人が惹きつけられる場とは何か。
三菱地所が仕掛ける事業創造コミュニティ「有楽町『SAAI』 Wonder Working Community」(以下、SAAI)がオープンして3年半が経過した。新型コロナ禍にも関わらず順調に増加した会員数は約400名。スタートアップ企業や大企業の新規事業担当、クリエイターなどが集い、数々のコラボレーションを生み出してきた。
なぜこの地に続々と“尖った個”が集い、人と共に場が成長を遂げるのか。SAAIを運営する三菱地所 プロジェクト開発部 有楽町街づくり推進室 マネージャーの牧亮平さんに、約3年半にわたる取り組みを詳しく聞いた。
三菱地所 プロジェクト開発部 有楽町街づくり推進室 マネージャーの牧亮平さん
熱量の高い「個」を集め、事業創造の聖地へ
有楽町を、事業創造の聖地に。
そんな思いからSAAIは始まっていると、施設の運営を担う三菱地所 プロジェクト開発部 有楽町街づくり推進室 マネージャーの牧亮平さんは話す。
会員企業の資金調達額は2023年4月だけで約13億円と、この規模感の施設では異例の規模。毎月一回の「VC Day」の開催でVCと会員企業の接点を定期的に設けるなど、事業のスケールを後押ししてきた。
施設内は至るところに事業創造を促すための仕掛けがある。一歩中に足を踏み入れると、靴を脱いで畳に上がりラフにMTGができるスペース、立ったままディスカッションができるハイテーブルエリアなどユニークな空間が広がる。
事業支援は、三菱地所と共同で施設運営を行う事業創造サポートを専門とするゼロワンブースターが担う。SAAI独自のビジネスコンテスト「01Start」では、社会を変えるようなビジネスを生み出すために半年に1回公募し、3年半で累計44名の起業家を輩出する。
「場づくりや施設運営のハウツーについては、語ろうと思えばいくらでも語れます。でも、実際のプロジェクト成否を分けるのは、結局のところ『人』でしかない」と牧さん。
そうした明快な回答の根底には、SAAIはどこまでいっても「場所貸しのコワーキングスペース」ではなく「コミュニティ」であることがある。どんなに優れたハード・ソフトを用意しても、熱量のある「人」が集まらなければ、「あの場所に行けば元気になる、やる気になる」と思わせる力を持ったコミュニティは生まれない。大切なのは、SAAIのコンセプトに共感し「このコミュニティでアイデアを形にしたい」という意識の高い会員を集めることだという。
「最初は10人中1人、2人でもいいんです。面白くて尖っていて、ゼロから新しいものを生み出す熱量を持った人がいれば、彼らが火種となり、残り8人、9人にも熱が伝播していきます」(牧さん)