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気になるお味は?大阪王将にテスト導入された職人技術を完コピした調理ロボット「I-Robo」の腕前

2023.10.10

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

全国で17名しかいない調理1級を持つ熟練職人の鍋さばきを完全コピー

大阪王将は10月1日にリニューアルオープンした大阪王将西五反田店に、TechMagicが新しく開発した調理ロボット「I-Robo」を3台テスト導入した。定食メニューを中心に、約60種類ある定番メニューの中から西五反田店では約20品の調理を担う。

大阪王将では早い時期からロボットを導入しており、今回の調理ロボットは3回目となる。以前のロボットでは適している料理と適していない料理が明確に出てしまったという反省もあり、AI搭載のI-Roboでは、大阪王将の職人技術を完全コピーした、職人が作ったものと変わらない、安定したおいしさが担保された炒め物の提供が可能になった。

大阪王将には調理の速さとクオリティを、1級から3級までの3つのレベルで審査する調理検定試験制度があり、全国で17名しかいない調理1級を持つ熟練職人の鍋さばきを、様々な角度から半年間研究。変わらないクオリティを安定して提供できるように、加熱温度、加熱時間、鍋の回転スピード、回転方向まで細かく調整した。

下記画像の左がI-Robo調理、右が職人の調理だが、見た目も全く違いがなく、大阪王将の社員でも味の違いがわからないのではと植月社長が話すほどの出来栄えだ。

「人手不足から厨房の無人化を目指してロボットを導入したのではありません。職人の技術をしっかりとロボットが再現することで、職人は新しい商品を開発に力を入れることができ、レシピをロボがコピーして拡張させることが可能になります。ベテランの技術をより広く専門分野に特化して活用していくために、補助的な仕事をI-Roboに担ってもらいます。

大阪王将の店で鍋を握るには、研修センターに3ヶ月入って基礎を覚えて実地3ヶ月、計6ヶ月の基幹を必要としています。調理検定試験に合格して初めて調理することを認められます。

I-Roboは1級職人の技術をコピーしているので、基本的に1級レベルの商品クオリティがあり、調理スピードもほぼ変わりません。料理によってはロボットの方が早いこともあります。今までは店によって炒めすぎや、炒めが足りない、味が出せないなど、ブレとして出ていたことがありましたが、I-Roboではブレがまったくなくなりました。

街中華の厨房は、焼場、麺場、揚場と3つのポジションから構成されています。限られたスペースでなるべくスムーズに早く調理を行い出来立ての料理を提供できるよう、繁忙時間帯は特に提供メニューの工夫をしているのが一般的です。ランチメニューや定食メニューでは、レバニラと炒飯のセット、回鍋肉定食に麻婆豆腐を付け合わせるなど、鍋を2回振らないといけないセット商品を短時間で調理し同じタイミング出すには技術が必要で、3級職人しかいない店だと、調理の完成がずれて、かたい、冷めているということが起こってしまい、セット商品が難しいのが現状でした。

お客様が食べたいと思っているものを、お待たせすることなく提供したいという想いから、1級職人の技術を再現できるロボットを導入するに至りました」(大阪王将 代表取締役社長 植月剛氏)

I-Roboは、小型のドラム式鍋とモニターが組み合わせになっており、モニターでメニューを選択、調理手順や、具材、調味料の投入タイミングの指示が表示され、それに合わせてドラムが動作し、自動で温度をコントロールする。

オプションで調味料を自動供給する装置も追加可能だが、大阪王将ではコストや厨房に入るサイズを考慮し、一番味がぶれやすく調理技術が必要な炒める工程だけ機械化して、具材や調味料の投入は人手で行う方法を採用した。モニターは日本語、英語、中国語に対応している。

従来のロボットは、洗浄の際にドラムの中に手を入れて汚れをしっかり取らなければならず時間がかかったが、I-Roboでは鍋の洗浄も自動化された。

調理が終わると自動的にドラムがひっくり返して洗浄。洗剤を使わずにスポンジとコゲ取用の部品でコゲまでしっかり取れる。洗ったものはカメラで確認して汚れが残っていれば再度洗浄できるようになっている。

