SDGsの浸透から脱炭素やカーボンニュートラルという言葉が広く使われるようになったが、いまいち違いがわからないというのが本音かもしれない。近年はESGやSDGs経営の観点から脱炭素やカーボンニュートラルの分野における職務経験者や専門知識を持つ人材の引き合いが増加している。
こうした背景もあり、2023年6月1日から「カーボンニュートラル検定」のオンライン検定がスタート。主催の一般社団法人 脱炭素事業推進協議会の理事長 笠原 暁氏に、カーボンニュートラルに関する素朴な疑問から検定実施の背景、合格のメリットを聞いた。
カーボンニュートラルと脱炭素の違い
日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言している。
環境省の「脱炭素ポータル」によれば、カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」を指す。
これは温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするということを意味する。
つまり、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」※から、植林、森林管理などによる「吸収量」 を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることだ。
そもそも脱炭素との違いとは? 笠原氏は次のように解説する。
「カーボンニュートラルと脱炭素の違いは、アプローチと目標にあります。カーボンニュートラルは、排出した二酸化炭素を排出源以外で吸収することで、ネットゼロ炭素排出を達成します。一方、脱炭素は排出自体を削減し、炭素排出をゼロに近づけることを目指します。カーボンニュートラルは排出を相殺し、脱炭素は排出を実質的にゼロにすることを追求します」
カーボンニュートラルの効果とは?
カーボンニュートラルは、環境改善に対してどのような効果があるのだろうか。
「カーボンニュートラルの達成は、環境改善に対する一歩ですが、その効果は限定的です。本質的な炭素排出削減が最優先であり、カーボンニュートラルはその後に考慮されるべきです。炭素吸収技術やクリーンエネルギーの推進も重要ですが、環境への影響は技術や実施方法に依存し、完全な解決策ではありません。総合的な環境改善には、排出削減、再生可能エネルギー、持続可能な生産プラクティス、循環経済の採用が必要です。これらが達成できると環境改善が見える化していくでしょう」