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東京ゲームショウでも話題になった次世代プラットフォーム「Roblox」が示す新しいメディアの価値

2023.10.20

9月21~24日に開催され、大盛況をみせた東京ゲームショウ2023で、一際、子どもたちで賑わうブースがあった。「Roblox(ロブロックス)」(※株式会社GeekOut出展)だ。Robloxは世界180か国から1日に6600万人以上ものユーザーが利用する超巨大「プラットフォーム」である。さらに驚くことに、このプラットフォームの利用者の半分が「13歳以下」だという。

子どもたちに大人気のプラットフォームRobloxとは何か。そして、Robloxはどのようなイノベーションを可能にするのか。二人の専門家に話を聞いた。

東京ゲームショウ2023でも人気だったRoblox

Roblox(ロブロックス)とは?

『Roblox(ロブロックス)』は、2006年からリリースされている「没入型ソーシャルプラットフォーム」。世界180か国からアクセスされ、1日のアクティブユーザー数が6600万人(2023年3月末時点)を超える。

ユーザーは自分自身の分身となるアバターを作りRoblox上に公開されたゲームをプレイする。公開されているゲームは累計3200万タイトルを超え(2023年3月末時点)、アクション、RPG、サンドボックス、FPSといった様々なジャンルのゲームを楽しむことができる。基本利用料無料。対応デバイスはスマートフォン(iOS・Android)やPC(Windows・MacOS)、Amazonデバイス、Xbox one、そしてPlayStation4、5。

ゲームは一つひとつが「ワールド(仮想空間)」として独立しており、純粋に一つの“ゲームタイトル”として遊ぶことができるタイトルもあれば、コミュニティ空間や雑談部屋のような“スペース”として利用できるタイトルもあり、ユーザーの遊びの幅は年々拡大をしている。

そしてRobloxの大きな特徴として、ユーザーはプレイヤーだけでなく、クリエイターとなり自分自身のワールド(仮想空間)を制作、公開することもできる点が挙げられる。また、Robloxにはゲーム内アイテムの売買に利用可能な『Robux(ロバックス)』と呼ばれるプラットフォーム内通貨が存在する。Robuxは現金化もできるため、近年、プロのRobloxクリエイターも登場し、注目が集まっている。

公開されているワールドはすべて個人や企業によって制作、運営されている ※画像はRoblox公式より

 

コンセプトは様々 ※画像はRoblox公式より

「ゲーム版YouTube」と例える人もいる

なぜ電通グループは「Roblox」とパートナーシップを結んだのか?

2023年6月、Roblox社は電通グループとパートナーシップ契約を締結した。Robloxで新たにローンチされる没入型広告の共同開発の他、日本市場を含むグローバル市場のプロモーションも担当する。今回は電通グループ全体でR&Dを推進する「電通イノベーションイニシアティブ」に所属する青木圭吾さんと森岡秀輔さんに話を聞いた。

(画像右)青木圭吾(あおき・けいご)氏
株式会社電通グループ

電通イノベーションイニシアティブ エクゼクティブ・ディレクター
2012年より、海外の優れたマーケティングテクノロジー企業とのパートナーシップを通じて、日本市場の顧客に対する新しい価値を提供する事業開発・パートナーシップ開発を行う

(画像左)森岡秀輔(もりおか・しゅうすけ)氏
株式会社電通グループ
電通イノベーションイニシアティブ シニアマネージャー
新規事業開発の部署に初任配属後、大手飲料ブランドの営業を経て電通イノベーションイニシアティブに参加。現在は海外発の有望な先端スタートアップの日本市場展開及びアクセラレーションを推進。主にイノベーションリサーチ領域とゲーミング領域を担当

急成長するRobloxの日本市場

――全世界でユーザー数が増え続けているRobloxですが、多数のゲームが遊べる「ゲーミングプラットフォーム」ではないのですか?

