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人生100年時代をより良く暮らすためのウェルビーイングを考える【PR】

2023.10.02PR

株式会社 電通マクロミルインサイト(以下、DMI)は、市場調査やユーザー調査、それに基づいたマーケティング戦略の立案などを手掛ける、マーケティングリサーチ会社です。同社内の組織である「人と生活研究所」では、ビジネスポテンシャルのある多様な研究テーマを設け、生活者インサイトやトレンドといった研究成果をリリースしてきました。生活者インサイトに基づく数年先の未来予測をまとめた調査結果については、こちらの記事でも紹介しています。

2020年からは、「どのような状態を人は幸せと思うか」を解き明かす「ウェルビーイング研究」を重要なテーマの1つとして、企業活動のヒントとなる取り組みをしています。なぜウェルビーイングに着目したのか、調査の結果から見えてきた幸せの形とは何なのか。「人と生活研究所」工藤陽子氏へインタビューしました。

人が幸せと感じる状態をさらに踏み込んで捉えていく

Q.はじめに、工藤さんの経歴や仕事内容について教えてください。

工藤:新卒でDMI(旧:株式会社電通リサーチ)に入社して、10年ほど、定性調査の多いクライアントに伴走してきました。今振り返ると、その頃から生活者インサイトを探るような仕事を多くしていたような気がします。

その後、定量・定性・解析力をベースに、“人”を基点とした新しいソリューション手法を提供するほか、インサイトやトレンドに関する多角的なメソッドの開発、情報発信を行う「人と生活研究所」に異動しました。

10年少し前は、デザイン思考やエスノグラフィ(訪問観察調査)といった手法が注目されており、ホームビジット(家庭訪問観察調査)をして消費者の生活を文脈から見ることもしていました。その頃から生活者インサイトを探る際には、その人がどういう状態をより良い状態と望んでいるか、行動の背景や生活文脈から考えることを意識するようになりました。

株式会社 電通マクロミルインサイト マーケティングデータソリューション部 人と生活研究所 / シニアプランナー 工藤 陽子氏
クライアント対応のリサーチを10年近く担当した後、ソリューション開発や教育部門を経て、人と生活研究所へ。主に企業活動におけるウェルビーイング促進のための研究や、クライアントワークではエスノグラフィのような質的調査やワークショップデザインに従事。消費者研究プロジェクト「DENTSU DESIRE DESIGN」、企業の未来価値を見いだす電通グループ横断組織「未来事業創研」メンバー。

工藤:人と生活研究所の柱は2つあり、1つはマーケット理解・予測を目的とした「トレンド予測」「未来予測」です。もう1つは、生活インサイト理解を目的とした「ウェルビーイング研究」「欲求研究」で、私は研究では主にこちらに携わっています。人が幸せと感じる状態をもう一歩踏み込んで捉えていくために、専門家の方にインタビューしたり、DDD(Dentsu Desire Design)チームと消費・欲求の研究を進めたり、クライアントとワークセッションを行ったりしていますね。

コロナ禍で「良い生き方」を模索する人が増えた

Q.人と生活研究所は、なぜ「トレンド予測」と「ウェルビーイング研究」を2大柱に据えたのでしょうか?

工藤:価値観が多様化する時代において、「何が課題か分からない」「消費者のニーズが分からない」というふうに、課題自体がぼんやりとしている不安を抱えている企業は少なくないと思うのです。そのような企業に対して、未来予測(世の中がどうなるか)と、生活者視点(人の理解)を軸にしたソリューションを提供すると良いのではないかということで、「トレンド予測」と「ウェルビーイング研究」を中心に据えることになりました。

中心テーマの1つにウェルビーイングを選んだきっかけは、コロナ禍でした。あの時期、リモートワークが増えたことで組織内のつながりが弱まったり、家にいる時間が長くなったことで家族との関係が深まったりするなど、当たり前が変わり、価値観が揺らいだ人が多かったと思います。社会全体としても、「良い生き方ってなんだろう」と、それまでの生き方を問い直すような動きが出てきました。そこで、企業成長支援においてウェルビーイングの要素を入れるようなアクションやサポートができないだろうかと考えたのです。

Q.では、実際にどのような研究をされているか、詳しく教えていただけますか。

工藤:生活者調査や専門家へのインタビューを行い、定期的に研究発表を行っています。現在、当社のホームページでは、第1段から第4弾までの研究成果を掲載しています。

第1弾研究発表である「コロナ以降のメンタルの良い変化分析」では、新型コロナウイルス流行以降「メンタルに良い変化が起きた」と回答した26%の人に着目しました。そこから、なぜ良い変化が起きたのかを掘り下げ、コロナ禍を踏まえたウェルビーイングにつながるヒントを探りました。

続く第2弾研究発表では、「コロナ以降のメンタルの良い変化分析」の結果に対して、神経科学の専門家である青砥瑞人さんにインタビューし、専門的知見から「これからのウェルビーイング」についてお話しいただきました。

