行って仕事をするようなこともできるので、それを伝えることができます。僕自身は企業ごとに独自の採用方法があって良いと思っているんです。〝らしさ〟が伝わる「採用の差別化」としての意味合いもありますね。
――サウナ採用では、志望者のどのような部分を見ているのでしょうか?
今瀧さん:実は「何かを見ている」ということはないんです。もっとラフな感じで、サウナに入ってお話をしましょうみたいな。希望者にはその後に面談も行いますが、サウナに入ってまずは仲良くなりましょうということです。
例えば、「コーヒーを買って帰る(応募する、入社したい)」ことのハードルは高いので、「コーヒーを売っていることを知ってもらう(企業を認知してもらう、採用活動を行っていることを知ってもらう)」というように、ある意味、潜在顧客に対するアプローチ方法ですね。だから、マナーがどうとか細かい部分を見ているということはないです。入社したメンバーは「サウナ採用が良かった」という人もいれば、「サウナ採用を取り入れている会社自体が面白い」と言ってくれることも多いですね。