通常の鍋洗いは水を入れてささらで洗って、焚きながら汚れを浮かして捨てるという方法で、水の使用量は1回で3ℓほど必要だったが、I-Roboの自動洗浄では1.5ℓほどで、水の使用量も少なくなっている。

自動洗浄中に職人は次の料理に取り掛かれるので、オーダーが多く入った時でもスムーズに工程が進み、料理全体の提供時間も短くなるメリットもある。

「2030年までに、サービス産業では400万人、社会全体では約2千万人と近畿地方の人口に匹敵する労働力が不足すると言われています。そのような未来が確実に来る中で、人が行う仕事と、人が行わなくても可能な仕事を両立させ、生産性の高いお店を一緒に作っていければと考えています。

炒め料理をおいしく作るロボットがI-Roboです。新たに、個人の要望に合わせた調理も柔軟に対応可能になりました。I-Roboの機能を活かした新しいメニュー『じぶん盛り炒め』は、肉が3種類、味が5種類から選べて自分好みの炒め物が楽しめます。

昨年、プロントさんに導入したパスタ自動調理ロボット『P-Robo』は、一連の工程の自動化や、一人、二人単位で作業を効率化したいという要望があり、4mほどサイズ感になりました。

しかし、大きさゆえになかなか採用できない店舗も多く、新たに小型化したサイズを開発。大阪王将さんとは、“職人のレシピを再現する”というテーマで協業させていただきました。

開発の方向性としては、外食店舗の様々な厨房、業態サイズに対応できるようモジュール開発を進め、付け足したり、逆に無くしたりということが柔軟にできるようなロボットを開発していきたいと思っています」(TechMagic 代表取締役社長 白木裕士氏)

「街中華は80年代にかなり増えました。我々も同じ状況ですが、当時から始めた職人さんたちが高齢化しています。次を担う人を養成するのには長い時間がかかるため、今の代が引退したら店を閉めるところが多いのが現状です。

I-Roboによって、スムーズに若い世代に移行しながら、並行して調理技術を学んでもらうことが可能になりました。重たくて熱い中華鍋を振るのは重労働ですが、ロボット導入で女性やシニア、外国人、ハンディのある方も含め、いろいろな方が働いていただける環境になってくると期待しています。

また、メインの中華鍋から電化厨房に切り替わることで、灼熱と言われるほど暑い厨房の温度がだいぶ抑えられて、働きやすい環境になっていくと思います」(植月氏)

【AJの読み】I-Robo最後の難関が「天津飯」

I-Roboの導入によって可能になった、レバニラやホイコーロー、エビチリなどの炒め物と炒飯がセットになった「炒飯&炒めもんセット」や、「じぶん盛り炒め」は、大阪王将西五反田店でぜひ試してもらいたいメニューだ。

炒め物20品の中で一番苦労したメニューはチンジャオロースだったとのこと。炒め工程が何回かに分けて入るため、工程が複雑になるほど、味を安定させるのに苦労したという。

また、I-Roboで未だできないメニューが天津飯。空気を入れながら卵をふわりと仕上げることがうまくいかず、開発途上だという。

「天津飯をやりたいとずっとお願いしていますが、やはり難易度が高い。厚揚げ卵やスクランブルエッグはできますが、空気を入れながらふんわり仕上げる工程が、現状の鍋の形状では難しいとのこと。それをなんとかできるように、いやもう絶対やりたいとTechMagicさんにお願いしています」(植月氏)

個人的に天津飯、天津炒飯は大好物なので、ぜひロボット調理を実現させてもらいたいところ。今回はホイコーローを試食したが、ロボットで作ったと言われなければ絶対にわからないほど、職人が作る味との違いを感じなかった。

実際の厨房に入ってI-Roboを撮影して際、担当した職人はモニターを見ながら具材や、調味料を投入、ロボットが調理している間は他の作業をすることができるので効率的だと感じた。ウワサに聞く厨房の暑さも体感できて、こうした負担がロボットなど電化厨房の導入により軽減されて、労働環境の改善にもつながることを期待したい。

文/阿部純子

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