第3弾研究発表では、ウェルビーイングな商品・事業開発を促進するための「Happy Brain Card」を開発しました。これは、「人がポジティブに感じる時、脳の中では何が起きているか」といったニューロサイエンス観点から作成したカードで、商品・事業・サービスなどのアイデアを発想するためのヒントとしてお使いいただけます。

最新となる第4弾研究発表では、「生活者の主観的幸せの方向性分析」を行い、生活者はどのような瞬間に幸せを感じるのか、という具体的な「幸せ」の方向性を9因子にまとめました。

新しいアイデアのカギになる、生活者の「幸せの方向性」

Q.どの研究も気になりますが、まずは最新の研究成果である「幸せの方向性9因子」について教えてください。

工藤:世の中には「人はこういうときに幸せを感じる」と言われていることがいろいろあると思います。例えば「自分に自信が持てた時」とか「何かにハマって夢中になっている時」などですね。そのように、ポジティブ心理学など過去の研究で幸せに関係があると考えられている項目を洗い出して、生活者にアンケートを行いました。それぞれの項目に対して幸せと感じるか否かを聞き、その結果を因子分析にかけてまとめたものが「幸せの方向性9因子」です。

工藤:具体的には、自己肯定する幸せ/志す幸せ/はまる幸せ/持つ幸せ/愛の幸せ/つながりの幸せ/利他の幸せ/解き放たれる幸せ/笑う幸せの9つ。ボリュームとしては、「愛の幸せ」と「自己肯定する幸せ」が多く、「愛の幸せ」を感じる人は男性より女性の方が多いといった傾向も見えてきました。

Q.「幸せ」とひと口に言っても、どのようなタイプの幸せがあるかについて方向性を可視化したということですね。

工藤:リサーチ会社として、幸せの在り方を、専門家が言うのではなく、生活者視点で「幸せと感じるかどうか」を捉えること、そしてその方向性を可視化することが大事だと思いました。実際に幸せと感じるかどうかは生活者の主観なので。

そうすることで、商品がどんな幸せなら提供できるかその親和性が測れたり、商品のターゲットはどういう時に幸せを感じるだろうという問いの1つの手がかりになったりします。

プロモーションのアイデアを考える際にも役立つでしょう。プロモーションはシーズンに合わせて実施されることが多く、まずは「お正月」や「クリスマス」など、提供するシチュエーションがありますよね。

その「お正月」と「自己肯定する幸せ」を掛け合わせたら、どんなコンテクストが生まれるだろう、というふうに、より幸せな経験をアシストするアイデアの手がかりになるのが「幸せの方向性9因子」なんです。

Q.コストパフォーマンスや便利さではなく、ターゲットの「幸せ」や「ウェルビーイング」を軸にして、商品やサービスを開発するんですね。

工藤:そのような考え方が主流になりつつありますね。ウェルビーイングを軸に考えることで「ありたい未来」に近づく気がするんです。人を幸せな方向に導くような商品・サービスが増えると、未来が明るくなっていくのではないかと思っています。

“脳内ハッピー”が起きる状態を可視化する

Q.ウェルビーイング研究の第3弾研究発表によると、ウェルビーイングな商品・事業開発を促進するための「Happy Brain Card」を開発したそうですが、これについて詳しく教えてください。

工藤:「Happy Brain Card」は、「人がポジティブに感じる時、脳の中では何が起きているか」といったニューロサイエンス観点から作成した、生活者を“脳的ハッピー”に導くための行動・習慣のヒント集です。

例えば、睡眠。現在、睡眠をサポートするアイテムやサプリもいろいろと販売されており、よく眠れることや睡眠の質をあげたいニーズは高いと思います。脳的ハッピールールとしては「朝浴びたセロトニンが夕方になるとメラトニンに変わり、良質な睡眠を得られる」があります。体に摂取するものなどで改善していく方向もありますが、朝から太陽の下で活動してセロトニンを浴びるような行動を促進していく、そんな経験をギフトしたほうがより良い1日につながるかもしれません。

このように、脳的ハッピーを導ける行動ルールを30個ほどピックアップしてツール化したものが「Happy Brain Card」です。

Q.ニューロサイエンス観点から作成したということは、生体反応に基づいて「幸せ」を定義しているということでしょうか?「趣味に没頭できて幸せ」とか「好きなゲームができて幸せ」といった主観的な幸せについて、脳科学や生理学の観点からその現象の原因と言われているポイントを活用し、カードに落とし込んだということですよね。

工藤:はい。例えば、私たちは目標に向かって一生懸命な時に幸せを感じますが、それは、プレッシャーを感じることによるノルアドレナリンの分泌と、好奇心に関わるドーパミンの分泌がセットになってより集中・没頭状態をつくるからだと言われています。なのでプレッシャーも適度には必要ですし、プレッシャーだけでなくそれをやること自体が楽しいという好奇心がセットになることが大事だと考えらえます。

