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トヨタの新型「アルファード」「ヴェルファイア」に乗って感じた違和感の正体

2023.09.28

機械として優れているか?★★★3.0(★5つが満点)

2.5ℓ4気筒エンジンを積んだエンジン車が前輪駆動と4輪駆動の2種類あり、2.5ℓ+モーターのハイブリッドも前輪駆動と4輪駆動の2種類が用意されている。兄弟車だった「ヴェルファイア」も、専用のサスペンションチューニングやボディーの補強が施され、専用グレードも設けられた。

 最初に試乗したのは「アルファード」のExective Loungeというグレードのハイブリッド4輪駆動版。オプションを含めず、車両本体価格だけで872万円(消費税込み)という高級車だ。プレシャスレオブロンドという上品なゴールドメタリックのボディカラーにナチュラルベージュのナッパ本革シートが組み合わされている。

 シートは3列7名乗りで、これはすべてのグレードに共通しているとのこと。Exective Loungeというグレード名の通り、(企業などの)エクゼクティブを乗せることを想定しているのならば、2列4名乗り仕様が設定されていても良かったのではないだろうか? 名前負けしている。

 走り出すと、その静粛性の高さに好印象を受けた。駐車場の敷地内を走る分には時速10km/h前後だったので、エンジンが始動せずにモーターだけで走行するために、静かさが際立つ。タイヤノイズも風切り音も発生していないから、余計に静かに移動している感が強い。ありがた味が高まるのは、何人かで乗車している時だろう。車内が静かならば、大声で会話せずに済むからだ。後席の乗員がシートを後ろに下げていたりすれば、なおさらだろう。

 一般道に出た後、首都高速道路に乗る。状況に応じてエンジンがかかったり、止まったり。このクルマに限らなくてもトヨタのハイブリッドシステムは、モーターとともに駆動に用いられることもあれば、充電が行われることもある。

 先ほどの駐車場での鼓動まで聞こえてくるのではと錯覚しそうなくらいの静謐さは、タイヤと路面が擦れるノイズ、風切り音などさまざまな雑音に掻き消されてしまった。

 また、社内の空間が広いので、タイヤやサスペンションなどから伝わってくる雑音が反響してしまっている。特に、舗装のアスファルトが粗かったり、滑らかでない路面を通過すると、一気に車内が騒がしくなる。新開発の低騒音タイヤの採用やカウルなどへの吸音材の設定など、フルモデルチェンジに合わせて対策が取られているようなのだが、駐車場で走らせていたクルマとは同じとは思えないほどだ。

 舗装の切り替えやちょっとした段差などを乗り越えた際の揺れなども小さくなく、終始、落ち着かない。姿勢の低いセダンやステーションワゴンなどよりも、ミニバンは着座位置が高くなるので、揺れの移動量が大きくなるからだ。

 これについても、新型「アルファード」と「ヴェルファイア」ではプラットフォームをミニバン用に最適化したり、サスペンションをマクファーソンストラット式に刷新したり対策したと開発陣から聞かされた。

 しかし、騒音も揺れも、どちらも大きな空間を持つ“箱”のかたちをしていることや“箱”の中の高い位置に座っていることに起因する、いわばミニバンの宿命のようなものだ。セダンやステーションワゴンとは同じカテゴリーのクルマではないことを改めて感じさせられた。

 アップダウンやコーナーが連続する山道などをキビキビとハイペースで走らせるわけにはいかず、運動性能にも顕著な違いが現れてくるだろう。それと同じように、長距離走行をした場合のドライバーの疲労などでも違いは明らかになるはずだ。燃費も芳しくはない。

 駐車場に「アルファード」を停めて、後席に乗り降りしてみる。後席に乗るには、ステップと段差を2段上がりながら奥に踏み込まなければならない。厚いスライドドアも手前側にセリ出てくるので、その厚みの分をいったん後ろに下がってから乗り込むので、シートが遠くに感じられ、乗車しにくい。

