9月8日、YouTuberのマネジメントを行うUUUMのTOBが成立しました。広告配信などを行うフリークアウト・ホールディングスが、50.77%の株式を取得して連結子会社化しました。
UUUMは2017年8月に上場した会社。一時は時価総額が1,000億円を突破するなど、市場の期待を一身に背負っていました。しかし、TOB成立後の時価総額は145億円ほど。営業赤字を出すまでに収益性は悪化し、ついに広告会社の傘下に入りました。
UUUMが再成長する道筋はあるのでしょうか?
ショート動画の興隆によって単価は1/10以下に
UUUMの業績が悪化した要因は大きく2つあります。1つは業績を支えるYouTube広告(アドセンス)経由の売上高が縮小していること。もう1つはYouTuberのコラボレーション商品が計画通りに売れなかったことです。
UUUMは2022年5月期の売上高が前期比3.7%減の235億円となり、上場以来初の減収となりました。翌期も減収で2期連続となった上、2023年5月期は2億円近い営業損失を出しました。
減収の主要因がアドセンス経由の収入の減少です。
2023年5月期4Qのアドセンスの売上高は21億円。前年同期間と比較して1割近く減少しています。その主要因の一つとして、ショート動画が主流になったことが挙げられます。ショート動画はUUUM全体の動画再生回数の半分ほどを占めるようになりました。
※UUUM決算説明資料より
YouTubeの広告収入単価は公式には発表されていないものの、通常の動画は1再生当たり0.05円からと言われています。その一方で、ショート動画は0.003円から。単価は1/10以下の水準まで落ちました。
ショート動画は、UUUMに所属するYouTuber全体の再生回数を底上げすることに貢献していますが、単価が低いために収益性は悪化しているのです。
会社の成長エンジンとして期待した事業が大失敗
アドセンス経由の収入は、UUUM売上高全体の4割以下。2022年は5割近くありました。ショート動画の存在感が大きくなれば、それだけUUUMの売上高は縮小します。
先細りへの危機感から、UUUMは新たな事業展開を行いました。それが人気のYouTuberがプロデュースした商品の販売です。
※UUUM決算説明資料より
UUUMは2021年6月にP2C Studioという子会社を設立しました。この会社はYouTuberがプロデュースする商品の開発と販売を担っています。
この事業が大赤字を出す元凶となりました。
UUUMは2023年5月期に10億5,300万円もの純損失(前年同期は4億4,800万円の純利益)を出しました。赤字の主要因となったのが7億円近い棚卸資産評価損。これは仕入価格よりも在庫の価値が下がった場合などに行う会計処理です。
UUUMの商品開発スピードは速く、それは決算書にも数字として如実に表れています。2023年2月末時点で、資産として「商品」に計上されている金額は12億5,200万円。2022年5月末時点では4億1,300万円でした。
※UUUM決算短信より
UUUMは2022年5月期の決算説明にて、YouTuberが開発する商品の売上高を伸ばす計画を明らかにしていました。具体的な数字は書かれていないものの、その売上高はアドセンスを超えて大きく成長する様子が描かれています。
※UUUM決算説明資料より
この計画が失敗に終わり、在庫の評価損を計上するという最悪の結果を招きます。