森岡 もちろん、その側面もありますが、今では人と人とのコミュニケーションをする場所になっています。だからこそRobloxは「没入型ソーシャルプラットフォーム」なんです。単なるゲームだけでなく、コミュニティの機能を持つワールドも多く存在します。世界中で数千万人のユーザーが毎日、友達や知らない人たちと時間を共有するツールとして利用しています。

――日本におけるRobloxの現状について教えてください

青木 実際のところ、世界での成長に比べると日本でのRobloxの認知度は低く、まだまだ大きな伸び代があると思っています。特に私たち40代以上では知らない人の方が多くて、むしろ、私たちの子ども世代の10代における認知度が非常に高く、ユーザーも10代~20代前半がメインです。

娘や娘の友だちの方がRobloxに詳しいと語る青木さん

森岡 Robloxのユーザー数が最も多い国はアメリカ、ブラジル、イギリス、東南アジア各国と続きます。日本はトップ10件圏外です。しかし、ユーザーの成長率で見ると日本は最も高く、過去4年間の1日のアクティブユーザー数は約20倍にも拡大しています。ユーザー数だけでなく、日本のクリエイターやブランド、コンテンツのポテンシャルも高く、Roblox社は日本市場を重要なマーケットとして注目しています。

――世界のユーザー数から見ると、日本の現状は世界に置いていかれているように感じますが、その要因は何でしょう

森岡 コンテンツ、クリエイター両方の側面が考えられます。海外ではYouTubeやTikTokでRobloxの動画が人気になり、話題が話題を呼んで少しずつユーザー数が増えてきたんです。

青木 Robloxはオーガニックグロースを目指すことが基本方針なので、海外市場ではユーザーがユーザーを呼ぶ、といったサイクルで自然に成長してきました。一方で日本は、選択肢の多さや言語の壁があったことで、そこまでクリエイターたちによる文化が養成されなかった。ですが、Z世代やα世代はそういった壁を気にせず、面白いものを受け入れるので、彼らの世代を中心に昨年から急速に日本のユーザーが増えてきているところです。

森岡 クリエイターの存在は欠かせません。昨年、Robloxのクリエイターは総計6億8000万ドルもの収益を上げています。トップ10クリエイターの年収は平均で2700万ドル、トップ1000のクリエイターでも平均して年収6万ドルを稼いでいます。彼らはYouTuberと同じようなティーンエイジャーの憧れになっています。

数年以内には日本からもこうしたトップクリエイターが誕生してくると思います。彼らに正しくスポットライトを当ててあげることは大切でしょう。また、海外とは逆の順番になりますが、ブランドやIPなどを用いてユーザーに興味を持ってもらうことも重要かと考えています。

東京ゲームショウ2023で株式会社藤子・F・不二雄プロ監修のRobloxゲーム『ドラえもん のび太のゴーゴーライド!』が発表された

Robloxの強みはZ世代やα世代へのエンゲージメントの強さ

――企業がマーケティングの場としてRobloxを選ぶメリットにはどのようなものがあるのでしょうか

森岡 2022年には200以上のブランドがRobloxに参入していますが、理由は様々です。恒常的なエンゲージメントを作る場所として利用することもあれば、ブランドの新しい表現を挑戦する場所でもある。もちろん圧倒的なトラフィックも魅力の一つです。

青木 既存のSNSやソーシャルメディアではフィルターバブル(※)が強すぎるのではないか、と考えている人も多くいらっしゃいます。結果として若い世代は、私たちの世代にとっては有名なブランドでも聞いたことがないということが起こりうる。だからこそ、企業やブランドが若い世代への認知を広げるためには、若い世代との接点に積極的に出ていかなければならない。その視点からすると、Robloxはティーンエイジャー中心のコミュニティなので、彼らにエンゲージメントする場所として非常に魅力的な場所であることは間違いありません。

(※)検索アルゴリズムによりユーザーが興味のない情報は提供されなくなること

森岡 10年前はFacebookやTwitter、YouTubeなどSNSに企業アカウントはほとんど存在しなかった。しかしコンテンツがアップグレードされていく中で公式アカウントという概念が生まれ、今では企業がアカウントを持つことが当たり前の時代になっている。

青木 さらに遡ると、企業の公式ホームページすらなかったのが当たり前の時代もありましたからね。

森岡 同じ現象がRobloxでも起きつつあり、今後スタンダードになると考えています。Instagramの公式アカウント、TikTokの公式アカウントというように、そして次がRobloxの公式アカウントすなわち公式ワールドという考え方になってくる。

だからこそ、企業がマーケティングをする中で「それはテレビCMがいい」「これは屋外広告がいい」と選択する中で、「これだったらRobloxがいい」という選択肢を提供していきたい。