 最近の都営バスをはじめとする乗合バスにノンステップフロアのものが増えて、乗車時に上がったり降りたりさせないようにしている。「アルファード」と「ヴェルファイア」の乗りにくさはその考え方と逆行している。乗せる人に負担を強いていて、優しくない。

 荷物をリアシートに載せる時も、リアシートが遠い分、奥まで押し入れなければならない。テールゲートも“箱”の断面大の大きさがあるから、開けるには後方に相応のスペースを要するから、荷物の上げ下げには場所を選ぶ。助手席前のグラブボックスがとても薄く、柔らかいケースに収めた車検証以外ほとんど何も入らない。これなら無いほうがいい。

商品として魅力的か?★★★3.0(★5つが満点)

 自身でもトヨタ「エスティマ」に乗っているという開発担当者は「ミニバンは頭上空間が広い」「子供が駐車場で隣のクルマにドアをぶつける心配のないスライドドア」などをミニバンの長所として挙げていた。

 しかし、私は頭上空間は窮屈にならない範囲でなるべく低いほうが走行安定性や燃費の面から良いと考えるし、子供が乗っていなくても駐車場ではなるべく他のクルマから離れたところに停めたいし、実際にいつもそうしている。運転席以外のドアが他のクルマと至近距離で駐めざるを得ない時には、大人でもあらかじめ広いところで乗り降りしてもらっている。

 開発担当者は他にもミニバンの長所を挙げていたが、筆者はどれにも賛同しかねた。乗り方や使い方で解決できるはずのことを、クルマに求め過ぎてしまっている。クルマに求めるものが根本から異なっていて、日常的に運転する際にも、使い方が違っているのかもしれない。

 ファミリーカーとしてだけでなく、送迎車としてビジネスユースすることも新型「アルファード」「ヴェルファイア」の開発目標として設定されている。1台目に試乗したExecutive Loungeというグレードがそれに相当する。

 ベージュの本革シートが奢られていて、ふさわしそうなのだが、3列7人乗り仕様しかないのだ。他のグレードにもない。2列5名乗り仕様も必要ではないか。エグゼクティブを乗せるのならば、1台に2名までだろう。エグゼクティブを3列目に押し込めるわけにはいかないだろう。荷物だって少なくないから、3列目シートの代わりに広いトランクスペースが必要なはずだ。トランクスペースだけでなく、2列目シートの位置を工夫して、もっと乗りやすくした方がお得意さんや上顧客などの大切な人に頭をかがめながら2段登ってクルマに乗り込ませなくても済む。

 脱着式のリアマルチオペレーションパネルや後席天井の「オーバーヘッドコンソールおもてなし集中スイッチ」など、新しい装備も盛り込まれている。しかし、ミニバンとしても新型車としても、新しい発想や考え方などがほとんどうかがえない。販売が好調だから大きく変える必要はないのかもしれないが、固定化しているイメージを刷新しようとした様子は伝わってこなかった。

 私はこれまで自分でミニバンを必要としたことがなく、友人や知人などの中にもミニバンユーザーは限られている。彼ら彼女らは自転車やオフロードバイクを運んで頻繁にフィールドやコースなどに走りにいったり、車内をキャンピングカーに改造しているように目的が明確な人々だけだ。

 ミニバンについて特別な思い入れがないばかりか、乗り方と使い方によってはそのデメリットも小さくないと考えている。新型「アルファード」と「ヴェルファイア」の4グレードに横浜で1時間ずつ試乗し、開発担当者と話したが、残念ながらミニバンならではの長所を知ることはなかったし、「アルファード」や「ヴェルファイア」の世界観に納得させられるようなことにもならなかった。自分は乗らなくても、勧めたくなるような友人や知人なども思い浮かばなかった。

■関連情報
https://toyota.jp/alphard/
https://toyota.jp/vellfire/

取材・文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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