2. 会社の許可を得ずに休日出勤した場合、残業代(手当)はもらえるのか?
休日出勤をする場合は、後のトラブルを避けるため、基本的に会社の許可を得るべきです。
しかしやむを得ない事情により、会社の許可を得ずに休日出勤をしてしまうケースがあるかもしれません。この場合、休日出勤が労働時間に該当すれば、会社の許可がなくても残業代(手当)を請求できます。
2-1. 労働時間に当たれば残業代(手当)がもらえる
「労働時間」とは、客観的に見て労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます(最高裁平成12年3月9日判決)。
労働基準法に基づき、労働時間には必ず賃金が発生します。したがって、休日出勤が労働時間に当たる場合には、残業代(手当)を請求可能です。
2-2. 無許可の休日出勤が労働時間に当たるかどうかの判断要素
上記のとおり、労働時間に当たるかどうかは、労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれているかどうかを客観的に判断して決まります。
休日出勤については、会社の指示または許可があるかどうかは重要な考慮要素の一つです。
しかしそれだけでなく、さまざまな事情を総合的に考慮して、労働者が会社の指揮命令下にあったかどうかが判断されます。そのため、具体的な事情によっては、会社の許可を得ていない休日出勤についても、残業代を請求できる可能性があります。
無許可での休日出勤が労働時間に当たるかどうかの判断に当たっては、一例として以下の要素が考慮されます。
(1)就業規則等における休日出勤のルール
無許可での休日出勤が明確に禁止されていれば、労働時間とは認められない可能性が高くなります。
(2)対応を要する業務の量
労働日だけでは到底終わらないような量の業務が課されていれば、無許可での休日出勤も労働時間と認められやすいです。
(3)上司などによる業務指示
上司などが、休日出勤を事実上強制するような言動があった場合には、明示的な許可を得ずに行った休日出勤も、労働時間と認められる可能性が高いでしょう。
(4)他の従業員の状況
無許可で休日出勤をしている従業員が他にもたくさんいる場合は、会社が黙認しているものと評価され、労働時間と認められる可能性が高いと考えられます。
会社に対して未払い残業代(手当)を請求する際には、休日出勤の状況に応じて、どのような主張が可能であるかを検討しましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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