相互送客によるグループとしてのシナジー効果拡大か
UUUMを買収したフリークアウト・ホールディングスは、いわゆるアドテクの会社。広告配信の効率を上げるためのシステムを提供しており、ユーザーは広告スペースの買い付け、入札、配信などの管理を行うことができます。フリークアウトの業績は底堅く推移しているものの、成長性が失われていた面は否めません。
UUUMを傘下に収めることにより、インフルエンサーマーケティングへと事業領域を拡大しました。
フリークアウト取締役 CFOの永井秀輔氏は、2023年9月期第3四半期の決算説明においてUUUMとのシナジー効果について問われ、TikTokやInstagramなどYouTube以外のマネタイズ領域の拡大を挙げました。
フリークアウトは、広告に関連するテクノロジーに強みを持っています。その技術力を生かして、インフルエンサーの広告収入を多チャンネル化するというのです。YouTube以外のプラットフォームからの広告収入が太くなり、アドセンスの収入源を補うことができれば、UUUMの中長期的な課題は解決します。ただし、ノウハウの構築に時間がかかるのは間違いないでしょう。
これは明言していませんが、足元では両社の顧客基盤(広告主)の相互活用を計画しているはず。アドテクを扱うフリークアウトのような会社の場合、契約した顧客のアップセルが難しいという課題があります。
インフルエンサーマーケティングは、キャンペーンや新商品発表などで爆発的な認知拡大、集客効果に期待ができます。瞬発力の高い施策は、フリークアウトの得意分野ではありません。データを積み重ねて少しずつ広告成果を高めることに、事業の真髄がありました。
UUUMを傘下に収めることによって、フリークアウトは広告主に提案できる幅が広がります。これはUUUMも同様で、YouTubeのPR案件などで契約した顧客をフリークアウトに送客し、中長期的な広告効果を高める提案ができます。
両社の顧客基盤の活用により、グループとしてのシナジー効果は高まるでしょう。
こうして見ると、UUUM単独で事業を継続し、業績を伸ばし続けるのは困難だったのかもしれません。ユーザーは長尺の動画から遠ざかりました。その変化は極めて短い期間が起こっています。
UUUMは成長スピードが速かった分、限界が訪れるのも一瞬でした。時流に乗ってビジネスを展開する事業の難しさを物語っています。
取材・文/不破聡