Robloxは新しいメディアの価値観を作る

――では、Robloxをマーケティングの場として活用したい企業はまず「公式ワールドを作る」ことになるのでしょうか

青木 Robloxの持つ可能性をフルに活用するならワールドは必要になるでしょう。しかし、「ワールドを作る」こと自体を目的にすることはあまりお勧めできません。私たちもまだRobloxマーケティングの成功ビジョンをしっかりと明確化できているわけではありませんが、大切なのはRobloxを通して「ユーザーに何を体験してもらいたいか」を考えることだと思います。誰も求めていないものを作ってしまって、結果的に誰も遊びに来ない“ゴーストタウン”を作ってしまうのはとてももったいないことだと思います。

森岡 まずRobloxで「何ができるのか」を見据えないといけないでしょう。

――コンセプトが大事ということですね。実際にワールドを作成、運用するにあたってコストはどれくらいかかるのでしょうか

森岡 例えば、スポーツブランドNIKEの公式ワールド「NIKELAND」は、数億円のコストがかかっているでしょう。初期費用だけでなく、ユーザーの声を聴きながらワールドのアップデートもしていく必要があるので運用コストもかかります。

 

NIKE LAND

企業側の組織作りも大事です。実際に、ワールドを上手に運用している企業はRoblox専属のチームを作っています。それこそSNS担当部署のようなものですね。

――TwitterやInstagramのアカウントですら上手に使えていない企業がRobloxを上手に使うのは難しそうに思います

青木 確かに、企業アカウントすら運用できていないのに、Robloxを活用するのは難しい、と言っても過言ではないかもしれません。現在のメディアインターフェースの変化の波に乗れていない企業がこれから訪れるであろうRobloxに代表される新たな変化の波に乗るためには、手段よりも先にソーシャルメディアを自社のマーケティング戦略にどう取り込むかという点ついてしっかり考えることが必要ではないかと感じます。

――Roblox社とパートナーシップを締結した電通グループは企業のワールドの作成や運営をサポートしてくれるのでしょうか

森岡 そうですね。企業がRobloxをはじめようとして壁にぶつかるのがワールドの作成です。当然、ノウハウがないので、どの企業もRoblox社に「こういうワールドを作りたいのですが」と問い合わせるのですが、Roblox社は「どうぞ、ご自由に」という感じです(笑)。

YouTubeチャンネルが個人によって自由に運営されているのと同じで、RobloxのワールドもRoblox社が自らワールドを作ることは一切なく全て外部クリエイターによるものです。こういった特性からも「ゲームもしくはワールド(仮想空間)版YouTube」といったイメージにしてもらえればと理解しやすいと思います。

だからこそ、電通グループは、企業やブランドのやりたいことを企業からヒアリングをし、ワールドを作ることのできるRobloxのクリエイターたちとの懸け橋になりたいと考えています。

企業とクリエイターの懸け橋になりたいと語る森岡さん

青木 また、ユーザーが企業やブランドに求めるものと、企業がやりたいことが異なってくるかもしれない。本当に話題になるものは、企業が宣伝したい側面とは違う側面かもしれない。こういった提案をすることも企業から求められていると思います。

森岡 まずは小さなワールドを運営してみて、少しずつやりたいことを実現していくといった長期的な視点もRobloxでマーケティングをしたい企業には求められるでしょう。

他のワールド内に自分のワールドに誘導できるゲートを設置する「没入型広告」といった新しい広告スタイルにも力を入れている

――Robloxには大きな可能性がありそうですね

青木 Robloxは新しいメディアであるからこそ、これまでのメディアの価値観は変わると思っています。現在のデジタルメディア・SNSを使ったマーケティングはインプレッション数やフォロワー数といったボリュームが重視されます。

一方で、Robloxでは実際に企業のコンセプトを反映した世界感を能動的にライブで体験してもらうことができる。となると、訪問数よりも訪れてくれたユーザーがその世界感をどれだけ理解したかという「深度」のような指標が大切になってくると考えています。

Robloxでの体験は、既存のデジタルメディアを超える、より新しいものだと思っています。これまでのデジタルメディアで当たり前のように追求してきた数の論理、いわゆるインプレッション数、フォロワー数、クリック数というものだけに囚われない、企業とユーザーの新しいエンゲージメントのあり方を提案できるものだと感じています。

森岡 さらにユーザーは一人ではなく、家族や友人と一緒にブランドの作ったワールドでの体験を共有して楽しむことができるのも新しい魅力です。その新しい価値観を作ること、そして企業やユーザーに理解してもらうことが私たちの目標です。

取材・文/峯亮佑 撮影/篠田麦也

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