これを踏まえると、商品やサービスを提供するときも、「何が飛び出すか分からないドキドキ」と、「好奇心をそそるワクワク」みたいなものをセットにすれば、その状態に近くなる可能性があります。

Q.「吊り橋理論」という心理学の実験がありますが、あれは不安や緊張から引き起こされたドキドキする感覚を、恋愛感情と錯覚するために起こる心理的現象ですよね。「Happy Brain Card」を用いた商品・サービス開発も同じように、生体反応を応用するような展開を目指しているということでしょうか。

工藤:そうですね。ただ基本は、脳的ハッピーという幸せ観に関わる現象のルールが中心です。例えば、愛する幸せというのはオキシトシン、家族のことを思ったり、子どもと触れ合ったりすると、オキシトシンが分泌されると言われています。オキシトシンはスキンシップで育まれるとも言われていて、それを応用し、「もっと子どもとの触れ合いタイムをつくるような商品や経験を提供できないだろうか」と考えていく感じですね。脳的ハッピーにより導きやすい経験をデザインするという視点で商品・サービスのアイデアを考えませんか、という提案です。

最近では、クライアントとのワークショップの中でも「Happy Brain Card」を活用いただけるケースが増えてきました。アイデア出しの刺激剤として使っていただいています。

ウェルビーイング研究は組織開発にも応用できる

Q.これまで、研究発表を第4弾まで出されていますが、ウェルビーイングの研究を通して見えてきたことや、手応えを感じた部分はありますか?

工藤:第4弾研究発表の「幸せの方向性9因子」や「Happy Brain Card」は、マーケティング施策につながっていくことを企図して行った分析でもあるのですが、組織内でどのようなことをすると社員がより前向きになるか、といった組織改善にも使えると思っています。

当社のメイン事業はマーケティング&リサーチですが、組織開発や、人材を資本として捉えてその価値を最大限に引き出す「人的資本経営」といった領域もサポートできるのではないかと思っているので、今後はそちらの方面にも挑戦していきたいと思っています。

Q.マーケティングのソリューションが、組織開発に応用できるというのは面白いですね。

工藤:以前、クライアント企業さまと打ち合わせをしていて、「ウェルビーイングというテーマで何をやっているか」というお話をしていました。「自社の中でウェルビーイングをどういうふうに高めるか」について、ご担当者さまもいろいろと考えを巡らせていらっしゃいました。

ただ、いわゆる「施策ありき」の取り組みは、上からトップダウンで実行するよう言われても「ああ、なんかめんどくさいな……」「なんかやること増えたな」という空気になってしまいがちなことも多いのではないでしょうか。それよりも、毎日幸せに働ける方法を社員自ら考えていく方が、ウェルビーイングが高まりやすいのではないか。HR戦略に詳しくないいち従業員でも、「幸せの方向性9因子」という方向性と「Happy Brain Card」のヒントがあれば、職場のより良い慣習づくりの施策を思いつくヒントに役立つのではないかと感じました。

「良い経験」を得られるような商品・サービス開発を

Q.今後、追究していきたいウェルビーイングのテーマはありますか?

工藤:今は「Happy Brain Card」と「幸せの方向性9因子」を中心に、ウェルビーイング研究を拡大していくことが、私の最大の関心事です。

市場がコモディティー化してしまっていて、新商品を開発することの意味を見失いつつある企業もあるように感じています。そのような企業に対して、単純に企業活動のサイクルとして新商品を開発する、だけでなく、良い体験を得られたり、良い1日を過ごせたりするような商品を考えていきませんか、といった提案ができればいいなと思っています。

例えば、調味料を開発しているメーカーなら、「食体験」や「1日の行動」というふうに視野を広げて考えて、生活者にとって良い経験をデザインしていく。そのような商品・サービスを開発するために伴走していけたらいいですね。

Q.「この商品を売るために」といった従来型のプロモーションではなく、もう少し長いスパン、広い視野で、未来をどうデザインするか提案していくということですね。

工藤:そうですね。自分たちの商品やサービスを、ウェルビーイングの向上や社会課題の解決につなげたい、と思っていらっしゃる方は多いと感じています。私たちの研究や開発したツールは、そのような理想に伴走できるのではないかと思っています。

☆ ☆ ☆

人生100年時代と言われる今、長い人生をより良く、ウェルビーイングな暮らしを実現することに注目が集まっています。「幸せ」を可視化し、マーケティングや企業活動に生かす取り組みは、時代のニーズにもマッチしており、今後の研究にも興味を惹かれます。

※本記事の記載内容は2023年6月取材当時のものになります。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
※こちらの記事はビジネスを成長させる「変革のヒント」をお届けするマーケティング情報サイト「Transformation SHOWCASE」からの転載記事になります。

(C)Transformation Showcase. 

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